手取川

石川県白山市を流れる川

手取川(てどりがわ)は、石川県の主に白山市を流れて日本海へ注いでいる一級河川石川の通称で呼ばれた時代もあり、石川郡及び石川県の由来となっている[1]

手取川
手取川
手取川(白山市鶴来地区付近)
水系 一級水系 手取川
種別 一級河川
延長 72 km
平均流量 72.48 m³/s
流域面積 809 km²
水源 白山
水源の標高 2,702 m
河口・合流先 日本海
流域 日本の旗 日本 石川県
地図
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地理 編集

 
手取峡谷。右側に綿ヶ滝

石川県白山市南部の白峰地区岐阜県境にそびえる白山に源を発し北流する。上流には手取川ダムがあり、中流域の鳥越地区及び吉野谷地区では河岸段丘を下刻して手取峡谷を形成している。鶴来市街地で流路を西へ変更し、山から金沢平野へ抜ける地点を扇頂とした扇状地を形成している。能美市及び能美郡川北町の境界を流れ、白山市美川地区で日本海に注いでいる。平均河床勾配1/27は日本有数の急流河川である。

河口より約40km北東に位置する千里浜海岸は、手取川が運搬した土砂が沿岸流によって運ばれ堆積したものである[2]

名称 編集

倶利伽羅峠の戦いの後、平家軍を追う木曾義仲軍が篠原の戦いを前に、増水して濁流の川を渡るとき、多くの兵士が互いに手に手を取って流されないようにして渡ったことに由来する[3]。また、氾濫のたびに渡るのに手間取ったことに由来するとも言われる[4]徳光パーキングエリアの南脇の大川、大慶寺川(現・大慶寺用水)など扇状地での流れも変わってきたが手取川と呼ばれる以前は「比楽河・ひらかがわ」とも呼ばれた[5][6][7]河口の港は比楽湊、その後「本吉湊」と呼ばれ、室町時代には三津七湊の1つであった。

支流 編集

 
尾添川
 
大日川
  • 柳谷川
  • 三ツ谷川
  • 大道谷川
  • 百合谷川
  • 赤谷川
  • 下田原川
  • 尾添川
  • 瀬波川
  • 大日川
  • 直海谷川

七ヶ用水 編集

七ヶ用水(しちかようすい)は、手取川を水源とし、金沢平野の北側半分を潤す7つの用水の総称である[8]疎水百選

ほとんどは新たに用水を掘ったのではなく、何度も流れを変えた手取川のかつての川筋を元にして作られている。

 
七ヶ用水の高橋川(富樫用水)取水口

2006年(平成18年)に疎水百選に選定[8]2014年(平成26年)には国際かんがい排水委員会によるかんがい施設遺産に登録されている[8]。また、大水門および給水口が土木学会土木遺産に登録されている。2023年令和5年)9月25日には、大水門・取入口隧道・冨樫用水取水口水門が国の重要文化財に指定された[9][10]

  • 富樫(とがし)用水:高橋川となって伏見川から犀川に注ぐ。
  • 郷用水
  • 中村用水
  • 山島用水
  • 大慶寺用水
  • 中島用水
  • 新砂川用水

災害 編集

 
北陸本線・手取橋梁での1934年(昭和9年)7月増水の状況

暴れ川として知られ、過去幾度となく洪水・氾濫を繰り返した。

1912年(大正元年)には、支流の甚之助谷が地すべり性崩壊を起こして荒廃。砂防事業による対策が進められた[11]。また1934年昭和9年)7月の災害は手取川最大の土砂災害が発生。前年の豪雪による残雪と豪雨の影響で水量が増加、上流の別当谷で大崩壊が発生し(別当崩れ)死者・行方不明者が100人を超える大災害となった。白山麓の市ノ瀬集落はこの災害で壊滅した。2004年平成16年)5月の災害では別当出合にある砂防新道の吊橋が流失した。国直轄の白山砂防事業として砂防堰堤や砂防トンネル、地滑り対策が実施され、白山砂防科学館が設置されている。

手取川扇状地上の集落は洪水を避けるため自然堤防の微高地に立地しており、島集落と呼ばれる景観を形成している。

百万貫の岩 編集

 
百万貫の岩

白峰地区白峰集落(旧牛首)の上流、石川県道33号白山公園線沿いの河床にある高さ16mの大岩。1934年(昭和9年)の大洪水の時に支流の宮谷川から流出した。大災害の様子を後世に伝える資料であり、県指定天然記念物に指定されているとともに日本の地質百選にも選定されている。

河川施設 編集

1980年(昭和55年)に建設された手取川ダムは上水道、工業用水、電力、治水に利用される。上水道は、石川県の七尾市以南に広く供給されている。また、農業用水も各地から取水される。

一次
支川名
(本川)
二次
支川名
ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m3
型式 事業者 備考
手取川 - 手取川ダム 153.0 231,000 ロックフィル 国土交通省
電源開発
石川県
手取川 - 手取川第二ダム 37.5 1,700 重力式 北陸電力
尾添川 - 尾口第一ダム 28.4 16 重力式 北陸電力
尾添川 - 吉野谷ダム 20.5 - 重力式 北陸電力
尾添川 雄谷川 中宮ダム 16.6 - 重力式 北陸電力
大日川 - 大日川ダム 59.9 27,200 重力式 石川県
直海谷川 - 手取川第三ダム 50.0 4,247 重力式 北陸電力

主な橋梁 編集

 
金名橋
 
天狗橋(架け替え前の旧橋)
 
川北大橋

上流より示す。

水力発電 編集

1911年明治44年)に金沢電気瓦斯(現在の金沢市企業局の前身)が福岡発電所を建設したのが手取川水系の水力発電の第1号である(現在の北陸電力福岡第一発電所)。現在は水系に22(電源開発:1、北陸電力:21)の発電所がある。

環境 編集

河口では毎年秋にサケが遡上する[17]。有効利用調査の対象河川として、事前申込制で期間内にサケの遊漁ができる(手取川サーモンフィッシング)[17][18]

舞台となった作品 編集

※発表順

映画

脚注 編集

  1. ^ 『意外と知らない石川県の歴史を読み解く! 石川「地理・地名・地図」の謎』実業之日本社、2015年1月5日、74頁。ISBN 978-4-408-11100-1 
  2. ^ 早川和宏・由比政年・石田啓「石川県千里浜海岸における海浜地形変化に関する基礎的研究」(『日本海域研究』第40号、2009年)、40‐41頁。
  3. ^ 木曽義仲の伝説 鶴来町”. 石川新情報府. 2010年7月20日閲覧。
  4. ^ 石川県. “手取川”. 石川県. 2019年9月6日閲覧。
  5. ^ 昔々の手取川は「比楽河」”. 北陸先端科学技術大学院大学. 2010年7月20日閲覧。
  6. ^ 2.中・近世(1)中世の本吉湊、比楽湊・本吉湊(美川漁港)の「みなと文化」” (PDF). pp. 4-5/19 ページ. 2010年7月20日閲覧。
  7. ^ 白山・手取川と生きる、白山砂防通信” (PDF). 国土交通省北陸地方整備局金沢河川国道事務所. pp. 2/4ページ (2005年冬号、VOL.10). 2010年7月20日閲覧。
  8. ^ a b c 七ヶ用水(石川県) - 農林水産省
  9. ^ 令和5年9月25日文部科学省告示第108号。
  10. ^ 文化審議会の答申(国宝・重要文化財(建造物)の指定)(文化庁報道発表、2023年6月23日)。
  11. ^ 下川耿史 『環境史年表 明治・大正編(1868-1926)』293頁 河出書房新社刊 2003年11月30日刊 全国書誌番号:20522067
  12. ^ 空中都市? いいえ、手取川橋梁です 北陸新幹線延伸工事”. 北國新聞 (2018年10月12日). 2019年9月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月21日閲覧。
  13. ^ “北陸新幹線の手取川橋梁が連結 石川・川北”. 北陸新幹線で行こう!北陸・信越観光ナビ(北國新聞). (2019年6月26日). https://www.hokurikushinkansen-navi.jp/pc/news/article.php?id=NEWS0000020170 2022年8月21日閲覧。 
  14. ^ 加賀海浜産業道路(川北町橘〜能美市福島町間)の開通式について” (PDF). 石川県土木部道路建設課 (2023年3月2日). 2023年3月5日閲覧。
  15. ^ 北陸新幹線延伸、どうなる「サンダーバード」と新快速 - 敦賀駅へ”. マイナビニュース (2022年7月24日). 2022年8月21日閲覧。
  16. ^ “北陸新幹線24年延伸 JRと石川県、並行在来線譲渡で合意”. 日本経済新聞. (2022年8月17日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC1736E0X10C22A8000000/ 2022年8月21日閲覧。 
  17. ^ a b “手取川にサケが来た! 28日に釣り一般開放へ 6匹を初確認”. 北國新聞. (2021年10月22日). オリジナルの2021年10月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20211030091750/https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/559155 2022年8月21日閲覧。 
  18. ^ 手取川サーモンフィッシング - 手取川サケ有効利用調査実行委員会
  19. ^ 千葉真一日本語)『なんだ、こいつら。JACスーパーアクション in 激突』(Color)(VHS東映ビデオ、1989年1月13日。 

関連項目 編集

外部リンク 編集