搭乗手続き

航空機の搭乗券を受け取るための手続き

搭乗手続き(とうじょうてつづき)とは、航空機の搭乗券を受け取るための手続きである。チェックイン英語: check in)とも呼ばれる。

搭乗手続き(ムンバイ国際空港
エアリンガスの自動チェックイン機(ダブリン空港
市内にあるチェックインカウンター(九龍駅

概要 編集

航空機に搭乗するには、航空券の購入に加えて搭乗券の受取が必要である。当日に空港の各航空会社のチェックインカウンターあるいは自動チェックイン機、当日以前にオンラインチェックインにて以下の手続きを行う。

  • 航空券の有無の確認 - 既に購入してある航空券を提示する。2010年以降、航空会社が紙の航空券を廃止し、電子航空券(eチケット)に切り替えた。このため、予約時の電子メール(eチケット控え)、パスポート、購入時に使用したクレジットカードを提示する。
  • 座席の確定 - 予約時に座席を指定できる航空会社が増えているが、最終確定するのはこの時である。予約時の座席をここで変更することもできる。なお一部格安航空会社では、自由席の便もある。
  • 搭乗券の発行 - 発行された搭乗券を受け取る。搭乗ゲート・搭乗時刻・座席などが印刷されている。以降、保安検査、出国審査(国際線)、搭乗口で提示しなければならない。
  • マイレージサービスの手続き - マイレージカードを提示することでマイルを加算できる。搭乗する便とは異なる航空会社のマイレージカードを提示し、そちらにマイルを加算することもできる(提携航空会社や同じ航空連合であることが前提である)。

またこれに付随して、当日チェックインカウンターで以下の手続きを行う場合がある。これらは搭乗に必要な手続きであるが、厳密な意味では搭乗手続き(チェックイン)に含まない。

  • 本人確認 - 国際線ではパスポートで行われるが、国内線では国民総背番号制証などパスポートや公的身分証明書、または省略する国家もある(出発口で確認する場合もある)。
  • 最終到着国の入国資格確認 - 国際線では、もし最終到着国で入国資格の欠如により入国を拒否されると、入国便の航空会社の費用で出発国に送還しなければならないので、航空会社がパスポート・査証の有無を確認する。
  • 手荷物の確認 - 受託手荷物があればここで預ける。ここで手荷物の重量や大きさが既定を超えていると、追加料金を請求される。また乗客が当該便に搭乗しなかった場合に備えて、いつでも受託手荷物を旅客機から降ろす準備も整える。

乗継便がある場合は、そちらの座席確定と搭乗券発行も合わせて行われるので、乗継地で改めて搭乗手続きをする必要はない。一般に受託手荷物も最終目的地まで運ばれるように手配されるが、コードシェア便などでは例外もある。

搭乗手続きが完了すれば、次の手続き(通常は保安検査)に進むことができる。

搭乗手続きの必要性 編集

正規の航空券は、ある航空会社のある航路の便に搭乗するための有価証券であり、一般に同じ航路であれば、どの便にも搭乗することができるし、払い戻しなども、ある程度可能である。しかし航空機の飛行には、燃料費や搭乗員の手当てなど膨大な支出が必要になるため、航空会社としては、なるべく適切なサイズの機材と人員を用いることが望ましい。

そのため割引販売される航空券は、割引する代わりに予約という形で搭乗する便が紐づけられており、払い戻しや便の変更には制限や追加料金の請求がある。このようにして航空会社は予め搭乗する人数をある程度把握することができ、機材や人員の調整が可能となる。また航空会社には払い戻しや変更に備えて、オーバーブッキングでの予約を受け付けることが認められている。

本質的に搭乗手続きは、このような変更可能な航空券に対して、その便に搭乗する意思表示をすることを意味する。そのため、それ以上の払い戻しや便の変更は原則として認められない。搭乗手続きまで座席指定ができないのは、まだ搭乗の意思が確定していないとみなされるからである。

近年ではオンラインチェックインを用いることで、前日までにチェックインが可能であり、早めに座席指定ができるメリットがある一方で、取り消しや変更が出来なくなるデメリットの勘案が必要になる。

手続きの時間 編集

開始時刻は空港や航空会社によって異なり、おおむね出発の3時間前から2時間前に開始される。締め切り時刻は、国際線ではおおむね出発の約1時間前に締め切る会社が多い。なお、日本の国内線の締め切り時刻は出発45分前〜約20分前と、各社異なる。

自動チェックイン機 編集

 
Peach Aviationの自動チェックイン機(関西国際空港
 
日本航空の自動手荷物預け機「Self Baggage Drop」(東京国際空港

近年、搭乗手続きを無人で行う「自動チェックイン機」を設置する航空会社が増えている。コンビニエンスストアの端末によく似ており、チェックインカウンターに隣接して置かれている。パスポート(国際線)、クレジットカード(国内線)、マイレージカードなどを機械が読み取り、座席をディスプレイ上で指定すれば搭乗券が発行される。これにより、受託手荷物が無ければカウンターに並ぶ必要がなくなる。

自動チェックイン機は航空会社が設置するものであるため(仁川空港や羽田空港など空港会社が設置する場合もある)、搭乗する便の航空会社がその空港に設置していなければ利用できない。通常、自国の主な空港のほか、便のある海外の空港にも設置していることが多い。

なお、格安航空会社では、手続きを全て自動チェックイン機で行っていたり、有人カウンターでのチェックインを有料にしている場合がある。

自動手荷物預け機 編集

自動チェックイン機に合わせて受託手荷物を自動的に預ける「自動手荷物預け機」を設置する航空会社も増えている。

これには例えば日本航空のSelf Baggage Dropや、全日本空輸のANA BAGGAGE DROP、ジェットスターのFly Cool などが存在する。

オンラインチェックイン 編集

航空会社の公式サイトで搭乗手続きができるサービスであり、航空会社にもよるが、搭乗の24時間前-72時間前から搭乗手続きが可能である。公式ウェブサイト上で搭乗券(またはその引き換え券)が発行され、それを印刷するかスマートフォンなど画面で提示して、出発当日に持ってゆけば良く、リコンファームは不要である。

なお、その印刷物をチェックインカウンターに提示して、本物の搭乗券に引き換えなければならない場合と、そのまま印刷物が搭乗券として通用する場合とがある。さらに同じ航空会社でも、空港によって対応が異なることがあるので注意が必要である[1]

搭乗券の電子化 編集

航空券の電子化に続き、搭乗券の電子化(ペーパーレス化)も進められている。「モバイル搭乗券」と呼ばれることが多く、2006年頃から世界的に増加しつつある。海外では主に携帯電話の画面が、日本ではFeliCaが搭乗券の代わりになる。事前にオンラインチェックインを済ませ、空港に着いたらそれらを保安検査場や搭乗口の読み取り機にかざすだけで搭乗でき、搭乗手続きが省略できる(国際線の出国手続きは当然必要である)。受託手荷物についても専用のカウンターが用意されている場合が多い。

KLMオランダ航空[2]エールフランス[3]ルフトハンザドイツ航空[4]オーストリア航空[5]スカンジナビア航空[6]では、携帯電話やPDAで搭乗できるサービスを行っている。それらのモバイル機器でオンラインチェックインをすると、2次元バーコード付きの電子メールが航空会社から送られてくる。このメールがそのまま搭乗券となる。搭乗の際は、搭乗口の読み取り機にメール画面をかざせばよい。すべての空港で利用できるわけではないが、国際線にも対応しているのが大きな特徴である。

アメリカン航空[7]でも一部の空港で上記ヨーロッパ諸国と同様のサービスを開始している。こちらは国内線限定である。

ニュージーランド航空では、ISO/IEC 14443規格の親指大の非接触ICカード("ePass")[8]と、携帯電話等に送られてくる2次元バーコード付電子メール("mPass")[9]の二種類が利用可能である。いずれも国内線限定である。

日本では、JALが「QuiC(JAL ICサービス)」(国際線は2010年10月21日から)、ANAが「SKiPサービス」(国内線)、「CLICK mobile check-in」(国際線、2010年10月21日から)を実施している。出発当日、マイレージカード(おサイフケータイ含む)、またはQRコード(Eチケット用紙または携帯電話等の画面)を持ってゆけばよい。

また、2021年4月からは、成田国際空港東京国際空港の一部航空会社において顔認識システムを使用した「Face Express」を導入予定。これにより、携帯電話やICカード不要で、チェックインから搭乗口までウォークスルーで通過できるようになる(出国審査を除く)[10][11]

空港外のチェックインカウンター 編集

空港に行く前にあらかじめ市内などで搭乗手続きを済ませることができるサービスが、主に中華圏で広がりつつある。重い荷物を持って空港まで行く必要がなくなるほか、空港のチェックインカウンターの混雑に巻き込まれないメリットもある。

テロ対策 編集

アメリカ合衆国では、アメリカ同時多発テロ事件デルタ航空機爆破テロ未遂事件を契機に、搭乗者の保安検査が厳重になっている。2010年には、テロリズム情報と搭乗者名簿の照合、爆発物検知体制の充実、最新の画像処理技術(ミリ波パッシブ撮像装置後方散乱X線検査装置)による監視が行われている[21]

参照 編集

  1. ^ オンライン・チェックイン エミレーツ航空
  2. ^ 携帯電話からのチェックインKLM Royal Dutch Airlines
  3. ^ エールフランスのモバイルチェックインエールフランス
  4. ^ モバイル搭乗券 - 多くの路線でご利用いただけます。ルフトハンザ
  5. ^ モバイル搭乗券オーストリア航空
  6. ^ SASモバイル搭乗券スカンジナビア航空
  7. ^ アメリカン航空、米国内線でのモバイル搭乗サービスを拡大アメリカン航空 2009年6月8日
  8. ^ ePassAir New Zealand Limited
  9. ^ mPassAir New Zealand Limited
  10. ^ 成田空港で顔認証技術を用いた新しい搭乗手続き「OneID」がスタートします成田国際空港
  11. ^ 顔認証技術による搭乗手続き“Face Express”が成田・羽田ではじまります成田国際空港
  12. ^ “キャセイパシフィック航空が、深圳市内でのチェックインサービスを開始。”. 香港ナビ. (2009年6月4日). http://www.hongkongnavi.com/special/5024982 
  13. ^ “市内14カ所に自動チェックイン機=空港の混雑緩和狙う-大連周水子国際空港”. 神戸港上海事務所. (2010年3月16日). http://kobeport.org/jp/newsview.asp?newsId=3241 
  14. ^ “機捷市區預辦登機 新增國泰等多家外籍航空” (中国語). TVBS. (2018年11月15日). https://news.tvbs.com.tw/life/1029851 
  15. ^ (繁体字中国語)環狀線1月31日通車 機捷A3站同步啟用預辦登機”. 聯合報 (2020年1月28日). 2020年1月28日閲覧。
  16. ^ ソウル駅都心空港ターミナル”. 2020年1月28日閲覧。
  17. ^ “KTX光明駅 都心空港ターミナルが新設”. KBS World Radio. (2015年10月15日). http://world.kbs.co.kr/japanese/news/news_Dm_detail.htm?No=56629 
  18. ^ Flight Check-In at KL Sentral”. KLIA Ekspres. 2020年1月28日閲覧。
  19. ^ 提携ホテルでのチェックイン”. 2020年1月28日閲覧。
  20. ^ グアムのチェックイン施設と空港の最新情報 | United Airlines”. United Airlines. 2019年4月17日閲覧。
  21. ^ “米、到着便の搭乗客の検査体制を強化 リアルタイムの情報も活用”. AFP.BB.News. (2010年4月3日). https://www.afpbb.com/articles/-/2715505 

関連項目 編集