新緑

若葉のみずみずしい緑色

新緑(しんりょく)とは、初夏の頃の若葉のみずみずしい緑色であり[1]、その立ちをも指す[1]枯れしていた木が芽吹いていよいよ鮮やかな緑色の葉を茂らせる、その現象に着目して表した漢語である。

新緑の水辺/住之江公園にて4月末の撮影。
新緑の日本庭園三千院にて。
新緑の湖畔/再度公園にて4月末の撮影。
日本語「新緑」のイメージに適うであろう日本国外のの風景/スウェーデンストックホルムにて5月末の撮影。
「新緑」の関連季語「若葉」に相応しい、新緑の葉。
新樹、すなわち、目の醒めるような若葉を茂らせる木々。あるいはまた、季語「緑さす」を説明するのにもこの画像は相応しい。

概要 編集

木の種類や場所、地域によって異なるが、日本では主に毎年3月から6月にかけて起こる。また、常緑樹でも新緑はあり、落葉樹のそれより約1か月遅く迎える。例えば、お茶の葉は5月あたりに出る新芽が原料である。

季語 編集

季語しての新緑(しんりょく)は、の季語(初夏の季語)。分類は植物。初夏の初々しい若葉の緑をいう。子季語[* 1]として、みどり)と、緑さす(みどりさす)がある。[2][3] 季語としての「緑」は、新緑を意味する[1]。「緑さす」は、目にも鮮やかな初夏の若葉を通しての照り映える様子をいい、俳人坪内稔典は『毎日新聞』の「季語刻々」で「水原秋桜子編『新装版俳句小歳時記』では『若葉影が映ること』と定義している」と説明している。

  • 例句:新緑や たましひぬれて うをあさる ─ 渡辺水巴 『水巴句集』(1915年〈大正4年〉刊)
  • 例句:新緑や 日光あぶら 濃くなりて ─ 日野草城 『銀』(1956年〈昭和31年〉刊)
  • 例句:子の皿に 塩ふる音も みどりの夜 ─ 飯田龍太 『忘音』(1969年〈昭和44年〉刊)
  • 例句:新緑の 庭より靴を 脱ぎ上る ─ 山口誓子 [1]

また、関連季語として、若葉(わかば)、新樹(しんじゅ)があり、前者は新緑の季節の木々の初々しいに、後者は瑞々しい緑に覆われた木々に、それぞれ焦点を当てた季語である[3]

  • 例句:あらたふと 青葉あをば若葉の 日の光 ─ 松尾芭蕉 [3]江戸時代前期)
  • 例句:不二ふじひとつ うづみ残して 若葉かな ─ 与謝蕪村 [3](江戸時代中期)
  • 例句:星屑ほしくづ鬱然うつぜんとして 新樹しんじゆ ─ 日野草城 [1]

峰走り 編集

峰走り(みねばしり)とは、先に新緑が山の麓から頂へ駆け上がってゆく様子を、口に紅葉が山頂や稜線から麓へと駆け下りてゆく様子を表わした、日本語表現である。それぞれに、新緑の峰走り紅葉の峰走りということが多い。日本における新緑の峰走りは、特にブナを主体とした植生のそれが見事なことで知られ、残雪、顔を出した土のに、目にも鮮やかなが加わって、他の季節には無い特別な美的景観を出現させる。こういった景観は日本画の画題になることも多い。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ある主要な季語について別表現と位置付けされる季語を、親子の関係になぞらえて、親季語に対する「子季語」という。「傍題」ともいうが、傍題は本来「季題」の対義語である。

出典 編集

  1. ^ a b c d e 大辞泉
  2. ^ 新緑(しんりょく)初夏”. 季語と歳時記-きごさい歳時記. 季語と歳時記の会 (2011年8月11日). 2018年2月13日閲覧。
  3. ^ a b c d 大澤水牛 (2012年). “新緑(しんりょく)”. 水牛歳時記. NPO法人双牛舎. 2018年2月13日閲覧。

関連項目 編集