日産・アベニール

日産自動車のステーションワゴンおよびライトバン型乗用車

アベニールAVENIR)は、日産車体が製造、日産自動車が販売していたステーションワゴン型の乗用車である。初代にはライトバンであるアベニールカーゴの設定もあった。

初代カーゴ(左)・カーゴの後継車エキスパート(中)・2代目後期型 サリュー(右)との比較(熊本市消防局

初代 W10型(1990年 - 1998年) 編集

日産・アベニール(初代)
W10型
 
中期型
 
アベニールサリュー
 
アベニールカーゴ
概要
販売期間 1990年5月 - 1998年8月[1]
ボディ
乗車定員 5人
ボディタイプ 5ドアステーションワゴン/ライトバン
エンジン位置 フロント
駆動方式 前輪駆動 / 四輪駆動
パワートレイン
エンジン 直4 2.0L SR20DE(T)
直4 1.8L SR18DE(Di)
直4 1.6L GA16DS
直4 2.0L CD20(T) ディーゼル
変速機 4AT/5MT
前:ストラット
後:トーションビーム(2WD)
後:5リンク(4WD)
前:ストラット
後:トーションビーム(2WD)
後:5リンク(4WD)
車両寸法
ホイールベース 2,550mm
全長 4,460mm
全幅 1,695mm
全高 1,460-1,490mm
車両重量 1,100kg-1,410kg
その他
販売終了前月までの新車登録台数の累計 19万3293台[1]
系譜
先代 日産・ブルーバードワゴン/バン
日産・スカイラインバン
後継 バン(カーゴ):日産・エキスパート
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1990年5月
W10型登場。CMコピーは「スポーツカーの次に来るもの。」。スカイラインバン(R30型)ブルーバードワゴン / バン(いずれもU11型)を統合させたステーションワゴン並びにライトバンである。プリメーラ(P10型)のワゴン版としての位置付けであり、欧州には「プリメーラワゴン(初代)」として投入された。乗用モデル(ワゴン)と商用モデル(カーゴ。最大積載量500kg)が存在。ワゴンのグレード名は「ei(エイ)」、「bi:(ビー)」、「si:(シー)」と名づけられていた。
エンジンはSR20DEとSR18Di、カーゴはGA16DSと、ディーゼルエンジンCD20。
1990年10月
4WD車追加。ワゴンはアテーサシステムを搭載したフルタイム4WDで2.0Lのみの設定、カーゴはガソリン車にのみ設定されこちらはパートタイム4WD。カーゴ4WDの最大積載量は400kg。
1991年2月27日
オーテックジャパンが、「タイプ2.0 si: アテーサ(スポーティパック装着車)」をベースにガードバー付オーバーライダーやフォグランプ、専用ツートンカラーなどを設定した特別仕様車「リゾートエクスプレス」を発売。[2]
1991年8月1日
オーテックジャパンが販売する「リゾートエクスプレス」にFF車を追加。[3]
1992年6月19日
アべニールの発売2周年を記念して、専用のエクセーヌシート&トリムや専用車体色(ホワイトパール)を設定した特別仕様車「2.0 si: EXC(エクセ)」「2.0 si: EXC アテーサ」を発売。[4]
1993年1月
マイナーチェンジによりグリル等が変更される。ワゴンの搭載エンジンのSR18DiエンジンがSR18DEに変更になり、ワゴンにディーゼルエンジンCD20T搭載モデル(4ATのみ)と、本皮シートを装備した最上級グレード「ef(エフ)」を追加。
1993年5月11日
日産自動車創立60周年を記念した特別仕様車「si: 60th ANNIVERSARY」を発売。なお、同年7月末までの期間限定販売となる。[5]
1993年12月
「salut!(サリュー!)」追加。
1994年11月
一部変更。「bi:」にCD20T型ディーゼルターボエンジン搭載モデルを追加し、「ei:」を廃止。
1995年8月
ワゴンを大幅にマイナーチェンジ。同時に全てのグレード名に「サリュー」を冠した事から、営業上の車名を「アベニール サリュー」とした(正式な車名は、アベニールのまま)。ヒット商品となったスバル・レガシィを意識した、外観を中心とした手直しとも言え、リアオーバーハングを延長した上で、リアコンビネーションランプを横長の大型のものに変更し、新たにガラスハッチを採用、併せてエンジンフード、ラジエーターグリル、フロントバンパーもボリュームのある形状に変更された。これらは当時のウイングロードプレーリージョイにも共通の手法であるが、初期のプレーンなスタイルを引き継ぐのはバンモデルのアべニールカーゴのみとなった。また、運転席SRSエアバッグが標準装備となり、インパネはP10プリメーラと共通化、4WDに直列4気筒DOHC SR20DET型ターボ付エンジン搭載モデルを設定した[注釈 1]。CMには松嶋菜々子が登場し、松嶋のブレイクのきっかけになった[注釈 2]
1998年7月[6]
生産終了。在庫対応分のみの販売となる。
1998年8月
2代目と入れ替わる形で販売終了。
なおこのモデルのカーゴに関しては一時期、トヨタ・カルディナバン等と同様に、リボンタイヤ等を履かせるローライダー系のカスタムを好む層に人気があった。

2代目 W11型(1998年 - 2005年) 編集

日産・アベニール(2代目)
W11型
 
前期型サリュー(1998年8月 - 2000年5月)
 
後期型サリューX(2002年8月 - 2005年11月)
概要
販売期間 1998年8月 - 2005年11月
ボディ
乗車定員 5人
ボディタイプ 5ドアステーションワゴン
エンジン位置 フロント
駆動方式 前輪駆動 / 四輪駆動
パワートレイン
エンジン 直4 2.0L SR20DE(T)
直4 2.0L QR20DE
直4 1.8L QG18DE
直4 2.0L CD20ET ディーゼル
変速機 4AT/ハイパーCVT-M6/5MT
前: ストラット
後: マルチリンク
前: ストラット
後: マルチリンク
車両寸法
ホイールベース 2,620mm
全長 4,650-4,675mm
全幅 1,695mm
全高 1,450-1,515mm
その他
姉妹車 日産・エキスパート
生産台数 5万7398台[7]
系譜
後継 ウィングロードに統合
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1998年8月24日
W11型にモデルチェンジ[8]。CMコピーは「THE JAPAN TOURER」。営業上の車名は再び「アベニール」に戻された。GT4シリーズとサリューシリーズの2系統のグレード体系をもつ。パワートレインとサスペンションをM12型プレーリーリバティと共用する。
搭載するエンジンは全て横置き直列4気筒で、SR20DET型インタークーラーターボ、SR20DE型、QG18DE型CD20ET型ディーゼルターボの4機種。SR20DE型搭載のFF車にはHyperCVT M6を組合わせるモデルを設定した。初期のCM出演者は稲森いずみ・高木ヒロオ。
また、オーテックジャパンの手による特別仕様車ライダー」が設定された。車体を共用する商用モデルは当面は従来型継続。1999年6月に「エキスパート」として独立。
1999年10月5日
「サリュー ジャパンツアラーリミテッド」、「サリュー ジャパンツアラーケンウッド」を追加[9]。サリューXのSR20DE搭載車をベースにエアロパーツ、プライバシーガラス、アルミホイール、専用エンブレム等を装備し[注釈 3]、「ジャパンツアラーケンウッド」では更にケンウッドサウンドクルージングシステム、フロント/リアフォグランプ、KENWOODロゴ入りラゲッジフルカバー等も装備する。専用ボディカラーとして、コバルトブルーメタリックを設定。
2000年5月24日
マイナーチェンジ。フロント周りをGT4シリーズのデザインに統一し、P11プリメーラと酷似していたインパネ形状を新造形の専用品に変更。TV/ナビゲーションシステムは、車両情報表示機能を組み合わせた7インチワイド画面のアベニールマルチインフォメーションディスプレイとする。レーザーレーダーを用いた車間自動制御システム[注釈 4]をSR20DE搭載車にメーカーオプション設定。SR20DE型の出力を向上させた他、サリューXおよびサリューJに設定のあった5MTモデルとCD20ET型搭載車を廃止。MT廃止によりパーキングブレーキを全車足踏み式に変更。また、SR20DE搭載車の4WDシステムがアテーサからオートコントロール4WDになり、ミッションも4ATからHyperCVT M6に変更した。
あわせて、アベニール誕生10周年記念車として、TV/ナビゲーションシステムやCD一体AM/FM電子チューナーラジオ等を標準装備する「V Limited」も設定[10]
2000年10月17日
クロスオーバーSUVテイストの「ブラスター(BLASTAR)」を追加。既存モデルに対し、大径タイヤ及びサスペンションジオメトリーの変更で最低地上高を上げ、専用の大型バンパーや専用ツートンカラー、専用シート地を装備。FFと4WDを設定。搭載するエンジンはSR20DE型のみ。
あわせて、ISOFIX対応チャイルドシート用アンカー(リヤシート左右2席)を、ブラスターを含む全グレードにオプション設定した[11]
2000年10月24日
オーテックジャパン扱いの特別仕様車「Kid'sバージョン」を発売[12]。サリューXのSR20DE搭載車をベースに専用ボディサイドストライプ/ネーミングステッカー、専用シート生地(カブロン/パートナーコンビ)、トラッシュボックス、ラゲッジトレイ、ラゲッジネット、電源コンセント(100V・100W)、ISOFIX対応チャイルドシート用アンカー(リヤシート左右2席)、天井取付型ピュアトロン等を装備。後席テレビ[注釈 5]付車も設定。
2001年3月
同月末を以て日産車体京都工場での生産を終了し、生産を日産車体湘南工場に移管。
2001年5月28日
「サリューX NAVIエディション」、「サリューX スペシャルエディション」を発売。前者はサリューXのSR20DE搭載・FF車をベースにTV/ナビゲーションシステム(DVD方式)とCD一体FM/AMチューナーラジオをセットで採用したことに加え、カラードフロントグリルや専用シート&トリム地を装備した他、専用オプションとしてエアロパッケージ及びルーフレールレス仕様を設定。後者はサリューXのQG18DE搭載車をベースにオーディオレス仕様とした上で、前者と共通のカラードフロントグリルや専用シート&トリム地を装備。
あわせて、Jナビ ナビゲーションシステムをサリューX スペシャルエディションを含む一部グレードにオプション設定した[13]
2001年8月29日
ブラスターに期間限定の冬仕様車「バージョン-S」を発売[14]。「バージョン-S」とは、スキーやスノーボードなどのウインタースポーツ用品のトップブランド、サロモンの協力を得て開発した、冬仕様の限定車。汚れや水分のふき取りが簡単な専用シート地やドアトリム、電源コンセント(AC100V・100W)などを標準装備する。さらに、「SALOMON」ロゴ入り専用シートタグもついている。また、寒冷地仕様が標準。ワイパーつけ根の氷結を防止する熱線入りの「ワイパーデアイサー」「ヒーター付ドアミラー」「大型バッテリー」が装備される。同年12月までの販売。
2002年8月27日
マイナーチェンジ[15]。車名ロゴを「AVENIr」からNE-01の「AVENIR」に変更。あわせてラジエータグリルについていたアベニールのエンブレムを廃止し、日産のブランドロゴのエンブレムに変更された。また、SR20DE型に替わってQR20DE型エンジンを搭載するとともに、ターボのSR20DET搭載のGT系グレードやブラスターのFF等廃止。4WD車のミッションが全車4ATに戻された。ユーティリティレール、カブロン地シート、電源コンセント、ラゲッジスポットランプのセットオプション「フィッシングバージョン」を設定。
2005年10月[16]
生産終了。在庫対応分のみの販売となる。
2005年11月[17]
在庫対応分が完売し、販売終了。実質的な後継車はウイングロード。エキスパートは2008年まで生産を継続。

車名の由来 編集

フランス語で「将来」「未来」を意味する「avenir.」から。ただし基本的に綴り字発音であり、フランス語での発音ではアヴニールが近い。なお、フランス語に近い言語の内、日本語の発音表記上最も近いのはスペイン語で同じ綴り(avenir)で「合意させる、起こる」という単語があり、発音をカナ表記すればアベニルまたはアベニールが近い。また「Salut」はフランス語で「やぁ!」とか「こんにちは」を意味し、「ブラスター(Blastar)」は「突風」を意味する英語「Blast」と「人気者」を意味する「Star」を組み合わせた造語である。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ SR20DET型搭載モデルのインタークーラーは当時のシルビア/180SXより大きなサイズが設定された。
  2. ^ のちに松嶋は14代目前期型トヨタ・クラウンのCMにビートたけしと共演する形で出演した。
  3. ^ 但し、折り畳み式トノボードとルーフレールはオプションとなり、ドアトリムのクロス張りが省かれる。
  4. ^ CVTとの協調制御は世界初。
  5. ^ 8インチワイド液晶モニター(ワイヤレスリモコン、音声多重チューナー、ルーフ取付型ダイバーシティアンテナを含む)&ビデオ端子

出典 編集

  1. ^ a b デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第15号21ページより。
  2. ^ アベニールの特別仕様車「リゾートエクスプレス」を発売』(プレスリリース)日産自動車株式会社、1991年2月27日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-ebbd007f7937a44a83363c968606ae39-19910227-01-j2022年9月27日閲覧 
  3. ^ アベニールの特別仕様車「リゾートエクスプレス」に2WDを追加』(プレスリリース)日産自動車株式会社、1991年8月1日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-8aef385f4e3efd0619b175c66502c8fa-19910801-04-j2024年3月16日閲覧 
  4. ^ アベニールに特別仕様車「20si(シー): EXC(エクセ)」、「20si(シー): EXC(エクセ) アテーサ」を追加』(プレスリリース)日産自動車株式会社、1992年6月19日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-d120d880613ceccedc3c11c21502c948-19920619-01-j2024年3月16日閲覧 
  5. ^ 創立60周年特別記念車「60th ANNIVERSARY」第2弾を発売』(プレスリリース)日産自動車株式会社、1993年5月11日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-52ceef740fc0095afb0845bf4002edbd-19930511-02-j2022年9月27日閲覧 
  6. ^ アべニール(日産)1990年5月~1998年7月生産モデルのカタログ”. リクルート株式会社 (2020年1月18日). 2020年1月18日閲覧。
  7. ^ デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車第46号17ページより。
  8. ^ 新型「アベニール」を発売』(プレスリリース)日産自動車株式会社、1998年8月24日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-832261c25e9d6fa480b83b275d039f9b-19980824-j2022年3月24日閲覧 
  9. ^ アベニールに「サリュー ジャパンツアラーリミテッド」 「サリュー ジャパンツアラーケンウッド」を追加』(プレスリリース)日産自動車株式会社、1998年8月24日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-d151058c73d721dcf6d0cc853f00b576-19991005_2344-j2022年3月24日閲覧 
  10. ^ 「アベニール」をマイナーチェンジ』(プレスリリース)日産自動車株式会社、2000年5月25日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-0032ff05aa6577577d36a0990c026df5-avenir-undergoes-minor-model-change-j2022年3月24日閲覧 
  11. ^ アベニールに新グレード「ブラスター」を追加』(プレスリリース)日産自動車株式会社、2000年10月18日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-07e40726ba0ab5f10a88d671e8005c2d-20001018_0018-j2022年3月24日閲覧 
  12. ^ エルグランド、ウイングロード、アベニール「Kid'sバージョン」を発売』(プレスリリース)日産自動車株式会社、2000年10月25日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-07e40726ba0ab5f10a88d671e8001432-kids2022年3月24日閲覧 
  13. ^ アベニールに「サリューX NAVIエディション」、「サリューX スペシャルエディション」を追加』(プレスリリース)日産自動車株式会社、2001年5月28日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-eb08865c58e1cfe50e27e36b789de9de-010528-022022年3月24日閲覧 
  14. ^ エルグランド、アベニール、キューブの期間限定車「バージョン-S」を発売』(プレスリリース)日産自動車株式会社、2001年8月29日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-ca619a7056ab8d3683b5498e05b96ea2-010829-012022年3月24日閲覧 
  15. ^ 「アベニール」を一部改良 〜あわせて「フィッシングバージョン」をオプション設定〜』(プレスリリース)日産自動車株式会社、2002年8月27日https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-ef050a8f703e15119d13f6a245b19e28-020827-022022年3月24日閲覧 
  16. ^ アベニール(1998年8月~2005年10月)”. トヨタ自動車株式会社 (2020年1月18日). 2020年1月18日閲覧。
  17. ^ アベニール(日産)のカタログ”. リクルート株式会社 (2020年1月18日). 2020年1月18日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集