日蓮宗

日蓮宗(にちれんしゅう)とは、

  1. 仏教宗旨の一つ。法華宗とも。鎌倉時代中期日蓮によって興され、かつては(天台法華宗に対し)日蓮法華宗とも称した[1]。開祖である日蓮の主要著作「立正安国論」のタイトルから、わかるように、国家主義的(ナショナリズム)傾向の強い教えと、見る識者は多い[2][3][4][5]
  2. 仏教の宗派の一つ。身延山久遠寺(くおんじ)を総本山とする宗教団体。現代では、宗教法人・日蓮宗のこと。

宗旨・日蓮宗の概要

本節では鎌倉仏教の宗旨日蓮宗(法華宗)の宗祖日蓮とその教えならびに分派の大要を紹介する。

日蓮のあゆみ

開祖日蓮は鎌倉時代に生まれた[6]

甲斐国身延山久遠寺をひらいた日蓮は、1282年常陸国湯治にむかったが、途中、武蔵国の法華信者で池上郷の地頭池上宗仲宅で没した[7]

日蓮のおしえ

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日蓮は、法華経(妙法蓮華経)を釈迦の正しい教えとして選び、「南無妙法蓮華経」という題目をとなえること(唱題)を重視した[8]。「南無妙法蓮華経」とは「法華経に帰依する」の意であり、「題目」は経典の表題を唱えることに由来する[9]

日蓮に対する天台教学の影響

日蓮は、天台の教観二門(教相門・止観門)を教学の大綱とし、

などは天台教学を踏襲するとともに、「法華経の行者」としての自覚と末法観を基調とした独自性を示した[10]

末法観と法華経

日蓮は、鎌倉仏教の他の祖師たちと同様、鎌倉時代をすでに末法に入っている時代とみなしていた。 そして、法華経を、滅後末法の世に向けて説かれた経典とみなし、とりわけ「如来寿量品」を、在世の衆生に対してではなく、滅度後の衆生の救済を目的として説かれたものとみなした。そして法華経にとかれた

等を「末法悪世の相」を説いたものとみなした。そして当時の現実の世相(鎌倉幕府内部の権力闘争、天変地異、モンゴル帝国からの使者の到来、釈迦を第一に尊ばない阿弥陀信仰の盛行など)を、日本において法華経がないがしろにされてきた結果とみなした。 日蓮にとっては「末法における顛倒の衆生」、「末法重病の衆生」を済度しうる唯一最勝の良薬は「法華経」のみであった。「真言亡国、禅天魔、念仏無間、律国賊」と激しく他宗を攻撃する「四箇格言」は、法華経のみが末法において衆生を救済する唯一のおしえであり、他の教えは、かえって衆生を救済から遠ざけてしまう、という確信に基づくものであった[11]。。

「法華経の行者」の自覚

教主釈尊と事の思想

五綱教判

法華経を唯一の正法であり、時間空間を超越した絶対の真理とした日蓮は、教・機・時・国・序のいずれにおいても法華経が至高であるとする「五綱の教判」を立てた[12]。つまり、「教」(教え)にはおいては、法華経のうち前半14章を迹門、後半14章を本門とし、本門こそ人びとを救済する法華経であるとし、「機」(素質能力)においては、末法に生きて素質や能力の低下した人間にふさわしい教えは法華経であり、「時」は末法であることから法華経が正法とされ、「国」は大乗仏教の流布した日本国にふさわしいのはやはり法華経、「序」(順序)は最後に流布するのは法華経本門の教えであるとした[12]

「五綱の教判」のなかで、信仰における重要な契機として「時」(末法の世である現在)・「国」(日本国)を掲げるあり方から、こんにちでも、日蓮宗系の各宗派においては、他の宗派にはあまりみられない政治問題への積極的なかかわりがみられる[13]

日蓮の一念三千

日蓮は、天台教学を「迹門の法華経」であり「理の一念三千」と呼んで、その思弁性・観念性を批判し、みずからの教えを本門として「事の一念三千」を説き、実践的・宗教的であらねばならないとした[12]。日蓮はまた、法(真理)をよりどころとすべきであって、人(権力)をよりどころとしてはならないと説いた。かれは、仏法と王法が一致する王仏冥合を理想とし、正しい法にもとづかなければ、正しい政治はおこなわれないと主張したのである[12]。また、王法(政治)の主体を天皇とし、天皇であっても仏法に背けば仏罰をこうむるとし、宗教上での天皇の権威を一切みとめない仏法絶対の立場に立った[12]

三大秘法

日蓮系諸派の教義

思想面(本仏の位置付け、妙法蓮華経の勝劣)から、室町期以降、大別して3つの分派(門流)が成立した。

本仏の位置付け
釈尊を本仏として久遠實成本師釈迦牟尼仏と称する/日蓮を本仏とする
妙法蓮華経の勝劣
所依の妙法蓮華経を構成する二十八品(28章)を前半の「迹門」(しゃくもん)、後半の「本門」に二分し、本門に法華経の極意があるとする勝劣派/二十八品全体を一体のものとして扱うべきとする一致派

すなわち

である。

権力との距離についての実践面[注釈 1]から、桃山時代末期より江戸時代にかけて

という区分も生じた。

宗派・日蓮宗の概要

近代では、1872年(明治5年)の教部省布達「一宗一管長」制に基づいて成立した教団に端を発する[14]

これには、現在の日蓮正宗法華宗陣門流など、日蓮門下の全門流が帰属した。同制度が1874年(明治7年)に緩和。この日蓮宗日蓮宗一致派日蓮宗勝劣派に分かれ、前者は釈尊を本仏とする一致派の統一教団として再組織された(ただし、不受不施派の日奥門流、不受不施講門派を除く)。

1876年(明治9年)、日蓮宗一致派が、日蓮宗と改称することを許される。

宗教法人・日蓮宗の概要

1941年(昭和16年)、時局緊迫を理由に諸宗教、諸宗派の統合を迫る政府当局の指導を受け、「釈尊を本仏とする勝劣派」である顕本法華宗(日什門流)、「日蓮を本仏とする勝劣派」である本門宗(日興門流)と、日蓮宗(旧称日蓮宗一致派)が、形式上、それぞれの宗派を解消して対等の立場で合併(三派合同)し発足。

身延山久遠寺(くおんじ)を総本山とし、宗務院を池上本門寺(東京都大田区池上)に置く日蓮系諸宗派中の最大宗派。祖山1(総本山)、霊跡寺院14(大本山7、本山7)、由緒寺院42(本山42)、寺院数5,200ヶ寺、直系信徒330万人。

中世期に成立していた門流の多くと、思想的潮流の相当部分を包含する。 なお、日什門流・日興門流は、門流に所属する寺院の一部のみが日蓮宗に帰属している[注釈 2]。詳細は日蓮宗什師会興統法縁会を参照。

また、上記とは別に宗教法人法施行以降身延祖廟に帰正すべく法華宗三派等日蓮系宗派寺院からの散発的な日蓮宗への改宗が現在も続いている。

主要寺院

現在の日蓮宗宗制では寺院は祖山、霊跡寺院、由緒寺院、一般寺院に分けられている。江戸時代本末制度に始まる寺格は昭和16年の本末解体で消滅し実態はないが、日蓮宗宗制では総本山・大本山・本山の称号を用いることができると規定されている。

祖山は日蓮の遺言に従い遺骨が埋葬された祖廟がある身延山久遠寺(日蓮棲神の霊山とされる)で、貫首法主と称する。霊跡寺院は日蓮一代の重要な事跡、由緒寺院は宗門史上顕著な沿革のある寺院で、住職(法律上の代表役員)を貫首と称する[注釈 3]

祖山、霊跡寺院、由緒寺院は「日蓮宗全国本山会」を組織している。総裁は身延山久遠寺内野日總法主、会長は伊東佛現寺板垣日祐貫首、事務局長は北野立本寺上田日瑞貫首。

本山妙教寺は平成21年7月に一般寺院として日蓮宗に帰一したが、客員として長らく日蓮宗全国本山会に参加している為、その他本山としてあげておく。

祖山

霊跡寺院

由緒寺院

その他

法華寺院巡り

三派合同時の本山

昭和16年三派(旧日蓮宗、旧顕本法華宗、旧本門宗)合同時の本山は以下の通り

旧日蓮宗44本山(総本山1、大本山4、本山39)、1御由緒寺院
旧顕本法華宗(総本山1、別格山8)
旧本門宗(大本山7)

宗務院

東京都大田区池上1-32-15、本門寺敷地内に所在する。

内局

日蓮宗の行政府。現在の内局は以下の通り。

宗会

日蓮宗の立法府。選挙区選出の43名に参与推薦の2名をくわえた45名で構成されている。会派として同心会と明和会がある。現在の宗会議員は以下の通り。選挙区、氏名、住職寺院、会派の順。

大学

研究機関

布教機関・新聞社

病院

脚注

注釈

  1. ^ 日蓮宗の檀信徒ではない時の権力者からの布施を受けることが是か非かという問題である。
  2. ^ 第二次世界大戦終戦により「統合を強要する圧力」が消滅したりするのに伴い、旧顕本法華宗、旧本門宗に属する本山、末寺には日蓮宗より独立するものもあったが、旧顕本法華宗の改革派である本山妙國寺、本山本興寺、本山玄妙寺、本山妙立寺、や、旧本門宗の大本山重須本門寺、本山小泉久遠寺、本山實成寺とそれらの末寺は引き続き、日蓮宗の内部で固有の教義を維持し続けている。
  3. ^ 中山法華経寺の貫首のみ、荒行堂が設置されているのに伴い、伝主とも称する。

出典

  1. ^ 『岩波仏教辞典 第二版』(2002)
  2. ^ 中村 元、「東洋人の思惟方法」
  3. ^ ウィリアム・ウッダード、「天皇と神道 GHQの宗教政策」、1988年、サイマル出版会、238ページ
  4. ^ Alan Macfarlane,アラン・マクファーレン,Japan Through the Looking Glass,2007,Profile Books,page199
  5. ^ G.B.Sansom,Japan : A Short Cultural History,1931 first published,Stanford University Press,1978,page334
  6. ^ 成川(1983)pp.25-27
  7. ^ 村上(1981)p.104
  8. ^ 有賀(1975)pp.75-92
  9. ^ 村上(1981)p.99
  10. ^ 有賀(1975)pp.75-76
  11. ^ 有賀(1975)pp.76-77
  12. ^ a b c d e 村上(1981)pp.102-103
  13. ^ 村上(1981)p.104
  14. ^ 『日蓮宗事典』(1982)

参考文献

関連項目

法華経

宗祖日蓮と教団をめぐる人々

教義と門流

一致勝劣
受施
弟子門流

門流

法縁(法脈、法類)

日蓮宗檀林の指導的学僧(僧名「日○」)や地名に由来するいわゆる学閥。各檀林で下記の法縁が発生している。尚、一部の法縁は複数の檀林に分かれている。

日蓮聖人門下連合会

現在、下記11団体が加盟している。

法具

政治・社会との関わり

外部リンク