欧州文化首都(おうしゅうぶんかしゅと、: European Capital of Culture: capitale européenne de la culture)は、欧州連合 (EU) が指定した都市で、一年間にわたり集中的に各種の文化行事を展開する事業。

欧州文化都市および欧州文化首都に選ばれた都市の位置
2009年 欧州文化首都のシンボルを側面に描いたリンツの路面電車
2008年 欧州文化首都リヴァプールのバナー
1988年 欧州文化都市ベルリンの記念切手

歴史 編集

当初、欧州文化都市: European City of Culture: ville européenne de la culture)と呼ばれていたこの事業は、1983年ギリシャの文化大臣メリナ・メルクーリが提唱し、1985年アテネを最初の指定都市として始まった。当初は、加盟国を一つずつ巡回する形で行われ、順番にあたる国の政府が開催都市を決定した。初めは各国の首都など、文字どおり欧州を文化面で代表する都市が選ばれることが多かったが、やがて単なる文化事業ではなく、観光客の誘引など経済効果も大きい事業として注目されるようになると、都市開発の契機とすることを企図して、比較的知名度やイメージが見劣りする経済的に停滞した都市などを選ぶ例が増えていった。特に文化が都市と周辺地域の長期的な文化ベースの開発戦略の一部として組み込まれている場合、欧州文化首都は社会的および経済的利益を大幅に最大化すると考えられている。[1]

1999年、名称が欧州文化都市から欧州文化首都に変更された。

欧州連合拡大に伴いこの事業の導入希望が増えたことを受け、2000年には一挙に9都市が指定され、その後も年次によっては複数の都市が指定されるようになった。2011年より、文化首都に選ばれた別個の国の二都市は協力して活動し、協力してイベントを運営している。

文化首都に選ばれるためには、欧州全体の文化の特徴を備えた文化プログラムを計画し、またそのイベントにはその都市の市民の参加も不可欠である。選ばれるイベントのテーマや芸術家や運営者も欧州各国から集まったものでなくてはならず、またプログラム自身もその都市の長期的な文化、経済、社会発展に継続的な効果のあるものでなくてはならないとされている。

2021年度(新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、実際には2022年度)から、EU加盟候補国(アルバニアモンテネグロ北マケドニアセルビアトルコ)、加盟候補国となる可能性がある諸国(ボスニア・ヘルツェゴビナコソボ)および欧州自由貿易連合 (EFTA) 加盟国(アイスランドリヒテンシュタインノルウェースイス)の都市からも、3年に1度欧州文化首都が選ばれることになった。選考は、立候補した都市のオープンコンペ方式による[2]

欧州文化首都の一覧 編集

欧州文化都市・欧州文化首都の一覧
都市名 国名 ウェブサイト
欧州文化都市
1985年 アテネ   ギリシャ
1986年 フィレンツェ   イタリア
1987年 アムステルダム   オランダ
1988年 西ベルリン   西ドイツ
1989年 パリ   フランス
1990年 グラスゴー   イギリス
1991年 ダブリン   アイルランド
1992年 マドリード   スペイン
1993年 アントウェルペン   ベルギー
1994年 リスボン   ポルトガル
1995年 ルクセンブルク市   ルクセンブルク
1996年 コペンハーゲン   デンマーク
1997年 テッサロニキ   ギリシャ
1998年 ストックホルム   スウェーデン
欧州文化首都
1999年 ヴァイマル   ドイツ
2000年 ブリュッセル   ベルギー
アヴィニョン   フランス
サンティアゴ・デ・コンポステーラ   スペイン
ボローニャ   イタリア
ベルゲン   ノルウェー
クラクフ   ポーランド
ヘルシンキ   フィンランド
レイキャヴィーク   アイスランド
プラハ   チェコ
2001年 ロッテルダム   オランダ
ポルト   ポルトガル
2002年 サラマンカ   スペイン
ブルッヘ   ベルギー
2003年 グラーツ   オーストリア graz03.at
2004年 リール   フランス
ジェノヴァ   イタリア
2005年 コーク   アイルランド cork2005.ie
2006年 パトラ   ギリシャ
2007年 シビウ   ルーマニア sibiu2007.ro
ルクセンブルク市   ルクセンブルク
2008年 スタヴァンゲル   ノルウェー stavanger2008.no
リヴァプール   イギリス liverpool08.com
2009年 ヴィリニュス   リトアニア culturelive.vilnius.lt
リンツ   オーストリア linz09.at
2010年 エッセン   ドイツ ruhr2010.de
ペーチ   ハンガリー en.pecs2010.hu
イスタンブール   トルコ istanbul2010.org
2011年 トゥルク   フィンランド turku2011.fi
タリン   エストニア tallinn2011.ee
2012年 ギマランイス   ポルトガル guimaraes2012.pt
マリボル   スロベニア maribor2012.info
2013年 マルセイユ   フランス marseille-provence2013.fr
コシツェ   スロバキア kosice2013.sk
2014年 ウメオ   スウェーデン umea2014.se
リガ   ラトビア riga2014.org
2015年 モンス   ベルギー mons2015.eu
プルゼニ   チェコ plzen2015.net
2016年 サン・セバスティアン   スペイン sansebastian2016.eu
ヴロツワフ   ポーランド wro2016.pl
2017年 オーフス   デンマーク aarhus2017.dk/
パフォス   キプロス pafos2017.eu/
2018年 レーワルデン   オランダ 2018.nl
バレッタ   マルタ valletta2018.org
2019年 マテーラ   イタリア matera-basilicata2019.it/
プロヴディフ   ブルガリア plovdiv2019.eu/
2020年 - 2021年4月 ゴールウェイ   アイルランド galway2020.ie/
リエカ   クロアチア rijeka2020.eu
2022年 カウナス   リトアニア kaunas2022.eu/
エシュ=シュル=アルゼット   ルクセンブルク esch2022.lu/
ノヴィ・サド   セルビア novisad2021.rs/新型コロナウイルス感染症の世界的流行による延期)
2023年 ヴェスプレーム   ハンガリー veszprembalaton2023.hu
ティミショアラ   ルーマニア timisoara2021.ro/(新型コロナウイルス感染症の世界的流行による延期)
エレウシス   ギリシャ 2023eleusis.eu/(新型コロナウイルス感染症の世界的流行による延期)
2024年 タルトゥ   エストニア tartu2024.ee/
バート・イシュル   オーストリア salzkammergut-2024.at/
ボードー   ノルウェー bodo2024.no/
2025年 ノヴァ・ゴリツァ / ゴリツィア   スロベニア
  イタリア
go2025.eu/
ケムニッツ   ドイツ chemnitz2025.de/
2026年 トレンチーン   スロバキア trencin2026.sk/
オウル   フィンランド oulu2026.eu/
2027年 リエパーヤ   ラトビア liepaja2027.lv/
エヴォラ   ポルトガル evora2027.com/
2028年 (未定)   チェコ
(未定)   フランス
2029年 (未定)   ポーランド
(未定)   スウェーデン
2030年 (未定)   キプロス
(未定)   ベルギー
(未定) (未定)
2031年 (未定)   マルタ
(未定)   スペイン
2032年 (未定)   ブルガリア
(未定)   デンマーク
2033年 (未定)   オランダ
(未定)   イタリア
(未定) (未定)

脚注 編集

  1. ^ Burkšienė, V., Dvorak, J., Burbulytė-Tsiskarishvili, G. (2018). Sustainability and Sustainability Marketing in Competing for the Title of European Capital of Culture. Organizacija, Vol. 51 (1), p. 66-78 https://www.degruyter.com/downloadpdf/j/orga.2018.51.issue-1/orga-2018-0005/orga-2018-0005.pdf
  2. ^ European Capitals of Culture”. European Union (2021年2月6日). 2021年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月6日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集