池田 年穂(いけだ としほ、1950年 - )は横浜市生まれ、慶應義塾大学名誉教授歴史学者翻訳家。専門は、移民論、移民文学、アメリカ社会史。ティモシー・スナイダータナハシ・コーツの著作のわが国における紹介者として知られる。

Introducing Prof. Timothy Snyder 2017.1.12

人物・来歴 編集

東京学芸大学附属高等学校卒業。慶應義塾大学文学部史学科卒業、同修士課程修了。海保眞夫可児弘明らの謦咳に接する。海保眞夫の遺志を継いで、2009年以降は翻訳にも力を入れるようになる。論文には移民関係のものが多いが、「福原有信と揺籃期の近代薬事制度」(共著者1名 1997年)は、「日本における化学史文献:日本篇」化学史研究Vol.34 (2007年)にも選ばれている。

2015年3月に、学内の各種役職、一橋大学・東京外国語大学講師、比較文明学会等の役員などを務めながら、慶應義塾大学の定年を迎えた。最終講義は2015年3月7日に「翻訳の世界―Traduttore, traditore!」と題して行った。

ユエンフォン・ウーン著『生寡婦(グラスウィドウ)――広東からカナダへ、家族の絆を求めて』(風響社 557頁. 2003年)の翻訳で Canadian Prime Minister's Award for Publishing (カナダ政府により1988年に創設)を受賞している。また、「ティモシー・スナイダー著『赤い大公――ハプスブルク家と東欧の20世紀』の翻訳等一連の業績」で2014年度「義塾賞」(慶應義塾により1949年に創設)を受賞している。

2009年以降の訳書は主に慶應義塾大学出版会から刊行されている。タナハシ・コーツ著『世界と僕のあいだに』(コーツの初邦訳、原著は全米図書賞受賞作品)『僕の大統領は黒人だった』、ピーター・ポマランツェフ著 『プーチンのユートピア――21世紀ロシアとプロパガンダ』(ポマランツェフの初邦訳、原著は英国王立文学協会オンダーチェ賞受賞作品)、 ジョーン・ディディオン著『悲しみにある者』(原著は全米図書賞メディシス賞受賞作品)など多数がある。ゴードン・S・ウッド(ウッドの初邦訳の『ベンジャミン・フランクリン、アメリカ人になる』)、ティモシー・スナイダー(スナイダーの初邦訳の『赤い大公――ハプスブルク家と東欧の20世紀』を一冊目として、『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』、『暴政――20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン』、『自由なき世界――フェイクデモクラシーと新たなファシズム』、『アメリカの病――パンデミックが暴く自由と連帯の危機』と続けて訳書を刊行している)、マーク・マゾワー(マゾワーの初邦訳とほぼ同時期に『国連と帝国――世界秩序をめぐる攻防の20世紀 』を刊行)、マーシ・ショア(ショアの初邦訳の『ウクライナの夜――革命と侵攻の現代史』)などの重要な歴史学者の著書の翻訳も目立つが、対象は、文学、ノンフィクション、伝記など幅広い分野にまたがっている。

また、1990年代まで行っていた日系移民と関わりのある翻訳も、ハリー・K・フクハラを扱ったパメラ・ロトナー・サカモト著『黒い雨に撃たれて――二つの祖国を生きた日系人家族の物語』(上下)、ラルフ・カーを扱ったアダム・シュレイガー著『日系人を救った政治家ラルフ・カー――信念のコロラド州知事』、アメリカに帰化した牧師島田重雄の自伝のシゲオ・シマダ著『石が叫ぶだろう―アメリカに渡った日本人牧師の自伝―』などで継続している。

翻訳 編集

  • カーラ・コルネホ・ヴィラヴィセンシオ『わたしは、不法移民――ヒスパニックのアメリカ』慶應義塾大学出版会 240頁. 2023年6月
  • マーシ・ショアウクライナの夜――革命と侵攻の現代史』慶應義塾大学出版会 288頁. 2022年6月
  • ティモシー・スナイダー『アメリカの病――パンデミックが暴く自由と連帯の危機』慶應義塾大学出版会 160頁. 2021年1月
  • タナハシ・コーツ『僕の大統領は黒人だった――バラク・オバマとアメリカの8年』共訳者2名. 慶應義塾大学出版会 上272頁. 下240頁.2020年11月
  • パメラ・ロトナー・サカモト『黒い雨に撃たれて――二つの祖国を生きた日系人家族の物語』共訳者1名. 慶應義塾大学出版会 上272頁. 下244頁.2020年7月
  • ティモシー・スナイダー 『自由なき世界――フェイクデモクラシーと新たなファシズム』慶應義塾大学出版会 上276頁. 下248頁. 2020年3月
  • ピーター・ポマランツェフプーチンのユートピア――21世紀ロシアとプロパガンダ』慶應義塾大学出版会 324頁. 2018年4月
  • ティモシー・スナイダー『暴政――20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン』慶應義塾大学出版会 144頁. 2017年7月
  • タナハシ・コーツ『世界と僕のあいだに』慶應義塾大学出版会 192頁. 2017年2月   
  • ティモシー・スナイダー『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』慶應義塾大学出版会 上320頁. 下308頁. 2016年7月
  • マーク・マゾワー『国連と帝国――世界秩序をめぐる攻防の20世紀』慶應義塾大学出版会 288頁. 2015年8月
  • ティモシー・スナイダー『赤い大公――ハプスブルク家と東欧の20世紀』慶應義塾大学出版会 512頁. 2014年4月
  • ジェニー・ウィテリック『ホロコーストを逃れて――ウクライナのレジスタンス』水声社 219頁. 2014年7月
  • アダム・シュレイガー『日系人を救った政治家ラルフ・カー――信念のコロラド州知事』水声社 451頁. 2013年7月
  • アンソニー・ルイス『敵対する思想の自由――アメリカ最高裁判事と修正第一条の物語』共訳者1名. 慶應義塾大学出版会 272頁. 2012年8月
  • ジョーン・ディディオン『さよなら、私のクィンターナ』慶應義塾大学出版会 208頁. 2012年1月
  • ジョーン・ディディオン『悲しみにある者』慶應義塾大学出版会 246頁. 2011年9月
  • ゴードン・S・ウッドベンジャミン・フランクリン、アメリカ人になる』共訳者2名. 慶應義塾大学出版会 370頁. 2010年9月
  • エミー・E・ワーナー『ユダヤ人を救え!―デンマークからスウェーデンへ』水声社 268頁. 2010年10月
  • ジェームズ・ウォルヴィン『奴隷制を生きた男たち』水声社 333頁. 2010年3月
  • シゲオ・シマダ『石が叫ぶだろう―アメリカに渡った日本人牧師の自伝』水声社 328頁. 2009年7月
  • ユエンフォン・ウーン『生寡婦 広東からカナダへ、家族の絆を求めて』風響社 557頁. 2003年5月
  • ジェフリー・アダチ『タダシの青春』西北出版(絶版) 137頁. 1998年12月
  • ジェシカ・サイキ『ハワイ物語ー日系米人作家ジェシカ・サイキ短篇集2ー』共訳者1名. 西北出版(絶版) 196頁. 1998年
  • ジェシカ・サイキ『プルメリアの日々ージェシカ・サイキ短篇集 1ー』共訳者1名. 西北出版(絶版) 185頁. 1994年
  • ロジャー・W・アクスフォード『リロケーション 日系米人強制収容の証言』西北出版(絶版) 188頁. 1991年
  • レ・フー・コア『フランスのベトナム人』(池田年穂編集 ; 池田年穂・藤田衆ら訳) 西北出版 (絶版) 320頁. 1989年
  • ブライス・ライアン『シンハリーズ・ヴィレッジ : ペルポラ村のくらし』西北出版(絶版) 214頁. 1988年

外部リンク 編集