物理学における演算子(えんざんし、operator)とは ある物理状態の空間から別の物理状態の空間への関数のこと。 演算子が用いられている最も簡単な例として対称性があり、群の考え方を有益にしている。 このことから、演算子は古典力学において非常に有用なツールとなる。 量子力学では演算子はさらに重要で、理論の定式化において本質的な部分をなす。 数学では「作用素」という語が使われているものと同じものであるが、以下では物理の観点から述べる(英語では同じ語で operator である)。

古典力学 編集

古典力学では粒子(または粒子系)の運動はラグランジアン  やそれと等価であるハミルトニアン  によって完全に決定される。これらは一般化座標q、一般化速度 共役運動量

 

についての関数である。

LHが一般化座標qと無関係であるときは、qが変化してもLHは変化しない。よってqが変化しても粒子のダイナミクスは変わらないままであり、これらの座標に共役な運動量は保存する。(これはネーターの定理の一例で、座標qについての運動の不変性は対称性となる。)古典力学における演算子は、これらの対称性と関連している。

より専門的には、Hが変換Gの作用下で不変であるとき、

 .

Gの元は物理的な演算子で、物理状態と対応する。

古典力学での演算子一覧 編集

変換 演算子 位置 運動量
並進対称性      
時間並進      
回転不変性      
ガリレイ変換      
パリティ      
T対称性      

ここで  は、単位ベクトル と角度θで定義される回転行列

量子力学 編集

位置表示した波動関数 に対して、位置演算子 運動量演算子 である( 虚数単位 ディラック定数)。 運動量表示した波動関数 に対して、運動量演算子 、位置演算子 である。 量子力学における演算子は必ずしも交換しない。たとえば上記の位置演算子と運動量演算子は非可換である: 不確定性原理も参照)。

出典 編集

関連項目 編集