漢数字(かんすうじ)は、を表記するのに使われる漢字である(ただし「〇」は漢数字としてのみ使用される俗字である)。十進法数詞および位取り記数法で用いる。前者は漢字文化圏内で相違がある。

漢数字で目が書かれたサイコロ

中日新聞東京新聞など、記事中(スポーツ面など一部を除く)でアラビア数字でなく漢数字を用い続けているメディアもある[1][2]

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漢数字には 0 から 9 を表す数字、10 のを表す位の字、それらを合わせた複合字がある。複合字は現在では一般的に使われていない。

小字と大字 編集

漢数字には「一」「二」「三」と続く小字と、「壱」「弐」「参」と続く大字がある[3]。通常は小字を用いるが改竄を防ぐため重要な数字の表記では大字を用いることがある[3]

一覧 編集

以下に漢数字を示す。これらの字は零を除き、甲骨文字の時から使われており、意味に変化がない。ただし四と万は字形が変わっている。

種類 算用
数字
漢数字 日本語 中国語 朝鮮語 越南語
標準[4] 音読み[5] 訓読み 中古音
[注 1][6]
普通話 上海語[注 2] 広東語 閩南語 客家語 朝鮮漢字音[7][8] 固有語 漢越語 固有語
文読 白読
呉音 漢音
ヘボン式片仮名現代/字音仮名遣 ヘボン式
平仮名現代/歴史的仮名遣
漢語拼音[5]
注音符号
耶魯粤拼 白話字 韓国・2000年式ハングル

/北朝鮮・M-R式(チョソングル)

字国語字喃[9][10]
一の位 0 〇・零  れい ryō
(リョウ
/リャウ)
rei(レイ) leng líng(ㄌㄧㄥˊ) lin1 ling4 lêng khòng làng yeong(
/ryŏng(
linh không (空)
1 いち ichi(イチ) itsu(イツ) hito(ひと) ʔjit yī(ㄧ) ih4 yat1 i̍t chi̍t yit il( hana(하나 nhất một(𠬠)
2 ni(ニ) ji(ジ) futa(ふた) nyijH èr(ㄦˋ) r3(文)

/nyi3(白)

yi6 jī/lī nn̄g ngi i( dul/tul( nhị/nhì hai(𠄩)
3 さん san(サン/サム) san(サン/サム) mi(み) sam sān(ㄙㄢ) sae1 saam1 sam saⁿ sâm sam( set( tam ba(𠀧)
4 よん(し) shi(シ) shi(シ) yo(よ) sijH sì(ㄙˋ) sy3 sei3/si3 si sa( net( tứ/ bốn(𦊚)
5 go(ゴ) go(ゴ) istu, i(いつ, い) nguX wǔ(ㄨˇ) u2(文)

/ng2(白)

ng5 ngó͘ gō͘ ńg o( daseot

/tasŏt(다섯

ngũ năm(𠄼)
6 ろく roku(ロク) riku(リク) mu(む) ljuwk liù(ㄌㄧㄡˋ) loh4 luk6 lio̍k la̍k liuk yuk(

/ryuk(

yeoseot

/yŏsŏt(여섯

lục sáu(𦒹)
7 なな(しち) shichi(シチ) shitsu(シツ) nana(なな) tshit qī(ㄑㄧ) tshih4 chat1 chhit chhit chhit chil( ilgop(일곱 thất bảy(𦉱)
8 はち hachi(ハチ) hatsu(ハツ) ya(や) pɛt bā(ㄅㄚ) pah4 baat3 pat poeh pat pal/phal( yeodeol

/yŏdŏl(여덟

bát tám(𠔭)
9 きゅう(く) ku(ク) kyū(キュウ/キウ) kokono(ここの) kjuwX jiǔ(ㄐㄧㄡˇ) cieu2 gau2 kiú káu kiú gu/ku( ahop(아홉 cửu chín(𠃩)
10のN乗 10 じゅう jū(ジュウ/ジフ) shū(シュウ/シフ) tō, so(とお/とを, そ) dzyip shí(ㄕˊ) zeh4 sap6 si̍p cha̍p sṳ̍p sip( yeol/yŏl( thập mười(𨒒)
100 ひゃく hyaku(ヒャク) haku(ハク) momo, o(もも, お/ほ) pæk bǎi(ㄅㄞˇ) pah4 baak3 pek pah pak baek/paek( on( bách trăm(𤾓)
1000 せん sen(セン) sen(セン) chi(ち) tshen qiān(ㄑㄧㄢ) tshie1 chin1 chhian chheng chhiên cheon

/chŏn(

jeumeun

/chŭmŭn(즈믄

thiên nghìn(𠦳、北)
/ngàn(𠦳、南)
10000 まん mon(モン)[注 3] ban(バン) yorozu(よろず/よろづ) mjonH wàn(ㄨㄢˋ) vae3 maan6 bān van man( gol/kol( vạn
複合 20 廿 にじゅう nyū(ニュウ/ニフ) jū(ジュウ/ジフ) hata(はた) nyip niàn(ㄋㄧㄢˋ) nyae3 yaa6/ye6/
yap6/nim6
jia̍p ip(),

isip(이십

seumul

/sŭmul(스물

nhập
30 さんじゅう sō(ソウ/ソフ) sō(ソウ/サフ) miso(みそ) sop sà(ㄙㄚˋ) sah4 sa1/sa4 siap sap(),
samsip(삼십
seoreun

/sŏrŭn(서른

tạp
40 しじゅう shū(シュウ/シフ) shū(シュウ/シフ) yoso(よそ) xì(ㄒㄧˋ) se3 siap sip(),
sasip(사십
maheun

/mahŭn(마흔

tấp
200 にひゃく hiki(ヒキ) hyoku(ヒョク) futao(ふたお/ふたほ) bì(ㄅㄧˋ) bik1 pyeok/phyŏk(

,ibaek(이백

bức

混同や改竄を防ぐための特別な漢数字については大字を参照されたし。

字源 編集

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他の漢数字と異なり「〇」は新しい字であり、より前には現れない。唐の武則天(在位:690年 - 705年)が制定した則天文字に初めて「〇」が現れるが、これは「星」の代替字であり 0 の意味はなかった。星の球形を表した典型的な象形字で、楷書とは言いがたい文字であった(則天文字には、このように楷書的でない形の字がいくつかある)。

後漢に完成した『九章算術』には「(引き算の時)同符号は引き、異符号は加える。正を無入から引いて負とし、負を無入から引いて正とする」とある[11][12]。この「無入」とは 0 のことであるが、専用の字はなく、表記には空白を用いていた。

718年、太史監(天文台長)の瞿曇悉達が『九執暦』を漢訳し、0 を点で記すインドの数字を導入した。しかし算木を用いていた中国の天文学者や数学者は受け入れなかった[13]。『旧唐書』(945年)は 3040 および 0 を「三千四十」、「空」と記し[14]、また『新唐書』(1060年)は 3201 および 0 を「三千二百一」、「空」と記している[15]。この「空」は仏教と同じく、サンスクリット語शून्य(シューニャ)の訳語である。現在も、朝鮮語ベトナム語は「空」を 0 の意味に用いる(/gong と không)。また江戸時代和算家も 0 を「空(くう)」と呼んでいた。

南宋の時代、蔡元定1135年 - 1198年)は『律呂新書』の中で、118098 および 104976 を「十一萬八千□□九十八」、「十□萬四千九百七十六」と書いている[16]。この「□」は、以前から欠字を示すのに使われてきた記号、虚欠号である(中国語版: 虚缺号)。秦九韶の『数学九章』(1247年)では、算木数字で空位および 0 に「〇」を用いている。この「〇」は「□」が変化したものであり、アラビア数字の「0」ならびに則天文字の「〇」を借用したのではない[13]。もっとも、インドの数字のゼロに触発された可能性もある[11]

現在、位取り記数法では主に「〇」を使うが、後述の通り、熟語には必ず「零」を用い、「〇」は使われない。現代において「〇」と表記する場面は、郵便物宛名書き名刺等において郵便番号番地電話番号といった数字情報を漢数字表記する場合や、縦書き文章で西暦年を漢数字表記する場合に、限定的に用いられる程度である(これらの場合に限り、「零」と表記することは一般的でない。)。そもそも「〇」の部首は不明である。このことから、「〇」は独立した文字ではなく記号とみなされており、一般に漢和辞典では漢字ではなく記号の扱いとなっているため、「〇」の文字コードも、漢字領域ではなく記号領域で定義されている。

なお、「〇(ゼロ,U+3007)」と「○(丸印,U+25CB)」は異なる文字コードが付与されており別字であるため、混用しないよう注意が必要である。

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「零」は『説文解字』にも出ている古い字で、音符の「令」と意符の「雨(あめかんむり)」を合わせた形声字である。元々は小雨(零雨)を意味し、後にわずかな量(零細、零余)の意味にもなったが、0 の意味はなかった。『孫子算経』(4世紀頃)では「零」が余りの意味で使われている[17]李冶は、『測圓海鏡』(1248年)の中で 1024 を「一千〇二十四」、2220302 を「二百二十二万零三百零二」と書き、「〇」と「零」を同一視している[11]。それぞれ「一千とんで二十四」、「二百二十二万あまり三百あまり二」の意味である。

現在、熟語には必ず「零」を用いて、「零下」、「零封」などと書き、「〇」は使われない。

一、二、三、(亖) 編集

「一」、「二」、「三」、および「四」の古字の「」は、横画の本数でそれぞれ 1234 を意味する単語を表記したものである[18][19][20][21]算木を象ったものと解釈されることもある[22]が、一般的な見解ではない。

古い異体字に「弌」、「弍」、「」がある。なお、「弍」を音符、「」を意符とする形声字が「貳」であり、それが変化して「貮」になり、さらに簡略化して「」になった。

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西周では数詞 4 には「(U+4E96)」の文字が使われた。しかし「三」と紛らわしい形であるため、春秋時代から、仮借で「四」を使うようになった。この「四」という文字は、後に「呬」という文字で表記される単語を表す鼻から息を出すさまを象る象形文字、あるいは後に「泗」という文字で表記される単語を表す鼻から鼻水を出すさまを象る象形文字で、甲骨文字に既に見られる。[23][24][25]

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「五」という文字については、二本の線を交差させたさまを象る象形文字とされることが多い[26][27][28]が、近年では、縄巻きを象る象形文字で、後に「䇘」という文字で表記される単語を表すとする説がある[29]。どのような説にせよ、数詞 5 の表記に用いるのは仮借である。[30]

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「六」という文字の起源については明らかではない[31][32]。形の似た「入」と関連付けたり[33]、「宀」(家屋の形)と関連付けたり[34]するといった試みが行われているが、一般的な見解ではない。どのような説にせよ、数詞 6 の表記に用いるのは仮借である。

大字で「陸」という字を用いるが、これは意符「阜」と音符「坴」とから構成される形声文字である。

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「七」という文字の起源については、物体に入れた十字の切り口を象る象形文字、あるいは縦長の物体を横一文字に断つさまを象る象形文字で、後に「切」という文字で表記される単語を表すとする説が一般に受け入れられている。数詞 7 の表記に用いるのは仮借である。[35][36][37]

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「八」は二つに分かれる線を描いた文字で、「分かれる」を意味する単語を表す。数詞 8 の表記に用いるのは仮借である。[38]

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「九」は肘を含む腕全体を描いた象形文字で、後に「肘」という文字で表記される単語を表す。数詞 9 の表記に用いるのは仮借である。[39][40][41][42]

十、廿、卅、卌 編集

「十」は針を描いた象形文字で、後に「針」や「鍼」という文字で表記される単語を表す。数詞 10 の表記に用いるのは仮借である。[43][44][45]

「廿」は「十」を2つ書いた文字である[46]。「(U+5344)」とも書かれる。「卅」は「十」を3つ書いた文字である[47]。「丗(U+4E17)」とも書かれる。「(40,U+534C)」は「十」を4つ書いた文字である。

現在では「廿」、「卅」、「」は一般的でなく、一般的にはそれぞれ「二十」、「三十」、「四十」と漢字2文字で書かれる。

なお「世」も「丗」と書かれることがあるが、「十」を3つ書いた「卅」とは別字である。

百、皕 編集

「百」は「一」と「白」を合わせた形声文字であり、ここで「白」は単に音を示す。甲骨文字では 100 を「白」の上部分に横棒一本を加えた形の文字(=「百」)、200 を「白」の上部分に横棒二本を加えた形の文字、300 を「白」の上部分に横棒三本を加えた形の文字で表記していた。[48][49][50]

200を表す漢字の字形には、甲骨文字の「白」の上部分に横棒二本を加えた形の文字の他、楷書で「百」を2つ書いた「皕」という文字もあったが、これも現在では一般的でなく、一般的には「二百」と漢字2文字で書かれる。

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「千」は「一」と「人」を合わせた形声文字であり、ここで「人」は単に音を示す。甲骨文字では 1000 を「人」の中央部分に横棒一本を加えた形の文字(=「千」)、2000 を「人」の中央部分に横棒二本を加えた形の文字、3000 を「人」の中央部分に横棒三本を加えた形の文字で表記していた。[51][52][53]

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日本新字体および中国簡体字では、10000 は「万」と表記する。古くは「萬」と書いたが、遅くとも戦国時代 (中国)には「万」字も使われている。

「万」は「丏」から分化した文字で、その形は一般に「人」の頭部に視界を遮る物体があるさまを象る象形文字とされる。[54][55][56]

因みに仏教の吉祥の印であるは、当初は徳と訳されたが、北魏菩提流支は『十地経論』の中で、萬徳の意味を表す字として卍を萬(万)と訳した。693年武則天は卍を萬と読むことを定め、以降、卍は萬(万)と通用するようになった。

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「萬」は「一」とサソリを描いた象形文字を合わせた形声文字であり、ここでサソリを描いた象形文字は単に音を示す。甲骨文字では 10000 をサソリを描いた象形文字の下部に横棒一本を加えた形の文字(=「萬」)、20000 をサソリを描いた象形文字の下部に横棒二本を加えた形の文字、30000 をサソリを描いた象形文字の下部に横棒三本を加えた形の文字で表記していた。[57][58][59]

日本でも中国でも大字で 10000 を表現する場合は今も「萬」と書く。

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数詞 編集

漢数字は主に数詞を表すために使われる。漢数字による数詞を漢数詞と呼ぶ。この場合、漢数字の通りに発音するので、数字より文字と見なすべきである。漢字文化圏言語の数詞は基本的に古代の中国語に基づくが、多少の違いがあるため、表記にも当然違いがある。

上位から読むこと、大数は 4 桁ごとに区切ることは、共通である。

日本語 編集

日本語では、まず数を下位または小数点から 4 桁ごとに区切り、各 4 桁の組に「万」、「億」などの単位を付けて、上位から読む。4 桁の組の中では、「千」、「百」、「十」を単位として区切り、上位から読む。百位または十位が 1 のとき、「一」を言わず単に「百」、「十」と読む。千位は「一」を読んでも読まなくても良い。また、桁の数と単位が結びついて連濁音便を起こす。

例:

漢数字 読み
59 五十九 ごじゅうきゅう
370 三百七十 さんびゃくななじゅう
1234 (一)千二百三十四 (いっ)せんにひゃくさんじゅうよん

読みは主に呉音だが、〇、四、七、九は異なる読み方をする。〇は元々漢音しか使わないが、残りは比較的最近の変化である。大槻文彦の『口語法別記』(1917年)には、以下の記述がある[60]

數を呼ぶに、次のように云ふことがある、聞きちがわせぬ爲である。
二百四十番(ふたひゃくよんじうばん)
四百七十九圓(よんひゃくなゝじうきうえん)

当時はまだ「よん」、「なな」、「きゅう」は一般的ではなく、呉音の「し」、「しち」、「く」が使われていたことが分かる。ただしこれは東京の場合で、大阪では江戸時代にすでに「よん」、「なな」、「きゅう」になっていたという[61]。「ふた」は定着せず、株式市況競馬自衛隊などで使われるだけである。

ただし、四の後に助数詞が付くときに「よ」と読むのは古くから行われた。これは「」との同音を避けたためである。ジョアン・ロドリゲスの『日本大文典』(1604年)第三巻、「数名詞に就いて」の「構成」には、以下の記述がある[62]

四つを意味する Xi(四)は或語とは一緒に使はれない。それは死とか死ぬるとかを意味する Xi(死)の語と同音異義であって,異教徒は甚だしく嫌ひ,かかる語に接続した四つの意の Xi(四)はひびきがよくないからである。従って,その代りに‘よみ’の yo(よ)を使ふ。

詳しくは四の字を参照すること。

小数住所電話番号などで数字を粒読みする時、二と五は「にー」、「ごー」と 2 で読む[4]。また住所や電話番号などを粒読みする時は、〇を「まる」と読むことが多い。これは英語の oh と同じである。

中国語 編集

現代中国語では 100 以上の数に対しすべての 1 を略せずに読む。例えば 11111 は「一万一千一百一十一」と読む。また、503 は「五百三」ではなく「五百〇三」と読む。この「〇」の挿入は南宋以来の習慣である。「五百三」と言うと、「五百三十」の省略すなわち 530 の意味になる。「〇」は「とんで」の意味なので、0 が続いても一回だけ読む。例えば 5003 は「五千〇三」であり、「五千〇〇三」ではない。

「二」の代わりに「両」(繁体字: 簡体字: 普通話:liǎng, 上海語:lian, 広東語:leung5, 閩南語nn̄g)を用いるのも中国語の特徴である。「十」および「両」の前では「二」を使うが、それ以外では一般に「両」を用いる。単独使用の時や数字の最後位として数助詞なども付いていない時は「両」を使う方言はあるが、普通話では「二」しかほとんど使わない。「百」の前ではどちらでも良い。従って「2000」は「二千」ではなく「両千」(: 兩千: 两千)である。

なお、春秋戦国時代までの中国語では、各桁の間に「と」を意味する「」や「」を挿入した。『論語』の「吾十有五而志于学」では 15 は「十有五」と書かれている。

数字を粒読みする時は、通常はに言い替える。軍隊航空鉄道では、さらに特殊な音がある。以下に通常と軍隊の粒読み音を示す。

通用 軍隊
漢字 注音符号 拼音 漢字 注音符号 拼音
0 ㄌㄧㄥˊ líng ㄉㄨㄥˋ dòng
1 ㄧˉ ㄧㄠˉ yāo
2 ㄦˋ èr ㄌㄧㄤˇ liǎng
3 ㄙㄢˉ sān ㄙㄢˉ sān
4 ㄙˋ ㄉㄠˉ dāo
5 ㄨˇ ㄨˇ
6 ㄌㄧㄡˋ liù ㄌㄧㄡˋ liù
7 ㄑㄧˉ ㄍㄨㄞˇ guǎi
8 ㄅㄚˉ ㄅㄚˉ
9 ㄐㄧㄡˇ jiǔ ㄍㄡˉ gōu

朝鮮語 編集

朝鮮語では 1 をなるべく省略する。従って、10000 は単に「만()」であるが、110000 は「십일만(十一萬)」と読む。(ただし、日本語と同様に、重要な計算が必要な時には読む場合もある。)

ベトナム語 編集

ベトナム語ではほとんどの場合、固有語の数詞が用いられる。漢数字は「兆 (triệu)」(日本語の百万にあたる)以上の大数や 1 の位の「四 ()」(10 の位が 2~9 の場合)ぐらいでしか使われない。また、1 の位の 1, 5, 10 に関しては以下のような声調や語彙の変化がある[63]

  • 1 (một/𠬠) → 21 (hai mươi mốt/𠄩𨒒𠬠):10 の位が 2~9 の場合
  • 5 (năm/𠄼) → 15 (mười lăm/𨒒𠄻 もしくは mười nhăm/𨒒𠄶):10 の位が 1~9 の場合
  • 10 (mười/𨒒) → 20 (hai mươi/𠄩𨒒):10 の位が 2~9 の場合

命数法においては漢数字の万進を採っておらず、西洋式の千進法を使っている。例えば、10000 はmười nghìn(𨒒𠦳、逐語訳:十千)、100000 はmột trăm nghìn(𠬠𤾓𠦳、逐語訳:一百千)と読む。

大数 編集

現在は万万を、万億をと呼ぶ。古くは万までしか位が無かったので、十万、百万、千万までだった[64]。後に億、兆などが作られたが、その意味する位は一定しなかった。

現在日本・台湾・韓国で一般的な方式では、兆の後に続けて更に、全て1万倍ごとに(万進)(日本では塵劫記による𥝱が標準的となった)、恒河沙阿僧祇那由他不可思議無量大数となっているが、歴史的には万進以外にも、下数、万万進、上数などの方式があった。一方現代中国では、一般的に命数として使われるのは億(108)までであり、兆は下数によってメートル法の接頭辞のメガ(106)の意味で用いており、京以上は一般には使われなくなっている。

数詞以外の意 編集

漢数字は数詞以外の意味を持つこともある。例えば「一」は数詞を表す 1 の他に「ひとつにする」(統一)、「同じ」(同一)、「全て」(一斉)等の意味を持つ。「百」も「数が多い」という意味で用いる。

漢数字は数詞を兼ねた漢字であり、学研の『現代標準漢和辞典』の執筆者は、本当は数漢字と呼ぶのがふさわしいと記している。[要出典]

小数 編集

漢数字は小数の位があり、先進的であった。十進小数は算木で容易に表せる。しかし大数の位と比べると、成立したのは遅かった。

中国統一後、度量衡単位も以下のように統一した[65]

  • 度(長さ):1 引 = 10 丈 = 100 = 1000 = 10000 分
  • 量(体積):1 斛 = 10 斗 = 100 升 = 1000 合 = 2000 龠
  • 衡(質量):1 石 = 4 鈞 = 120 斤、1 斤 = 16 兩、1 兩 = 24 銖

その後、度の分、量の合、衡の銖のそれぞれ下位に以下の単位が加わった[13]。これらは小数に近い考えだが、度量衡それぞれで異なる小単位があった。

  • 度:1 分 = 10 釐 = 100 毫 = 1000 絲 = 10000 忽
  • 量:1 合 = 10 抄 = 100 撮 = 1000 圭 = 6000 粟
  • 衡:1 銖 = 10 = 100 黍

劉徽は、『九章算術』の注釈において、75 平方寸を開平し、8.660254 寸と求め、これを「八寸六分六釐二秒五忽、五分忽之二」と書いている[13]。絲は秒になっている。

後期に、衡の兩の下位に以下の単位が加わった[13]

  • 衡:1 兩 = 10 錢 = 100 分 = 1000 釐 = 10000 毫 = 100000 絲 = 1000000 忽

これにより、整数部に度量衡の単位を付け、小数部は分、釐、毫、絲、忽を使うようになり、汎用的な小数になった。15.92 寸は「一尺五寸九分二釐」、15.92 錢は「一兩五錢九分二釐」であり、0.92 を表す「九分二釐」は共通である。

日本語 編集

後に日本ではいくつかの単位は使う字が変わった。釐はに、毫はに、絲はになった。

江戸時代歩合の基本単位は 1/10 を表すであった。現代人が 1/100 を表すパーセントを使うのに近い。この時、3.26 寸を「三寸二分六厘」というように、3.26 割を「三割二分六厘」といった。

慣用句の五分五分および九分九厘は、それぞれ 0.5 対 0.5 および 0.99 という意味である。

1902年に設置された国語調査委員会により学術的に基礎調査された報告書に以下がある[66][67]

  • 分数:二分の一 (1/2)、三分の二 (2/3)、三つわりひとつ (1/3)
  • 割合:四分、五分(二分の一)、七分五厘、半分又は半ともいう(例:七つの半分、二時半、半町等)
  • 歩合:一割二分、二割三分五厘、この場合の「分」を「朱」ということがある。但し、これは利子の場合にいう。
  • 倍数:二倍、三倍、百倍など

分数 編集

中国では古くから小数が発達したため、分数の数詞は少なく、単独の字としては「半」しかない。古くは以下の語が使われた[68][69]

数詞
12 半、中半
13 少半、小半
23 太半、大半
14 弱半
34 強半

一般には、分母と分子の間に「分之」を入れる。34 は「四分之三」である。現代日本語では「分の」と書く。現代と異なり、「分」の直後に単位を置いて、34 寸を「四分寸之三」と呼んだ。

位取り記数法 編集

十進表記 編集

漢数字を十進表記位取り記数法で用いることもできる。この場合、アラビア数字の 0 から 9 を単に〇から九に変えれば良い。読み方はそれぞれの言語による。小数点中黒(・)を用いる。例えば 32.8 は数詞なら「三十二点八」だが、位取り記数法なら「三二・八」である。

漢数字の位取り記数法は新しい。漢字文化圏では、長らく算木が使われ、位取り記数法で漢数字を用いる必要がなかった。までの漢文に「二八」とあったら、十六 の意味 (2×8) であって 二十八 ではない。

中国では、アラビア数字による筆算の翻案として漢数字の位取り記数法が現れた。梅文鼎の「筆算」(1693年)では、120303 を「一二〇三〇三」と書いて筆算している[13]

一方、日本の建部賢弘は『円理綴術』(1684年)の中で、算木を用いた代数学において 513 を「五一三」と書いている[11]。この表記がアラビア数字と算木のどちらに由来するのかは不明である。

底が十を超える場合 編集

桁の底がを超える場合、アラビア数字を用いた方法では、十を A十一B十二C …というようにラテン文字アルファベット大文字で表記する。一方、数字以外の分野では、 A を、B を、C を…というように、十干がアルファベット大文字の機能を果たしている。従って、桁の底が十を超える場合は十干を用い、A を「十」、B(= 十一)を「甲」、C (= 十二) を「乙」、D (= 十三) を「丙」…というように表記する。

例えば、「2A4」は「二十四」(十二進法で41210十六進法で67610二十進法で100410に相当)、「50D」は「五〇丙」(十六進法で129310、二十進法で201310に相当)、「9A.B」は「九十・甲」(十二進法で {118+(11/12)}10、十六進法で {154+(11/16)}10、二十進法で {190+(11/20)}10に相当)という表記になる。特に十進法と区別する場合、「 (二十四)乙 」というように、括弧書きで N 進法を明記することになる。

参考文献 編集

注釈 編集

  1. ^ 無印は平声または入声、-X は上声、-H は去声を指す。
  2. ^ (文)(白)はそれぞれ文読と白読を指す。
  3. ^ 本表音読みの出典である『漢字源改訂第6版』において、標準の読み「man(マン)」は慣用音とされている。

出典 編集

  1. ^ 第8回 新聞の算用数字 - 新・お言葉ですが… 高島俊男
  2. ^ 洋数字と漢数字~“原則”が分かったぜ~ 15/04/28 : 岩佐徹のOFF-MIKE
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関連項目 編集

外部リンク 編集