潘 楽(はん がく、生年不詳 - 555年)は、中国北魏末から北斉にかけての軍人は相貴。本貫広寧郡石門県[1][2][3]

経歴 編集

北魏の広宗県男の潘永の子として生まれた。出生の時に一羽の雀がその母の左肩に止まり、占者が富貴の徴であると言ったので相貴と名づけられ、後にこれを字とした。六鎮の乱が起こると、葛栄に従い、京兆王に封ぜられた。葛栄が敗死すると、爾朱栄に従った。別将として元顥を討ち、功績により敷城県男に封ぜられた[1][2][4]

高歓晋州に入ると、潘楽は召されて鎮城都将となった。従軍して爾朱兆を広阿で破り、広宗県伯に爵位を進めた。軍功を重ねて東雍州刺史となった。高歓は東雍州を廃止しようと考えたが、潘楽は東雍州が胡・蜀に連なる重要な土地であるので放棄してはいけないと主張し、聞き入れられて元のままとなった。元象元年(538年)8月、西魏の軍を河陰で破ったとき、潘楽と劉豊だけがさらなる追撃を望んだが、諸将の衆議がまとまらず、取りやめとなった。潘楽は金門郡公に改封された[5][2][6]。武定5年(547年)10月、潘楽は慕容紹宗高岳らとともに南朝梁蕭淵明の軍を討ち、これを撃破した[7][8]。武定7年(549年)8月、高洋高澄の後を嗣ぐと、潘楽は河陽に駐屯し、西魏の将の楊𢷋らを破った。ときに懐州刺史の平鑑らが築いた城が敵中に深入りしすぎており、孤立する危険があるので、高洋はこれを放棄しようと考えた。しかし潘楽は軹関を要害として防御を固め、さらに城を修理して、兵士を増員させて対処した。河陽に帰還して駐屯した[9][2][6]。10月、司空に上った[10][11][12][13]

天保元年(550年)5月、東魏孝静帝が高洋(北斉の文宣帝)に帝位を禅譲するにあたって、潘楽は冊命の伝達に派遣された[14][15][16]。6月、潘楽は河東郡王に進封され、司徒に転じた[17][18][19]宇文泰崤県陝州に侵攻し、西魏の行台の侯莫陳崇が斉子嶺から軹関に進軍し、西魏の儀同の楊𢷋が鼓鐘道から建州に出て孤公戍を落とした。潘楽は西魏の侵攻に対処するため長子にいたり、儀同の韓裔を建州の西の侯莫陳崇に当たらせると、侯莫陳崇は遁走した[9][2][6]。天保3年(552年)3月、潘楽はまた使持節・東南道大都督となり[20][21]侯景を攻撃し、涇州を奪い、また安州で勝利した[9][2][6]。天保4年(553年)10月、文宣帝契丹征討に従い、精鋭の騎兵5000を率いて東道から青山に赴いた。白狼城に達し、昌黎城を経略した[22][23][24]。天保5年(554年)10月、西魏が梁の元帝を江陵で包囲すると、潘楽は文宣帝の命を受けて救援に赴いたが、到着しないうちに江陵は陥落した[25][26]瀛州刺史に任ぜられ、淮水漢水の流域を攻略した[9][2][6]。天保6年(555年)6月甲子[27]、懸瓠で死去した。仮黄鉞・太師大司馬尚書令の位を追贈された[9][2][6]

子の潘子晃が後を嗣ぎ、北斉の幽州刺史に上ったが、冀州北周に降伏し、大業初年に死去した[28][29][30]

脚注 編集

  1. ^ a b 氣賀澤 2021, p. 197.
  2. ^ a b c d e f g h 北斉書 1972, p. 201.
  3. ^ 北史 1974, p. 1921.
  4. ^ 北史 1974, pp. 1921–1922.
  5. ^ 氣賀澤 2021, pp. 197–198.
  6. ^ a b c d e f 北史 1974, p. 1922.
  7. ^ 魏書 1974, p. 310.
  8. ^ 北史 1974, p. 194.
  9. ^ a b c d e 氣賀澤 2021, p. 198.
  10. ^ 魏書 1974, p. 312.
  11. ^ 氣賀澤 2021, p. 63.
  12. ^ 北斉書 1972, p. 44.
  13. ^ 北史 1974, p. 195.
  14. ^ 氣賀澤 2021, p. 64.
  15. ^ 北斉書 1972, p. 45.
  16. ^ 北史 1974, pp. 245.
  17. ^ 氣賀澤 2021, p. 79.
  18. ^ 北斉書 1972, p. 52.
  19. ^ 北史 1974, pp. 246–247.
  20. ^ 氣賀澤 2021, p. 84.
  21. ^ 北斉書 1972, p. 56.
  22. ^ 氣賀澤 2021, p. 85.
  23. ^ 北斉書 1972, p. 57.
  24. ^ 北史 1974, p. 246.
  25. ^ 氣賀澤 2021, p. 88.
  26. ^ 北斉書 1972, p. 59.
  27. ^ 北史 1974, p. 252.
  28. ^ 氣賀澤 2021, pp. 198–199.
  29. ^ 北斉書 1972, p. 202.
  30. ^ 北史 1974, pp. 1922–1923.

伝記資料 編集

参考文献 編集

  • 氣賀澤保規『中国史書入門 現代語訳北斉書』勉誠出版、2021年。ISBN 978-4-585-29612-6 
  • 『北斉書』中華書局、1972年。ISBN 7-101-00314-1 
  • 『北史』中華書局、1974年。ISBN 7-101-00318-4 
  • 『魏書』中華書局、1974年。ISBN 7-101-00313-3