無影灯(むえいとう)は、手術室などで用いられる照明器具の一種[1]

手術用ランプ
手術用ランプ
東ドイツの旗 1950年代
昭和3年無影灯笠特許

歴史 編集

日本においては古くは、1920年(大正9年)にフランスから「シャリテイク」というタイプが、その後ドイツから「パントフォス」というタイプの無影灯が輸入されたという[2]

光源となる電球には、かつては白熱電球クリプトン電球[3]ハロゲン電球[4]が用いられていたが、近年は発光ダイオードを用いたLED照明化も進んでいる。それによって、後述の低発熱(低廃熱)が実現可能となった。

本来であれば「手術用照明器」と表記される医療機器であるが、昭和3年に浅川好文氏が特許申請(特許第79198号)を行う際、製品に必要な機能(影の無い照明)を基に「無影橙笠」と登録した特許名が語源とされる。

しかし、昭和2年に無影灯専門製造メーカーとして山田昭和堂器械店(現山田医療照明㈱)が創業を開始している。

昭和初期に医療機器製造をしていた全国のメーカーが、解りやすさから無影灯と言う特許名をカタログ等に使い浸透した。

“Shadowless Lamp” は「無影灯」を直訳した和製英語で、英語圏では通じない。 正しくは“operating light”となる。

特徴 編集

無影性
手術作業への影響を減らすためにを生じないよう、電球内や反射板によって光を乱反射させる仕組みが施されている[3]
低発熱(低廃熱)の光
患者の負担を緩和するため(術部の乾燥を防ぐ点でも[5])光をできる限り低温で供給できるよう、複数の小さな電球を用いて1個単位の熱量を減らしたり赤外線吸収フィルターを導入するなどの工夫がされている[3]
色温度
手術を行う人によって「無影灯の適正な色温度」の意見は分かれるが、現在では、ある程度の色温調節が可能な無影灯も登場している[6][7]

脚注 編集

  1. ^ 手術以外に用いられる無影設計の照明器具には、歯科の治療用や、デスクライトなどがある。
  2. ^ 山田景福「手術無影燈の梗概と将来の傾向」『医科器械学雑誌』Revival8、日本医療機器学会、1951年、13-16頁、doi:10.4286/ikakikaigakuzassi.Revival8.0_13_2ISSN 0019-1736NAID 110002530138 
  3. ^ a b c 無影灯 とは - コトバンク(世界大百科事典 第2版)
  4. ^ むえいとう【無影灯】の意味 - goo辞書(デジタル大辞泉)
  5. ^ 手術用無影灯 デネブLED - 株式会社アトムベッツメディカル
  6. ^ 無影灯 - 株式会社セントラルユニ
  7. ^ 白色LEDは、青色LEDの光を黄色の蛍光体に通す方式が主流となっている。紫外線LEDとRGB蛍光体の組合せによる新技術では、計算上は再現できる色の範囲が30%広がるという(徳島新聞、2010年7月7日)。

関連項目 編集