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|色 = 植物界
|名称 = コショウ
|画像= [[画像:Piper nigrum 04236.jpg|250px]]
|画像キャプション = コショウの葉と果実 |画像2 = |画像キャプション2 =
|界 = [[植物界]] {{sname||Plantae}}
|門階級なし = [[被子植物]] {{sname||Angiosperms}}
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|英名 = pepper
}}
'''コショウ'''('''胡椒'''、[[学名]]: {{snamei||Piper nigrum}})は、[[コショウ科]][[コショウ属]]に属する[[つる性]]植物の1種、またはその[[果実]]を原料とする[[香辛料]]のことである。[[インド]]原産であるが、世界中の[[熱帯]]域で広く栽培されている。
コショウの英名は「pepper」であるが、これは[[サンスクリット]]で同属別種である[[ヒハツ]] (インドナガコショウ) を意味する「''pippali''」に由来しており、古くに名前の取り違えが起こったと考えられている<ref name="堀田1997">{{Cite book|author=堀田満|year=1997|chapter=コショウ|editor=|title=週刊朝日百科 植物の世界 9|publisher=|isbn=9784023800106|page=51}}</ref>{{efn2|name="サンスクリット"|サンスクリットでは、コショウは「''maricha''」とよばれ、現在でも[[マレー語]]圏ではこの名でよばれている<ref name="堀田1997" />。}}。植物の学名の起点である[[カール・フォン・リンネ|リンネ]]の『{{仮リンク|植物の種|en|Species Plantarum}}』([[1753年]]) で[[記載]]された植物 (つまり最初に学名が与えられた植物) の1つである<ref>{{Cite book|last=Linnaeus|first=Carolus|year=1753|title=Species Plantarum|location=Holmia[Stockholm]|publisher=Laurentius Salvius|page=28|url=https://www.biodiversitylibrary.org/page/358049|ref=harv|language=la}}</ref>。 [[果実]]には強い芳香と辛みがあり、[[香辛料]]としてさまざまな料理に広く利用され、「スパイスの王様」ともよばれる。[[精油]]が香気成分となり、[[アルカロイド]]の[[ピペリン]]や[[シャビシン]]が刺激・辛味成分となる。果実の処理法などによって、'''黒胡椒''' ('''ブラックペッパー''') や'''白胡椒''' ('''ホワイトペッパー''') などに分けられる。15世紀以降のヨーロッパの東方進出は、コショウ貿易による利益も関わっていた。
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==特徴==
[[つる性]]の[[木本]] ({{読み|藤本|とうほん}}) であり、長さはときに10[[メートル]] (m) 以上に達し、節は膨らみ、節から[[不定根]]を出して他物に絡み付く<ref name="PWO" /><ref name="コトバンク_コショウ" /><ref name="FOC">{{Cite web|author=|date=|url=http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=200005581|title=Piper nigrum|website=[http://www.efloras.org/flora_page.aspx?flora_id=2 Flora of China]|publisher=Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria|accessdate=2021-09-18}}</ref><ref name="協会産地" /> (
<gallery mode="packed">
File:Kari Menasu (Kannada- ಕರಿ ಮೆಣಸು) (5460491579).jpg|'''1a'''. 樹皮上に付着したコショウ
File:Kali Mirchi (Marathi- काळी मिरची) (4759089045).jpg|'''1b'''. 樹に絡まったコショウ
File:Piper nigrum pepper tuvvur.JPG|'''1c'''. 葉
</gallery>
野生株では単性花 (雌雄異花) をつけ[[雌雄異株]]のものが多いが、栽培される系統のものは[[雌雄同株]]であり、また様々な程度で両性花(雌雄同花)をつける<ref name="堀田1997" /><ref name="FOC" />。野生型では[[果実]]量が少ないが、栽培されるものでは両性花率が高い系統ほど果実量が多いことから、栽培の過程でこのような系統が選択されてきたと考えられている<ref name="堀田1997" />。花期は6–10月 (中国の場合)、穂状花序を形成し、花梗は葉柄とほぼ同長、花穂は長さ約 10 cm、葉と対生状につく<ref name="コトバンク_コショウ" /><ref name="FOC" /> (
<gallery mode="packed">
File:Pepper - കുരുമുളക് 02.JPG|'''2a'''. 花序
File:Piper nigrum fruits.jpg|'''2b'''. 未熟果実
File:Piper nigrum 03.JPG|'''2c'''. 熟しかけた果実
File:Piper nigrum - Köhler–s Medizinal-Pflanzen-107.jpg|'''2d'''. 花序、果序、花と果実
</gallery>
果穂は長さ 15–17 cm ほどになり、50–60個の[[果実]]からなる<ref name="コトバンク_コショウ" /><ref name="協会産地" /> (
[[染色体]]数は 2''n'' = 48, 52, 104, 128 が報告されており、栽培の過程で著しい染色体倍加が起こったと考えられ、また他種との交雑の可能性も示唆されている<ref name="堀田1997" />。
==分布==
[[ファイル:ស្រីនាង.jpg|thumb
原産地はインド南西部[[ケーララ州|マラバール]]地方とされるが<ref name="難波2000" /><ref name="SB栽培" />、すでに紀元前1世紀ごろには東南アジア熱帯域で栽培されていたと考えられている<ref name="堀田1997" />。2020年現在では、[[東南アジア]]、[[アフリカ]]、[[中南米]]の[[熱帯]]域で広く栽培されている<ref name="PWO" /><ref name="GN">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.globalnote.jp/post-5751.html|title=世界のコショウ(胡椒)生産量 国別ランキング・推移|website=GLOBAL NOTE|publisher=|accessdate=2021-09-18}}</ref><ref name="難波2000">{{cite journal|author=難波恒雄|year=2000|title=薬膳原理と食・薬材の効用 (2) 薬膳に用いる身近な食物|journal=日本調理科学会誌|volume=33|issue=1|pages=105|doi=10.11402/cookeryscience1995.33.1_100}}</ref> ([[#産地
==人間との関わり==
===香辛料===
コショウの[[果実]]には強い芳香と強烈な辛みがあり、最もよく使われる[[香辛料]] (スパイス) の1つであるため、「'''スパイスの王様''' king of spice」ともよばれる<ref name="PWO" /><ref name="コトバンク_胡椒" /><ref name="SB">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/search/detail/00015.html|title=こしょう/Pepper|website=|publisher=S&B FOODS|accessdate=2021-09-18}}</ref><ref name="コトバンク_コショウ医">{{Cite Kotobank|word=コショウ|author=食の医学館|accessdate=2021-09-19}}</ref><ref name="Ghosh2020">{{cite journal|author=Ghosh, S., Kumar, A., Sachan, N. & Chandra, P.|year=2020|title=Re-exploring an epicentre spice with immense therapeutic potentials: black pepper (''Piper nigrum'')|journal=Current Nutrition & Food Science|volume=16|issue=9|pages=1326-1337|doi=10.2174/1573401316666200316120944}}</ref>。コショウの辛さは、塩辛さとは異なる辛さである<ref name="太田1983">{{Citation|author=太田静行、古堅あき子、日下兵爾 ほか|year=1983|title=鹹味に及ぼすコショウの影響|format=PDF|pages=122-126|url=https://doi.org/10.11402/cookeryscience1968.16.2_122|periodical=調理科学|volume=16|publisher=一般社団法人日本調理科学会|ncid=AN00382866|naid=110001171688|issn=09105360|doi=10.11402/cookeryscience1968.16.2_122}}</ref>。コショウは[[肉料理]]、[[魚料理]]、[[野菜料理]]、[[スープ]]などさまざまな料理に使われ (
<gallery mode="packed" caption="コショウを用いた料理">
File:目玉焼き.JPG|'''4a'''. [[ハムエッグ]]
File:Carbonara of Italian Tomato Cafe (2).jpg|'''4b'''. [[カルボナーラ]]
File:黒胡椒塩ラーメン(山神ラーメン).jpg|'''4c'''. [[ラーメン]]
File:BLT sandwich prepared with pepper bacon.jpg|'''4d'''. [[BLTサンドイッチ]]
File:Black pepper crab and Tiger beer.JPG|'''4e'''. ブラックペッパークラブ
File:Beef Steak in Black Pepper Sauce.jpg|'''4f'''. [[ビーフステーキ]]
</gallery>
===種類===
コショウは収穫のタイミング (未熟果、完熟果) や乾燥方法、外果皮の除去などの違いにより、以下の4種類 (黒胡椒、白胡椒、青胡椒、赤胡椒) に分けられる。
<gallery mode="packed">
File:Pfeffer-Längsschnitt.jpg|'''5a'''. 未熟果の断面: 緑色の[[外果皮]]とその内側の核 ([[内果皮]]に包まれた[[種子]])
File:Quatieuchin.jpg|'''5b'''. 果実は熟すと赤くなる
File:Pepper 1.JPG|'''5c'''. 上から時計回りに白胡椒、"ピンクペッパー" (おそらくコショウではない)、黒胡椒、青胡椒
File:4 color mix of peppercorns.jpg|'''5d'''. 黒胡椒、白胡椒、青胡椒 (赤いものはおそらくコショウではなく[[コショウボク]])
File:Variants of Pepper.jpg|'''5e'''. 上列左から"ピンクペッパー" (おそらくコショウではない)、青胡椒、黒胡椒 (テリチェリー胡椒)、下列左から黒胡椒 (マラバル胡椒)、白胡椒2種 (サワラク胡椒、ムントク胡椒)
</gallery>
; {{Visible anchor|'''黒胡椒'''}}、黒コショウ、黒こしょう、'''ブラックペッパー''' (black pepper)
: [[ファイル:Dried Peppercorns.jpg|thumb|'''5f'''. 黒胡椒 (左) と白胡椒 (右)]]完熟前の緑色の[[果実]]を収穫し、天日干しで乾燥させたものであり、黒色になる<ref name="堀田1997" /><ref name="協会産地" /><ref name="本舗こしょう物語">{{Cite web|author=|date=|url=https://kosyou.jp/mesmerize/story-of-pepper/|title=こしょう物語|website=こしょう本舗|publisher=|accessdate=2021-09-18}}</ref><ref name="SBb">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/search/detail/00016.html|title=ブラックペッパー/Black pepper|website=|publisher=S&B FOODS|accessdate=2021-09-19}}</ref><ref name="コトバンク_ブラックペッパー">>{{Cite Kotobank|word=ブラックペッパー|author=精選版 日本国語大辞典|accessdate=2021-09-19}}</ref>。湯通しした後に乾燥したり、薪を使っていぶすこともある<ref name="堀田1997" />。
: 乾燥の際、果皮 (外果皮) にシワが生じるが、剥がさずそのまま使用する (図5f)。外果皮には辛み成分が多く含まれており、香りと辛みが強いため、強い味の肉料理や青魚などとの相性がよいとされる<ref name="本舗こしょう物語" /><ref name="SBb" />。
:
; {{Visible anchor|'''白胡椒'''}}、白コショウ、白こしょう、'''ホワイトペッパー''' (white pepper)
: 赤色に完熟した果実を収穫し、1週間程水に浸して発酵させた後、柔らかくなった外果皮を剥がしたものである<ref name="堀田1997" /><ref name="協会産地" /><ref name="本舗こしょう物語" /><ref name="SBw">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/search/detail/00017.html|title=ホワイトペッパー/White pepper|website=|publisher=S&B FOODS|accessdate=2021-09-19}}</ref><ref name="コトバンク_ホワイトペッパー">{{Cite Kotobank|word=ホワイトペッパー|author=精選版 日本国語大辞典|accessdate=2021-09-19}}</ref>。核 ([[種子]]とこれを包む硬い内果皮) のみからなり外果皮がないため (図5f)、黒胡椒より辛みは弱いが異なる風味を持ち、[[魚料理]]やシチューなど素材の味が強くないものとの相性が良いとされる<ref name="本舗こしょう物語" /><ref name="SBw" />。
:
: 白胡椒は発酵食品でもあり<ref name="Steinhaus2005" />、[[コーヒー]]や[[カカオ]]のように発酵過程を調節することで多様な風味をつくることが可能ともされる。一方で、黒胡椒の外果皮を機械で剥がして白胡椒としたものもある<ref name="コトバンク_ホワイトペッパー" />。
: また下記のように胡椒は薬用にも使われるが (→[[#薬用]])、その際にはふつう白胡椒が使われる<ref name="難波2000" />。
:
; {{Visible anchor|'''青胡椒'''}} (緑胡椒<ref name="SBg" />)、青コショウ、青こしょう、'''グリーンペッパー''' (green pepper){{efn2|name="グリーンペッパー"|ただし英語の「green pepper」は、[[ピーマン]]や[[シシトウガラシ]]など甘味種の[[トウガラシ]]を意味することもある<ref name="コトバンク_グリーンペッパー">{{Cite Kotobank|word=グリーンペッパー|author=デジタル大辞泉|accessdate=2021-09-19}}</ref>。}}
: [[ファイル:Peppercorns p1160010.jpg|thumb|'''5g'''. 青胡椒]]完熟前の緑色の果実を収穫するが、黒胡椒とは異なり天日干しにはせず、ゆでてから塩蔵、または[[フリーズドライ]]加工したもの<ref name="協会産地" /><ref name="本舗こしょう物語" /><ref name="SBg">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/search/detail/00020.html|title=グリーンペッパー/Green pepper|website=|publisher=S&B FOODS|accessdate=2021-09-19}}</ref>。そのため果実の色は緑色が残っている (図5g)。
: さわやかな香りと辛みを特徴とする<ref name="本舗こしょう物語" /><ref name="SBg" />。料理に散らしてアクセントにしたり、さわやかな香りを活かしてスープやサラダに加える<ref name="SBg" />。
: [[タイ料理]]や[[カンボジア料理]]では、香辛料としてではなく、実を炒め物の「食材」として利用する{{要出典|date=2021年9月}}。
:
; {{Visible anchor|'''赤胡椒'''}}、赤コショウ、赤こしょう、'''ピンクペッパー''' (pink pepper){{efn2|name="ピンクペッパー"|「[[ピンクペッパー]]」は[[コショウボク]] ([[ウルシ科]]) や[[セイヨウナナカマド]] ([[バラ科]]) の果実を意味することも多い<ref name="PWO" /><ref name="協会産地" /><ref name="コトバンク_ピンクペッパー" /><ref name="吉田1988" />。また赤胡椒を直訳して「レッドペッパー」とすることがあるが、この語はふつう赤[[唐辛子]] ([[ナス科]]) のことを指す<ref name="コトバンク_レッドペッパー">{{Cite Kotobank|word=レッドペッパー|author=精選版 日本国語大辞典|accessdate=2021-09-19}}</ref>。}}
: [[ファイル:Dried red Kampot peppercorns.jpg|thumb|'''5h'''. 赤胡椒]]赤色に完熟した果実を収穫するが、白胡椒とは異なり外皮をはがさずにそのまま塩蔵したものや天日乾燥したもの<ref name="協会産地" /><ref name="本舗こしょう物語" />。赤い外果皮はシワが入り (図5h)、香りと辛みがマイルドであるとされる<ref name="本舗レッド">{{Cite web|author=|date=|url=https://kosyou.jp/product/kampot-red-pepper/|title=カンポット レッドペッパー|website=こしょう本舗|publisher=|accessdate=2021-09-18}}</ref>。[[ペルー]]など[[南アメリカ]]の料理で使用されることがある{{要出典|date=2021年9月}}。
: ただし「[[ピンクペッパー]] (pink pepper)」は、別の植物である[[コショウボク]] ([[ウルシ科]]) の果実 (辛みはない) を意味することが多い<ref name="PWO" /><ref name="協会産地" /><ref name="コトバンク_ピンクペッパー">{{Cite Kotobank|word=ピンクペッパー|author=デジタル大辞泉|accessdate=2021-09-19}}</ref><ref name="吉田1988">{{cite book|author=吉田よし子|year=1988|chapter=|editor=|title=[[中公新書]] 香辛料の民俗学|publisher=中央公論社|isbn=978-4121008824|page=115}}</ref> (図5c-e)。
コショウは様々な形態で利用され、'''ホール''' (原形の粒の状態、'''粒胡椒''')、'''あらびき''' (粗挽き)、'''パウダー''' (粉末状) などが市販されている<ref name="SB" /><ref name="コトバンク_コショウ" />。また、使うたびに[[スパイス・ミル|ペッパーミル]]を用いてホールを挽いたほうが新鮮な風味を得ることができる<ref name="コトバンク_コショウ" />。ペッパーミルにはさまざまなものがある<ref name="SAKIDORI">{{Cite web|author=|date=2021-07-17|url=https://sakidori.co/article/421962|title=ペッパーミルのおすすめ27選。おしゃれな人気モデルを種類別にご紹介|website=SAKIDORI|publisher=|accessdate=2021-09-20}}</ref>。
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[[アルカロイド]]である[[ピペリン]] (piperine; 図6a) や[[シャビシン]] (chavicine; 図6b)、ピペラニン (piperanine)、これらの構成要素である[[ピペリジン]] (piperidine; 図6c) などが辛み成分となり、また[[精油]]である[[ピネン]] (pinene; 図6d)、[[リモネン]] (limonene; 図6e)、[[カリオフィレン]] (caryophyllene; 図6f)、[[ピペロナール]] (piperonal; 図6g) などが香り成分となる<ref name="コトバンク_コショウ">{{Cite Kotobank|word=コショウ|author=日本大百科全書(ニッポニカ)|accessdate=2021-09-13}}</ref><ref name="堀田1997" /><ref name="協会産地" /><ref name="飯島2014">{{Cite journal|author=飯島陽子|year=2014|title=香辛料・ハーブとその香り~香気生成メカニズムとその蓄積|journal=におい・かおり環境学会誌|volume=45|issue=2|pages=132-142|doi=10.2171/jao.45.132}}</ref>。
<gallery mode="packed">
File:Piperin.svg|'''6a'''. [[ピペリン]]
File:Chavicine.png|'''6b'''. [[シャビシン]]
File:Piperidin.svg|'''6c'''. [[ピペリジン]]
File:Alpha-pinen.svg|'''6d'''. [[ピネン]]
File:Limonene-2D-skeletal.svg|'''6e'''. [[リモネン]]
File:Piperonal.svg|'''6g'''. [[ピペロナール]]
</gallery>
===産地===
{| class="wikitable floatright
|+ コショウ属の生産量
! class="unsortable"|国 !! 生産量 ([[トン]])
|-
| {{VNM}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:270192}}
|-
| {{BRA}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:114749}}
|-
| {{IDN}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:89041}}
|-
| {{IND}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:66000}}
|-
| {{LKA}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:43557}}
|-
| {{CHN}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:33348}}
|-
| {{MYS}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:30804}}
|-
| {{TJK}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:21269}}
|-
| {{MEX}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:10399}}
|-
| {{MDG}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:4532}}
|- class="sortbottom"
| {{World}} || style="text-align:right;"|{{formatnum:714296}}
|}
<div class="floatright mw-collapsible">
{{Graph:Chart
| type = pie
| width = {{#expr:220 * 0.5 * 0.75}}
| height = {{#expr:220 * 0.5 * 0.75}}
| legend =
| x = ベトナム,ブラジル,インドネシア,インド,スリランカ,中国,マレーシア,タジキスタン,メキシコ,マダガスカル,その他
| y = 270192,114749,89041,66000,43557,33348,30804,21269,10399,4532,{{#expr:714296 - (270192 + 114749 + 89041 + 66000 + 43557 + 33348 + 30804 + 21269 + 10399 + 4532)}}
}}
</div>
コショウは[[インド]]原産であるが、世界中の熱帯域で広く栽培されている。2020年の生産量 (ただしコショウ属の他種を含む) は[[ベトナム]]が最大であり、以下表のようになっている。
コショウの取引においては、産出国名や地名を付して下記のようによばれることがある<ref name="協会産地">{{Cite web|author=|date=|url=https://kosho-kyokai.com/production-country/|title=胡椒の産地|website=|publisher=日本胡椒協会|accessdate=2021-09-18}}</ref> (図5e)。
*[[インド]]産 - マラバル胡椒、テリチェリー胡椒、アレッピー胡椒
*[[インドネシア]]産 - ランポン胡椒、ムントク胡椒
205 ⟶ 183行目:
===栽培===
[[実生]]や[[挿し木]]から栽培されるが、ふつう挿し木が用いられる<ref name="堀田1997" /><ref name="協会産地" /><ref name="SB栽培">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/qa/sub/pepper.html|title=こしょうの栽培の様子|website=|publisher=S&B FOODS|accessdate=2021-09-20}}</ref>。コショウはつる植物であるため支持物が必要であるが、乾燥して日射が強いインドなどでは日陰になるように生きた樹木を支持物とすることがあり、雨量や曇天が多いマレーシアなどでは枯れ木やコンクリート柱を支持物とする<ref name="堀田1997" /> (
<gallery mode="packed">
File:Pepper farm in vietnam.JPG|'''7a'''. [[ベトナム]]、[[フーコック島]]のコショウ農場
File:Cropped pepper seed.JPG|'''7b'''. 収穫されたばかりのコショウの[[果実]]
File:02-Pepper Farm, Kampot-nX-7.jpg|'''7c'''. 果実の処理
</gallery>
コショウ栽培には[[連作障害]]が起こることがあり、植物寄生性[[センチュウ|線虫]]が発生したり<ref>{{cite journal|author=中園和年, Ramirez J. A., 浜田正博, 松田明|year=1992|title=[https://ci.nii.ac.jp/naid/110001086347 ドミニカ共和国の胡椒栽培における植物寄生性線虫(植物線虫)]|journal=日本応用動物昆虫学会大会講演要旨|volume=|issue=36|page=222|naid=110001086347}}</ref>、[[フザリウム]]菌などによる病害が起こりやすくなる<ref name="ブラジル移民" />。南米での栽培では、これにより壊滅的な打撃が発生したことがある<ref name="ブラジル移民">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ndl.go.jp/brasil/column/agro.html|title=アマゾンのアグロフォレストリ|website=ブラジル移民の100年|publisher=国立国会図書館|accessdate=2021-09-23}}</ref>。コショウ栽培は、[[肥料]]代や労力のわりに価格が安いこともあり、放置される農園もある<ref>[http://oh-syaken.com/x/modules/myalbum/photo.php?lid=1584 「胡椒栽培と放置胡椒園」] 大阪府社会科研究会HP</ref>。
224 ⟶ 195行目:
一方、21世紀に入ると[[情報技術]]の進歩により、物流状況や市場価格がいち早く確認できるようになったため、生産調整が可能になったこと、また[[中華人民共和国]]や[[インド]]など、人口の多い地域で需要が増大したことで、コショウの価格は再び上昇し、2005年から2014年の間に、[[横浜港]]での通関単価が4倍になった<ref name="神奈川新聞">{{Cite web|author=|date=2015-06-29|url=https://www.kanaloco.jp/news/life/entry-61390.html|title=コショウ高騰 世界的需要増に生産者売り急がず|website=神奈川新聞|publisher=|accessdate=2021-09-23}}</ref>。
===歴史===
{| class="wikitable floatright sortable mw-collapsible" style="text-align:right;"
|+ 世界のコショウ属生産の推移<ref name="FAO" />
! 年 !! 生産量 (トン) !! 耕地面積 (ha) !! style="max-width:8em;"|耕地面積あたりの
|-
! 1961年
|
|-
! 1971年
|
|-
! 1981年
|
|-
! 1991年
|
|-
! 2001年
|
|-
! 2011年
|
|-
! 2020年
|
|}
<div class="floatright mw-collapsible">
{{Graph:Chart
| type = line
| width = {{#expr:220 * 1.5 * 0.75 * 1.33}}
| height = {{#expr:220 * 1.5 * 0.75}}
| xType = date
| xAxisAngle = -45
| xAxisTitle = 年
| x = 1961,1971,1981,1991,2001,2011,2020
| yAxisFormat = s
| y1Title = 生産量 (トン)
| y1 = 71318,110391,161581,284310,359405,419450,714296
| y2Title = 耕地面積 (ha)
| y2 = 153209,202499,234175,359202,466816,541403,606123
| legend =
| interpolate = monotone
| xGrid =
| yGrid =
}}
</div>
コショウは、古代から[[インド]]地方の主要な輸出品であった。紀元前4世紀の初め頃、[[古代ギリシア]]の植物学者[[テオフラストゥス]]は『[[植物誌]]』の中でコショウと長コショウ ([[ヒハツ]]) を考察している。コショウは当時から貴重で、紀元1世紀のローマの博物学者[[大プリニウス]]は1[[ポンド (質量)|ポンド]](約500グラム)の長コショウの価値は15[[デナリウス]]、白胡椒は7デナリウス、黒胡椒は4デナリウスと記録している<ref name="Hyman1980">{{Cite web|author=Philippe & Mary Hyman|date=1980-06|url=https://www.lhistoire.fr/connaissez-vous-le-poivre-long|title=Connaissez-vous le poivre long?|website=L'Histoire|publisher=|accessdate=2022-02-04}}</ref><ref name="Dalby2002">{{cite book|author=Dalby, A.|year=2002|chapter=Long pepper|editor=|title=Dangerous Tastes: The Story of Spices |publisher=Univ of California Press|isbn=978-0520236745|pages=89–90}}</ref>。古代の[[地中海世界]]では、長コショウが成熟したものが黒コショウになると考えられており、その間違いは、16世紀に[[ガルシア・デ・オルタ]]によって改められるまで続いた{{sfn|ドルビー|2004|pp=139-148}}。長コショウは黒・白胡椒よりも高額に扱われていたが、中世盛期に入ると黒胡椒などと競合するようになり、中世後期になるころにはヨーロッパでは使われなくなっていった<ref name="Dalby2002" />。
コショウは強い香りと辛み、[[抗菌]]・[[防腐]]効果があるため、冷蔵技術が未発達であった中世においては、ヨーロッパでは極めて珍重された<ref name="神戸1984">{{Cite journal|和書|author=神戸保 |title=胡椒 |journal=生活衛生 |ISSN=0582-4176 |publisher=大阪生活衛生協会 |year=1984 |volume=28 |issue=4 |pages=242-242 |naid=130003723517 |doi=10.11468/seikatsueisei1957.28.242 |url=https://doi.org/10.11468/seikatsueisei1957.28.242}}</ref>。その取引における高値のさまは、[[1世紀]]のローマにおいて、'''コショウが同重量の[[金]]や[[銀]]と交換された'''かのような表現もされる<ref>{{Harvnb|高橋|1990|pp=249-250}}</ref>。
しかし、12世紀に入ると大量のコショウがオリエントより輸入されるようになったと考えられている<ref name="池上1996" />。コショウは大量にヨーロッパに流入したため、疑似通貨として使用されるようになり、税金や給料などにもコショウで支払われた例がある。
中国では、西方から伝来した香辛料という意味で、'''胡椒'''と呼ばれた ([[胡]]は[[ソグド人]]を中心に中国から見て西方・北方の異民族を指す字であり、[[椒]]は[[カホクザンショウ]]を中心に[[サンショウ属]]の香辛料を指す字である)<ref name="コトバンク_胡椒" /><ref name="荒川2019">{{Cite journal|和書|author=[[荒川正晴]] |title=ソグド人の交易活動と香料の流通 |journal=専修大学社会知性開発研究センター古代東ユーラシア研究センター年報 |publisher=専修大学社会知性開発研究センター |year=2019 |month=mar |issue=5 |pages=29-48 |naid=120006785685 |doi=10.34360/00008303 |url=https://doi.org/10.34360/00008303}}</ref>。[[日本]]には[[中国]]を経て伝来しており、そのため日本でもコショウ (胡椒) と呼ばれる。[[天平勝宝]]8年 (756年)、[[聖武天皇]]の77日忌にその遺品が[[東大寺]]に献納された。その献納品の目録『[[東大寺献物帳]]』の中に胡椒が記載されており、また当時のコショウが[[正倉院]]から発見されている<ref name="鈴木2006">{{Cite journal|和書 |author=鈴木伸哉 & 南木睦彦 |title=江戸の墓から出土したコショウ |journal=植生史研究 |ISSN=0915-003X |publisher=日本植生史学会 |year=2006 |volume=14 |issue=1 |pages=29-33 |naid=130008053002 |doi=10.34596/hisbot.14.1_29 |url=https://doi.org/10.34596/hisbot.14.1_29}}</ref>。当時の日本ではコショウは[[生薬]]として用いられていたが、江戸時代初期に書かれた『雑兵物語』でも「(戦場で) 毎朝胡椒を1粒ずつかじれば夏の暑さにも冬の寒さにも当たらない」としており、このころにも薬用としての需要があったことを示している<ref>「鉄砲足軽小頭 朝日出右衛門」の項より</ref>。コショウは奈良時代以降も断続的に輸入され、[[平安時代]]には調味料としても利用されるようになり<ref name="鈴木1986">{{cite book|author=鈴木晋一|year=1986|chapter=|editor=|title=たべもの噺|publisher=平凡社|isbn=9784582828139|pages=68-69}}</ref>、江戸時代には[[うどん]]の[[薬味]]や[[胡椒飯]]として用いられていた<ref name="鈴木2006" />。
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== 近縁種 ==
[[ファイル:Piper retrofractum Pj DSC 1070.jpg|thumb
同じ[[コショウ属]] ({{snamei||Piper}}) の中には、コショウと同様に[[香辛料]]として利用される種がいくつか含まれる。[[インド]]などに分布する[[ヒハツ]]({{snamei||Piper longum|P. longum}}、インドナガコショウ)は古くからヨーロッパに輸入され、コショウと混同されていたこともある<ref name="山門1998">{{Cite journal|和書|author=山門健一 |title=香りのまちづくり-その後の展開- |journal=沖大経済論叢 |ISSN=03871657 |publisher=沖縄大学 |year=1998 |month=mar |volume=20 |issue=1 |pages=37-69 |naid=110004642240 |url=https://hdl.handle.net/20.500.12001/6824}}</ref>。また類似種である[[ヒハツモドキ]](''P. retrofractum''、ジャワナガコショウ)は沖縄を含む東南アジアを中心に栽培されており、同じく香辛料として用いられる<ref name="ニッポン放送">{{Cite web|author= NEWS ONLINE 編集部|date=2021-01-23|url=https://news.1242.com/article/171600|title=「ヒハツ」「ヒハツモドキ」「島こしょう」~全部ほぼ同じコショウ|website=ニッポン放送 NEWS ONLINE|publisher=|accessdate=2021-09-11}}</ref> (
日本には、類似種として[[フウトウカズラ]](風藤蔓、{{Snamei||Piper kadzura}})が関東以西の海岸近くに自生しているが、果実にはコショウのような辛味はない<ref name="コトバンク_フウトウカズラ">{{Cite Kotobank|word=フウトウカズラ|author=日本大百科全書(ニッポニカ)|accessdate=2021-09-19}}</ref>。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
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==関連項目==
* [[コショウ属]]
** [[ヒハツ]] (インドナガコショウ)
** [[ヒハツモドキ]] (ジャワナガコショウ、島胡椒)
** [[ヒッチョウカ]]
** [[キンマ]]
** [[カヴァ]]
** [[フウトウカズラ]]
* 成分
** [[ピペリン]]
** [[シャビシン]]
** [[ピペリジン]]
** [[ピネン]]
** [[フェランドレン]]
** [[リモネン]]
** [[カリオフィレン]]
** [[ピペロナール]]
== 外部リンク ==
{{
* {{Cite web|author=|date=|url=https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/search/detail/00015.html|title=こしょう/Pepper|website=|publisher=S&B FOODS|accessdate=2021-09-18}}
* {{Cite web|author=|date=|url=https://www.gaban.co.jp/products/pepper.php|title=ブラックペッパー|website=|publisher=GABAN|accessdate=2021-09-18}}
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{{Herbs & spices|state=collapsed}}
{{authority control}}
{{DEFAULTSORT:こしよう}}
[[Category:コショウ科]]
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