全国犯罪被害者の会
全国犯罪被害者の会(ぜんこくはんざいひがいしゃのかい)は、「犯罪被害者の権利確立」「被害回復制度の確立」「被害者の支援」を柱に、2000年1月23日に開催された第1回シンポジウム「犯罪被害者は訴える」を通して結成された任意団体であり、「死刑賛成・維持・推進姿勢」をとる団体である。
別名は「あすの会」、英語名「National Association of Crime Victims and Surviving Families(略称 NAVS)」。
概要
設立経緯
2000年(平成12年)1月23日に光市母子殺害事件の被害者遺族である本村洋(もとむら・ひろし、1976年3月19日 - )が、日本では「犯罪被害者の権利が何一つ守られていないことを痛感し」、山一証券代理人弁護士夫人殺人事件の被害者遺族である元日本弁護士連合会副会長岡村勲らと共に犯罪被害者の会を設立したのが前身。代表幹事には岡村が就任。2011年(平成23年)1月23日退任。
役員
- 代表幹事 - 林良平
- 代表幹事代行 - 松村恒夫(文京区幼女殺人事件遺族)
- 副代表幹事 - 土師守(神戸連続児童殺傷事件)、高橋正人
- 幹事 - 猪野京子(桶川ストーカー殺人事件遺族)、假谷実(公証人役場事務長逮捕監禁致死事件遺族)、宮園誠也(池袋通り魔殺人事件遺族)、内村和代、高橋幸夫、本村洋(光市母子殺害事件遺族)、岡崎后生、松尾明久、渡辺保
- 会計監査 - 田村紀久子
- 顧問 - 岡村勲(弁護士山一証券代理人弁護士夫人殺人事件遺族)、諸澤英道
目的と活動
- 犯罪被害者の権利の確立:犯罪被害者が刑事司法手続きに参加する権利を確立するために、調査研究を行い立法・司法・行政に対して提案し実現をはかる。
- 被害回復制度の確立:犯罪が社会から必然的に生ずる以上、その被害は被害者だけでなく国や社会全体で負担すべきものです。そのための制度を調査研究し実現をはかる。
- 被害者の支援:被害者が立ち直るために、ボランテイアの協力をえて支援する体制作り。
- 法律相談
- 法廷への付き添い
- 被害者同士の交流会の開催
- 報道被害の救済
- 啓発活動:犯罪被害者の実状を訴え犯罪被害者に対する社会認識の改善をはかる。
- シンポジウムの開催
- 広報
- 凶悪殺人犯罪を犯した犯人に対する裁判において死刑判決を法曹界に求めるとともに速やかなる死刑執行を求め、死刑囚となった凶悪殺人犯人に確実に刑執行をする事により殺害された被害者やその遺族の無念を晴らし法による復讐の念の代弁を果たす。また、法による復讐の念を代弁することにより、被害者側による仇討ちなどの違法行為を防止する。
会の動向
財政的支援と活動
岡村が文藝春秋に寄稿した「私は見た『犯罪被害者』の地獄絵」を読み感銘を受けた、岡村の母校一橋大学出身者を中心に、2000年に設立された「犯罪被害者の会を支援するフォーラム」(発起人代表・瀬戸内寂聴(作家)、石原慎太郎(東京都知事)、樋口廣太郎(アサヒビール名誉会長)、奥田碩(経団連会長、如水会理事長)、事務局長・高橋宏(首都大学東京理事長、一橋総研理事長、如水会副理事長)、山本千里(如水会理事兼事務局長)からの経済的支援などを財政基盤とし、会費はとらずに[1][2] 、2004年犯罪被害者等基本法の成立、2007年の刑事訴訟法改正による被害者参加制度創設、2008年の犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律改正などに尽力した。
2010年には創立10周年記念シンポジウムが有楽町で開催され、岡村の開会あいさつの後、加藤公一(法務副大臣)及び長年会を支援してきた「犯罪被害者の会を支援するフォーラム」発起人代表である石原慎太郎(東京都知事)の祝辞があった。
公訴時効の廃止運動
同会は設立以来、公訴時効の廃止も主張してきた。2008年5月には自由民主党政務調査会司法制度調査会に、殺人事件などの重大事件について、時効の廃止を求める要望書を提出。同年11月に殺人事件などの重大事件について、時効の廃止を求める大会決議を行い、同年12月、森英介法務大臣に決議書を提出し、公訴時効の廃止を求めた[3]。その後2010年に刑事訴訟法改正により殺人等の公訴時効が廃止された。
2009年には、第45回衆議院議員総選挙による政権交代で誕生した鳩山由紀夫内閣の千葉景子・法務大臣を代表幹事の岡本と会員が訪れ、公訴時効廃止の要望書を提出した。
千葉法務大臣による死刑執行命令・処刑に対する賞賛・賛同表明
今まで死刑廃止姿勢を標榜し、死刑執行に対して慎重と思われていた千葉景子・法務大臣が参議院選挙落選直後に突然、死刑執行命令を下し2010年(平成22年)7月28日に東京拘置所において2人の死刑囚の処刑が前回処刑日から丁度1年振りに行われた。この時、千葉景子・法務大臣は日本の歴代の法務大臣として初めて処刑現場に立ち会った。 これを受けて、同日19時に放送されたNHKニュース7のインタビューにおいて「全国犯罪被害者の会」の岡村勲代表幹事は、今回の久し振りの処刑を「大変良かった。心から歓迎する。」と述べ、長く死刑が執行されなかった事への不満とともに今回の処刑に安堵する見解を表明し、千葉法務大臣による命令・処刑を、死刑賛成派団体として支持し、今後も刑法に従い迅速な死刑執行を求める姿勢を示した。尚、千葉法務大臣は処刑命令後も「議論を重ねた上で死刑は廃止するべき」の意思を持っており、今回の処刑命令は死刑維持姿勢を堅持する法務省官僚を対話のテーブルに座らせ、刑場公開を始めとする死刑情報の国民への周知を促進し、先進国中でもアメリカと並ぶ数少ない死刑存置国である日本の死刑存廃論議を本格的に展開するに必要な基盤を構築するための手法とも考えられる。一方、これに対し、死刑廃止派団体の「アムネスティ・インターナショナル日本」は、「勉強会の立ち上げ、刑場を公開するという姿勢は評価するが、国が人の命を奪い続けながらの議論はつじつまが合わない」「人命を軽視する非道の行い」などとして、この処刑に対する強い怒りと失望の念を表明し、死刑執行の停止を求めた。
東京拘置所内・刑場公開に際する「賛同・牽制」両面からの見解表明
法務省は2010年(平成22年)8月27日、千葉景子法務大臣の指示を受け東京拘置所内の処刑場を報道陣に対し初めて公開した。これに関り、同日19時に放送されたNHKニュース7のインタビューにおいて岡村勲代表幹事は「公開の法廷で言い渡された死刑をどういう場所で執行したのか、刑場のことも含めて国民に公開するのは当然だ。ただし、死刑のあり方について検討する法務省の勉強会の中に絞首刑の場面を想像させることで、死刑制度の存廃の議論に踏み込むという考えがあるとしたら問題がある。死刑執行の手段と、死刑制度が必要かどうかという議論は別の問題だ。」と述べ、今回の刑場公開が国民に死刑を知る契機になる事に賛同する一方、日本の死刑廃止論議への拍車に繋がる事への牽制的姿勢を示した。これに対し、日弁連・死刑執行停止実現委員会の小川原優之事務局長は「刑場が公開されるだけでは『死刑はこれほど厳粛な場で執行されている』という印象だけを与え、死刑制度を維持するための情報操作にもなりかねない。死刑の存廃について国民的議論をするには不十分だ。」と述べ、更なる情報公開と十分な議論展開を求めた。
「死刑制度のあり方を検討する法務省の勉強会」の席上における死刑存続意見の主張
2010年(平成22年)9月9日、千葉景子法務大臣の指示により死刑制度のあり方を検討する法務省の勉強会が初めて公開で開かれ、同日19時に放送されたNHKニュース7のフラッシュニュースコーナーでその模様が報道された。有識者の一人として岡村勲代表幹事が出席し、死刑賛成派団体の立場・意向として「人の命を奪った者は、自分の命で償うべきではないか。」、更に、元検察官の本江威憙氏は「死刑に犯罪抑止効果を認めないのは、不自然だ。」と述べ、死刑の維持・存続を主張した。これに対し刑事法学者の菊田幸一氏は「仮釈放のない終身刑を設けるべき。」、また、日本弁護士連合会副会長の道上明氏は「冤罪による死刑執行が否定できない以上、国民世論にかかわらず死刑廃止を検討し、廃止や停止を目指した議論をすべきだ。」と意見を述べた。
「岡村代表幹事」の退任会見
2011年(平成23年)1月23日、東京都千代田区北丸の内公園の「科学技術館サイエンスホール」で開かれた総会において岡村勲代表幹事は退任を発表し、同日19時に放送されたNHKニュース7において主要ニュースの1つとしてその模様が報道された。席上で「被害者の権利が全く保障されていない状態で活動を始めたが11年間で(犯罪被害者基本法)の制定、(刑事裁判への被害者参加制度)の導入、(被告への質問の実現)、(検察官とは別に求刑の実現)等大きく前進させることができた。」と述べた。また、この活動を通じて「けさも仏前で、(妻に)"敵(かたき)は討ったよ"と報告をして来た。」と感慨深く語った。今後は本会の顧問として、被害者への新たな補償制度など残された課題の実現に向け本会の活動を支えるとも述べた。
日本の死刑に対する考え方
本会は死刑賛成派団体であるゆえ、海外の死刑廃止の潮流と日本の死刑存置は全く無関係と位置付けている。凶悪的な殺人事件の犯人に対しては必ず死刑判決を望む姿勢を堅持しており、犯人に対しては「死をもって償ってもらう」以外の選択肢は持ち合わせていない。このため凶悪的な殺人犯人が生き延びる無期懲役、及び近年国会、法務省等で議論が始まりつつある、終身刑導入、死刑廃止に対しては否定・反対的な見解を持っている。
関連項目
脚注
- ^ 松村恒夫「犯罪被害者の現状と必要な支援」内閣府,2008年
- ^ 「「犯罪被害者週間」国民のつどい」内閣府,2006年
- ^ 岡村勲「凶悪・重大犯罪の公訴時効の在り方について:制度の見直しの方向性」2009年7月17日