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白茶(はくちゃ、しろちゃ、パイチャ)は、主に中国福建省湖南省で生産されている中国茶。製法(発酵度)による中国茶の分類(六大茶類)の一つである。弱発酵茶。

白毫銀針の茶葉
白毫銀針の水色

定義 編集

白茶は一般的には弱発酵茶(発酵度が非常に浅い段階で自然乾燥させた茶)として説明される事が多い[1][2]。ただし茶業における「発酵」は酵素による酸化を指し、生化学的な意味での「発酵」ではない[3]

一方、茶類の分類を定義を定めた「ISO 20715:2023 Tea — Classification of tea types」では白茶を製法の観点から以下のように定義している:

tea (3.2) derived solely and exclusively, and produced by acceptable processes, by harvesting and a single withering/drying stage of the bud or bud and tender shoots (one to three leaves) of varieties of the species Camellia sinensis (L.) O. Kuntze, known to be suitable for making tea for consumption as a beverage[4]
(試訳)Camellia sinensis (L.) O. Kuntze—飲料として消費される茶を作るのに適していることが知られている—の変種の芽もしくは芽と柔らかい苗条[注 1](1つから3つの葉)から、容認できる工程、すなわち[注 2]収穫し一度の萎凋/乾燥をする段階によって唯一かつ排他的に得られ、製造された茶(茶の定義は3.2章を参照)。
ISO 20715:2023 Tea — Classification of tea types

概要 編集

茶葉に白い産毛がびっしりと生えていることが、名前の由来である。そのような特徴を持つ茶葉を白毫(はくごう、パイハオ)と呼ぶが、白毫のある茶葉がすべて白茶に用いられる訳ではない。

摘まれた茶葉を、萎凋(いちょう、放置して萎れさせ、発酵を進めるとともに水分を飛ばすこと)した後に、火入れして乾燥させるだけという、中国茶の中では特に簡素な工程となっている。六大茶類の中では、唯一白茶だけが「揉捻」を施さない。

萎凋は地域により、屋外での日光萎凋をする場合と室内萎凋をする場合がある。いずれも送風機を用いたり、揉む、揺らすなど人為的な発酵の促進はしないため、発酵はゆっくりと進む。発酵と言っても、黒茶プーアル茶等)の微生物による発酵を施した茶とは異なり、茶葉が元々もつ酸化酵素による酸化発酵が中心となるもので、黒茶以外の他の発酵茶と同様である。この段階で水分の9割ほどは蒸発している。萎凋が完了した茶葉は「烘籠」と呼ばれるで出来たバスケットに入れられ、とろ火にかけて乾燥、これにより酵素発酵が止められる。白毫銀針は、茶葉が未だ熱い内に紙袋に入れられる。この目的は、茶葉が熱く柔らかい内に袋に詰める事で破損を防ぐためと、数日間意図的に蒸れさせることで、更なる熟成を促すためである。但し、この工程は非常に熟練の技を必要とし、多くの白茶は「ムレ臭」を伴う。最高品質の白茶にはムレ臭がなく、色も均一なヒスイ色をしている。灰色や褐色化した白茶は、萎凋の際に層が厚すぎたり、取り扱いが乱雑だったことを示している。

多くの中国茶とは異なり、揉みこむ工程(揉捻)がないために茶葉そのままの姿で出荷される。そのため茶葉が揺れ動く様を楽しめるように、淹れる際には耐熱ガラスに90度前後のお湯を注いで飲むのが一般的。こうする事で、茶葉がまるで「笹の葉」のように、ゆらゆらと揺れ動く様子を楽しむことができる。また、冷たい水で淹れても美味しく飲める。

香り・味わい・水色ともに上品で後味がとても甘い。また、白茶には宿酔い夏ばてに効くといった効能や解熱作用があると言われている。

茶葉 編集

主なものに「白毫銀針」「白牡丹」「寿眉」などがある。

日本語 中国語 説明
白毫銀針 はくごうぎんしん パイハオインヂェン 1880年代から福建省福鼎政和で大白種の若芽から作られるようになった一芯一葉摘みの「白芽茶」で、最も代表的な白茶。
白牡丹 はくぼたん パイムーダン 一芯二葉の「白葉茶」の代表格。福建省の建陽などで大白種または水仙種から作られる。
寿眉 じゅび ショウメイ 白毫銀針などに用いる若芽を摘み取った後に、一芯二葉から一芯三葉で摘んだ、葉の部分を主に用いたもの。

日本での知名度 編集

日本ではあまり飲まれない珍しいお茶だが、『アサヒ 白茶』(アサヒ飲料、2005年)[6]、『本茶房 白いお茶』(大塚ベバレジ、2006年)[7]、『アサヒ 白烏龍』(アサヒ飲料、2009年、白茶と烏龍茶のブレンド)[8]、『ジャワティストレート ホワイト』(大塚食品、2012年)[9]などのペットボトル飲料も発売されている。なお、インドスリランカでもここ数年、差別化・ブランド化の一環として白茶生産を開始する事例が出てきた。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ budshootsの訳は文献[5]に従った。
  2. ^ by acceptable processes, by harvestingのカンマを同格だと解釈して訳した。

出典 編集

  1. ^ 中国茶の種類|お茶の種類|お茶百科”. お茶百科. 2024年3月21日閲覧。
  2. ^ 中国茶の種類”. 中国茶の清香花楼チンシャンファーロウ (2022年9月5日). 2024年3月21日閲覧。
  3. ^ 緑茶と紅茶、ウーロン茶の違いを教えて下さい。”. 公益社団法人 静岡県茶業会議所. 2024年3月21日閲覧。
  4. ^ 3 Terms and definitions, 3.14 white tea”. ISO 20715:2023(en) Tea — Classification of tea types. 2024年3月19日閲覧。
  5. ^ シュート”. BotanyWeb. 筑波大学. 2024年3月25日閲覧。
  6. ^ 「アサヒ 白茶 PET500ml」新発売 - アサヒ飲料ニュースリリース、2005年1月6日。
  7. ^ 『本茶房 白いお茶』280mlペットボトル- 4月3日(月)より全国新発売 - 大塚ベバレジニュースリリース、2006年3月10日。
  8. ^ 『アサヒ 白烏龍』新発売 - アサヒ飲料ニュースリリース、2009年7月9日。
  9. ^ ジャワティーに“ホワイト”バージョン登場』 - ITmediaねとらぼ 2012年03月01日 18時22分

参考文献 編集

  • 菊地和男 写真・文『中国茶入門 香り高き中国茶を愉しむ』講談社、1998年7月。ISBN 978-4-062-09232-6 
  • 工藤佳治 主編『中国茶事典』勉誠出版、2007年11月。ISBN 978-4-585-06057-4