直接行動(ちょくせつこうどう、英語: direct action)とは、選挙などの政治行動によらずに一定の政治的,経済的,社会的な意思表示を行う方法を広く指す [1]。反原発を訴えて官邸前で連日集団で行われたデモ活動、1960年安保闘争の際に「ワッショイ!」のかけ声とともに駆け足で蛇行する形で行われたジグザグ・デモ、それに伴って行われ「へたりこみ」とも呼ばれた座り込みなどが例として挙げられる[2]。政府に対する意思表示だけでなく私企業に対するものも含まれるが、反捕鯨活動において、生簀の網を切る、漁業者の顔にカメラを近づけて罵詈雑言を浴びせるといった、違法性や悪質性の高い行為が含まれることもある[3]

直接行動の意義 編集

直接行動が社会的に支持されるかについては実際の被害の程度とその政治目的の正当性の度合いのバランスである。人が傷つく行為はご法度とされるが、有名な政治家の顔にパイをぶつける行為などは、明確な傷害が伴わないため許容される感もある。また同じように会社の職場や大学の施設の不法占拠は短時間であれば嫌がらせ程度として許容されている感がある。森林伐採場で自分を木に縛り付けたりするなどの営業妨害の行為も器物破壊や傷害による破壊行動が伴わないため、「非暴力」直接行動と認識されている。これのような直接行動には欧米社会は寛容であり、実行者は逮捕されても起訴されずに釈放されることがほとんどである。動物解放戦線という過激派の団体が動物実験を行なう医療施設の従業員の家庭の窓ガラスを割るなどの嫌がらせを行なったときはテロ行為として厳重に処罰されている。もちろん日本などでは過去の学生運動が過激化し多数の死傷者の出る事態に発展した経験があり直接的権利侵害=暴力行為との観念があるため、「非暴力」直接行動という定義自体が矛盾しているととらえられる場合もある。

一方で器物破壊活動に関しては、目的の正当性しだいといえる。捕鯨に抗議するシーシェパードなどがあくまでも妨害活動と「嫌がらせ」に終止するのは、「非暴力」という一線を越えれば欧米の大衆の支持を失うからである。しかし、不法に乱獲を行なっていた漁船をシーシェパードが停泊中に沈没させた事件においては世論は同情的であった。また捕鯨船のスクリューを破壊する行為も人的被害が起こらないので正当とみなす世論がマスコミにも存在する。またこれらの行為に警察などが強硬に対応して抗議する側を傷つけるなどの結果になれば世論の同情が不法行為を行う側に集まるという構造になっているため、直接行動を行う側はできるだけ挑発的行動にでることが多い。シーシェパードが日本側が危険な行為を行なったとの主張を頻繁に行なうのは、自らの団体の直接行動の正当化とともに世論の支持を集めるためである。

実例 編集

中華民国台湾)では、2014年に政府の政策に抗議する若者らによる立法院の占拠が行われた[4]

脚注 編集

  1. ^ "直接行動". ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、精選版 日本国語大辞典. コトバンクより2022年11月7日閲覧
  2. ^ 渡邊, 太「直接行動と民主主義 : ―抗議行動の戦術をめぐって―」『鳥取看護大学・鳥取短期大学研究紀要』第85号、鳥取看護大学・鳥取短期大学、日本、2022年7月1日、15-27頁、ISSN 2189-83322022年11月7日閲覧 
  3. ^ 野村, 康「民主政と越境的直接行動 太地町における反捕鯨活動の批判的考察」『人間環境学研究』第11巻第2号、人間環境学研究会、日本、2013年、91-105頁、CRID 1390282680275765376ISSN 1348-52532024年1月16日閲覧 
  4. ^ “「中台協定」反対の学生らが議場占拠 台湾 「産業切り捨てにつながる」”. 産経新聞. (2014年3月19日). https://web.archive.org/web/20140319135705/http://sankei.jp.msn.com/world/news/140319/chn14031912360001-n1.htm 2014年3月23日閲覧。 

関連項目 編集