石灰硫黄合剤(せっかいいおうごうざい、Lime sulfur)とは、殺虫作用、殺菌作用を持つ農薬の一種。通常、赤褐色の強い硫黄臭(腐った玉子や硫黄を含む温泉の臭気)のする原液を希釈して利用する。

成分 編集

多硫化カルシウム(CaSx)が主成分。その中の五硫化カルシウム(CaS5)が効果の中心であるとされる。

適用 編集

注意事項 編集

一般的な農薬とやや性質が異なり、次のような点に注意を要する。

  • 強アルカリ性のため皮膚を侵す。皮膚に付着した場合は直ちに水でよく洗い落とす。眼に入った場合は、直ちによく水洗した後、眼科を受診するべきである。濃度にもよるが適切な処置をしないと、最悪、化学熱傷のため植皮術が必要となったり、失明に至ることもある。
  • 強アルカリ性のため、本剤を扱えない噴霧機がある。噴霧機の説明書を確認する必要がある。
  • 相当の悪臭がするので、散布時間・散布場所に配慮が必要。
  • 薬害が出やすいので、説明書をよく読み、希釈濃度や対象植物等を守ること。特に高温時の散布は薬害が出やすい。
  • 酸性物質と混合すると、有毒ガスの硫化水素を発生するので、非常に危険である。

古くからある農薬で、正しく使う限り、安全性は高い。

ヒトが経口摂取した場合 編集

自殺目的などで、ヒトが経口摂取した場合、腹痛、下痢、消化管の潰瘍などの症状を引き起こす。

また、石灰硫黄合剤は胃酸により硫化水素と硫黄に分解される。腸内においては細菌の働きにより硫黄から硫化水素が生じる。硫化水素中毒となると意識レベル低下、呼吸抑制などとなる。至急、医療機関において適切な処置を行わないと最悪の場合、死亡する。

歴史 編集

1851年、フランスのベルサイユ宮殿の主任庭師だったGrisonによって開発された。硫黄は真菌に取り込まれると硫化水素に還元される。硫化水素はほとんどの細胞タンパク質にとって毒性がある。硫黄は植物にとっても有害であるため(薬害)、水酸化カルシウムと混合することで毒性を弱めることが行われた[1]

脚注 編集

関連項目 編集