社外取締役(しゃがいとりしまりやく)とは、株式会社取締役であり、外部の視点により企業経営のチェック機能を果たす役割を持つ。

企業によっては日立製作所東芝などのように、コーポレートガバナンス改革の一環として社外取締役を「取締役会議長」として取締役会の議事進行権を与えたり[1]指名委員会等設置会社で指名委員長に社外取締役を充てているケースがある[注釈 1]


定義 編集

以下の全てに該当するものをいう(会社法2条15号)。

  1. 当該株式会社又はその子会社業務執行取締役(株式会社の会社法363条第1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
  2. その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
  3. 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
  4. 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
  5. 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

なお、2014年(平成26年)の会社法改正により、社外取締役の要件が上述のように厳格化された。また、社外取締役等の責任制限については非業務執行取締役等を対象とするものに改められた(会社法427条1項)。2015年(平成27年)に発表されたコーポレートガバナンス・コードにより、上場企業は社外取締役を2人以上起用することが事実上義務化されている。

  • 会社法は、以下で条数のみ記載する。
特別取締役による議決の定め

取締役会設置会社において、特別取締役による議決の定めをするためには、取締役のうち1名以上が社外取締役でなければならない(373条1項2号)。

監査等委員会設置会社における規定

監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は3人以上で、その過半数は社外取締役でなければならない(331条6項)。

指名委員会等設置会社における規定

指名委員会等設置会社における委員会では、その委員の過半数が社外取締役でなければならない(400条3項)。

商業登記 編集

会社法下において社外取締役である旨の登記ができるのは、373条1項の規定による特別取締役による議決の定めがあるとき(911条3項21号ハ)又は委員会設置会社であるとき(911条3項22号イ)もしくは427条1項の規定による社外取締役が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがあるとき(911条3項25号)の場合に限られる(2006年3月31日民商782号通達第2部第3-5(2)ア(ア)なお書[3])。登記記録の例については2006年4月26日民商1110号依命通知第4節第5-5・同第5-6・同第5-8[4]を参照。

2006年(平成18年)5月1日の会社法施行前、株式会社の取締役が社外取締役である場合、社外取締役である旨は絶対的登記事項であった(旧商法188条2項7号ノ2)。当該会社が会社法施行時に上記の社外取締役である旨の登記ができない会社であった場合でも、当該社外取締役の任期中に限り、社外取締役である旨の登記を抹消しなくてよいとされた(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律113条7項[5])。

諸問題 編集

利益相反 編集

日本では、四大法律事務所など大手事務所の場合、取引企業の利益相反にあたるため、所属する弁護士の派遣には慎重な姿勢である。理由は、本業である顧客企業と社外取締役として派遣された先の企業が競合関係にある場合、利害関係がぶつかることになるためである。海外の大手法律事務所の場合、他の上場会社の社外取締役に就任することは所内規則で禁止している場合が多い[6]

天下り 編集

日本では、財務、経産、外務、法務・検察の有力OBが社外取締役に天下りする傾向がある。「仕事は少なく」「実入りは多く」「責任は限定的」(損害賠償などの免責範囲が広い)なことが背景にある[7]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 2021年の東芝では車谷暢昭CEOが社外取締役の取締役会議長兼指名委員長永山治中外製薬名誉会長)によって辞任に追い込まれるなど、重要な役割を果たしているケースもある[2]

出典 編集

  1. ^ 企業の取締役会議長、社外登用が増加 金融庁が後押し、外部の視点を取り入れ統治改革産経デジタル 2018年7月13日 2021年4月10日閲覧)
  2. ^ 東芝、不正会計の教訓生きる 危機拡大防いだ取締役会議長・永山氏産経新聞 2021年4月19日 2021年4月30日閲覧)
  3. ^ 法務省民事局 「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(通達) (PDF)法務省
  4. ^ 法務省民事局 「会社法の施行に伴う商業登記記録例について(依命通知) (PDF)法務省
  5. ^ 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 抄 - e-Gov法令検索
  6. ^ “社外取締役の有力供給源 大手法律事務所、就任にためらい 利益相反を懸念/本業に不利益も”. 日本経済新聞. (2016年4月18日). http://www.nikkei.com/article/DGKKZO99746740W6A410C1TCJ000/ 2018年7月19日閲覧。 
  7. ^ “官僚天下る社外取締役 年10回の取締役会出席で日給100万円”. 週刊ポスト. (2014年3月20日). https://www.news-postseven.com/archives/20140320_246481.html?DETAIL 2021年12月11日閲覧。 

関連項目 編集