童子教(どうじきょう)は、鎌倉時代から明治の中頃まで使われた日本の初等教育用の教訓書。成立は鎌倉中期以前とされるが[1]、現存する最古のものは1377年の書写である[2]。著者は不明であるが、平安前期の天台宗の僧侶安然(あんねん)の作とする説がある[3]。7歳から15歳向けに書かれたもので[4]、子供が身に付けるべき基本的な素養や、仏教的、儒教的な教えが盛り込まれている。江戸時代には寺子屋の教科書としてよく使われた[1]。女子向けの「女童子教」など、「○○童子教」といったさまざまな対象に向けた類書も書かれた。
[5]初めの部分である。
白文
- 夫貴人前居 顕露不得立
- 遭道路跪過 有召事敬承
- 両手當胸向 慎不顧左右
- 不問者不答 有仰者謹聞
- 三寶盡三禮 神明致再拝
- 人間成一禮 師君可頂戴
- 過墓時即慎 過社時即下
- 向堂塔之前 不可行不浄
- 向聖教之上 不可致無禮
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読み方
- 夫れ貴人の前に居ては 顕露(けんろ)に立つことを得ず
- 道路に遭うては跪きて過ぎよ 召すこと有らば、敬つて承れ
- 両の手を胸に当てて向へ 慎んで左右を顧みず
- 問はずんば答へず 仰せ有らば謹んで聞け
- 三宝には三度礼を尽くせ、神明には再拝を致せ
- 人間には一礼を成せ、師君には頂戴すべし
- 墓を過ぐる時は即ち慎め 社を過ぐる時は即ち下りよ
- 堂塔の前を向つて、不浄を行ふべからず
- 聖教の上に向つて、無礼を致すべからず
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説明
- 偉い人の前に出たときは目立とうとしてはいけない。
- 道で会った時は跪いて通り過ぎるのを待ちなさい。用事をもうしつけられたら、敬意をもって聞きなさい。
- 昔は心は胸にあると考えられていた。慎み深い態度を保ち、左右をキョロキョロみてはいけません。
- 質問されなければ、答える必要はありません。何かおっしゃられる時は恭しく聞きなさい。
- 仏法の三宝(仏、法、僧)に対しては3度礼をして敬意をしめしなさい。神社では2度の礼をしなさい。
- 知り合いにあったら1度頭をさげなさい。師や偉い人には敬意をこめてお辞儀をしなさい。
- お墓の前を通り過ぎる時は、慎ましくしなさい。神社の前を通り過ぎる時は乗り物からおりなさい。
- お寺の堂塔の前では不謹慎なふるまいをしてはいけません。
- 尊い教えが説かれている時は、静かに耳を傾けなさい。
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- 齋藤孝 (教育学者) 『こどもと声を出して読みたい 童子教 江戸・寺子屋の教科書』 2013年 到知出版社
関連項目
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外部リンク
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