第1回アカデミー賞(だい1かいアカデミーしょう)は1927年から1928年7月31日までに公開された映画を対象としており、授賞式は1929年5月16日にアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスのハリウッド・ルーズベルト・ホテル映画芸術科学アカデミー(AMPAS)の主催により行われた[1]。司会はAMPAS会長であるダグラス・フェアバンクスである。授賞式のチケットは5ドルであり、270名が出席し、15分ほどで閉式となった。アカデミー賞はルイス・B・メイヤー・ピクチャーズ・コーポレーションの創設者であるルイス・B・メイヤーにより設立された。ラジオ及びテレビでの放送はされていない。

第1回アカデミー賞

ハリウッド・ルーズベルト・ホテルにて第1回授賞式
開催日 1929年5月16日木曜日
会場 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 カリフォルニア州ロサンゼルスハリウッド
ハリウッド・ルーズベルト・ホテル
司会 ダグラス・フェアバンクス
ハイライト
作品賞 つばさ
最多部門受賞 第七天国』、『サンライズ』(3)
最多部門
ノミネート
『第七天国』(5)
開催時間 15分
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第1回アカデミー賞は12部門で構成された。受賞者は授賞式の3ヶ月前に発表された。ラルフ・ハメラス英語版ニュージャント・スローター英語版といった一部の人物たちは対象作品無しで候補となった[1]。後の賞と違い、俳優や監督は複数の作品を対象として受賞することが可能であった。例えば、主演男優賞を受賞したエミール・ヤニングスは、『肉体の道』と『最後の命令』の両方の功績によって受賞を果たした。チャールズ・チャップリンワーナー・ブラザースにはそれぞれ特別賞が贈られた[2][3]

最多受賞作品は『第七天国』と『サンライズ』の3個、次いで『つばさ』の2個である。 『サンライズ』は芸術作品賞、『つばさ』は作品賞を受賞した。

背景 編集

1927年、ルイス・B・メイヤー・ピクチャーズ・コーポレーション(後にメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)に統合)の創設者であるルイス・B・メイヤーにより、映画業界の5職種(俳優、監督、プロデューサー、技術者、脚本家)から成る映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が設立された[4]。メイヤーは賞の設置について「賞には二つの目的がある。一つは、立派な業績をしっかり認識したいということ。もう一つは、さらに立派な業績を残すよう奨励したいということ」と述べた[5]。メイヤーの依頼により、MGMのアートディレクターセドリック・ギボンズはアカデミー賞のトロフィーをデザインした[4][6]。候補者は1928年2月に電報で通達された[4]。1928年8月、メイヤーは受賞者を決定するアカデミー中央選定委員会の審査員と連絡を取った[4]。しかしながら映画監督のキング・ヴィダーによると、作品賞を決定したのはAMPAS創設者のダグラス・フェアバンクスシド・グローマン、メイヤー、メアリー・ピックフォードジョセフ・M・シェンクらであった[7]

授賞式 編集

授賞式は1929年5月16日[2][3][8][9]カリフォルニア州ロサンゼルスのハリウッド・ルーズベルト・ホテルで開催された[2]。それは36の宴会用テーブルを並べたプライベート・ディナーで[10]、出席者は270名でチケットは5ドルであった[2]。俳優たちは高級車に乗ってホテルに到着し、有名人たちを讚えるために多くのファンが出席した[10]。授賞式の模様はラジオやテレビで放送されなかった[2]。司会はAMPAの会長であったダグラス・フェアバンクスが務め[2][3][9][11]、15分で完了した[8]

受賞とノミネート 編集

受賞者は授賞式の3ヶ月前に発表されていた[2][3][8]。史上初のアカデミー賞受賞者となったのはエミール・ヤニングスであり[2]、『肉体の道』と『最後の命令』によって主演男優賞を受賞した[3][8]ジャネット・ゲイナーは『第七天国』と『街の天使』と『サンライズ』によって主演女優賞フランク・ボーゼイジは『第七天国』によってドラマ監督賞ルイス・マイルストンは『美人国二人行脚』によってコメディ監督賞、当時最高の製作費がかけられた[9]つばさ』は作品賞を受賞した[1]チャールズ・チャップリンワーナー・ブラザースにはそれぞれ名誉賞が贈られた。元々チャップリンは『サーカス』により主演男優賞、脚色賞、コメディ監督賞にノミネートとなっていたが、最終的にリストから削除され、名誉賞を受賞した[3]。またワーナー・ブラザースはトーキー映画を開拓した功績により受賞となった。また受賞結果は5大スタジオ(20世紀フォックス、MGM、パラマウント映画レイディオ・キース・オーフィアム、ワーナー・ブラザース)の作品に偏った[4]。3つの部門(技術効果賞、脚本字幕賞、芸術作品賞)が今回限りの設置となった[1]

以下、太文字が受賞である。

作品賞 芸術作品賞
コメディ監督賞 ドラマ監督賞
主演男優賞 主演女優賞
原案賞 脚色賞
撮影賞 美術賞
技術効果賞 脚本字幕賞

名誉賞 編集

統計 編集

ギャラリー 編集

出典 編集

  1. ^ a b c d The Official Academy Awards Database”. Academy Awards Database. Academy of Motion Picture Arts and Sciences. 2010年5月6日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j History of the Academy Awards”. Academy of Motion Picture Arts and Sciences. 2010年4月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年5月6日閲覧。
  3. ^ a b c d e f Dirks, Tim. “1927–28 Academy Awards Winners and History”. Rainbow Media. 2010年5月6日閲覧。
  4. ^ a b c d e Cosgrave 2007, p. 1
  5. ^ 『アカデミー賞のすべて』 p.24
  6. ^ Eyman 2005, p. 209
  7. ^ Eyman 2005, p. 138
  8. ^ a b c d Pawlak, Debra Ann, The Story of the First Academy Awards, The MediaDrome. 
  9. ^ a b c d This day in History”. History. A&E Television Networks. 2010年10月5日閲覧。
  10. ^ a b Cosgrave 2007, p. 4
  11. ^ Names make news”. Time Magazine. Time Inc (1929年5月27日). 2010年10月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月5日閲覧。
  12. ^ a b 『アカデミー賞のすべて』 p.310

参考文献 編集

  • Eyman, Scott (2005), Lion of Hollywood: the life and legend of Louis B. Mayer (I ed.), New York, United States: Simon & Schuster, ISBN 0-7432-0481-6, OCLC 57506846 
  • Cosgrave, Bronwyn (2007), Made for Each Other: Fashion and the Academy Awards (I ed.), New York, United States: Bloomsbury Publishing USA, ISBN 978-0-7475-7630-3, OCLC 74523691 
  • 長谷川正; 田中雄二; 畑暉男; 岡田光由; 神春夫; 日野康一; 山下憲子 著、田中雄二; 外山真也 編『アカデミー賞のすべて - From 1928 To 2006』共同通信社、2007年。ISBN 978-4764130890 

外部リンク 編集