等角図

三次元オブジェクトを二次元で視覚的に表現する方法

等角図(とうかくず、: isometric projection)または等角投影図(とうかくとうえいず)は、投影図のひとつ。直交する3軸の角度をそれぞれ120度とし[1]、物体を斜め上から俯瞰したように描写される。

等角図で描かれた図形。赤字の寸法は等角図上の長さで、黒字の寸法は正投影図での実際の長さ。

製図の際に用いる図法のひとつで、各辺を実寸で描くことから寸法を伝えやすい利点がある。一方で、奥行きが考慮されないため奥にあるものほど実際よりも大きく描かれる。

歴史 編集

光学研磨エンジンモデル(1822)の30°等角投影図[2]
中国代に書かれた時代小説三国志演義』の挿絵

等角図の概念は2千年紀中期ころから経験則として存在していたが、1822年化学者ウィリアム・ファリッシュ英語版によって初めて定式化された[3][4]

オランダの研究機関International Institute for Asian Studies英語版のJan Krikkeは、「等長写像19世紀半ばから技術者にとって貴重なツールとなり、その後まもなく欧米で建築訓練のカリキュラムに組み込まれた」「軸測投影図英語版(等角図を含む図法グループの総称)の起源は中国で、中国美術の機能は欧州美術の透視投影と類似していた」としている[5]

応用 編集

トリックアート 編集

赤玉よりも青玉のほうが高い位置にあるはずだが、同じ高さのように見える。
不可能図形として知られるペンローズの階段。階段がループした構造で三次元では実現し得ない。

前述のように、等角図は奥行きが正確に表現されない難点がある。しかし、このことを逆に利用し、見る側に錯覚を与える画像や三次元では構築不可能な不可能図形といったトリックアートの数々が制作されている。

コンピュータゲーム 編集

1980年代から1990年代のコンピュータゲームの一部では、等角図のような斜め見下ろし視点の「クォータービュー」表現が見られた。これは、当時の技術では3D表現が困難だったことから、限られたリソースの中で擬似的に3Dに見せる手法として用いられたものである。

クォータービューを初めて採用したゲームは1982年にセガが発売したアーケード向けシューティングゲームザクソン』で、1990年代には『ディアブロ』『バルダーズ・ゲート』『スタークラフト』『X-COM: UFO Defense英語版』などのPC向けのRPGストラテジーゲームで多く採用された。2000年代に入りグラフィックの表現力が増すにつれてクォータービュー作品は減少したが、2010年代頃からは一部のインディーゲームで採用されている[6]

脚注 編集

  1. ^ 日本大辞典刊行会 1974.
  2. ^ William Farish (1822) "On Isometrical Perspective". In: Cambridge Philosophical Transactions. 1 (1822).
  3. ^ Barclay G. Jones (1986). Protecting historic architecture and museum collections from natural disasters. University of Michigan. ISBN 0-409-90035-4. p.243.
  4. ^ Charles Edmund Moorhouse (1974). Visual messages: graphic communication for senior students.
  5. ^ IIASN9-Chinese Perspective” (英語). IIAS. 2019年3月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年11月30日閲覧。
  6. ^ Retronauts: The Continued Relevance of Isometric Games” (英語). USgamer (2014年12月19日). 2022年12月12日閲覧。

参考文献 編集

  • 日本大辞典刊行会, ed. (1974). "とうかくとうえいず【等角投影図】". 大日本国語辞典. Vol. 14 (初版初刷 ed.). 東京: 小学館. p. 425. ISBN 4095220147. NCID BN01221521

外部リンク 編集