縁の海(ふちのうみ、ラテン語: Mare Marginis)は月の海の一つで、月の表側の縁に位置する。月面緯度は北緯13.3度、月面経度は東経86.1度で、直径420kmである。

縁の海
ラテン名 Mare Marginis
英語名 Sea of the Edge
直径 358 km[1]
月面座標 北緯13度18分 東経86度06分 / 北緯13.3度 東経86.1度 / 13.3; 86.1座標: 北緯13度18分 東経86度06分 / 北緯13.3度 東経86.1度 / 13.3; 86.1
月面緯度 北緯13.3°
月面経度 東経86.1°
テンプレートを表示

日本語訳で「の海(みどりのうみ)」と表記してある地図が時々見られるが、ラテン語名"Mare Marginis"は、"Mare"が「海」、"Marginis"が「端っこの」を意味するので一切「緑」という意味はなく、単純に誤記である[2]

この海は表側にある他の大半の海とは異なり、不規則な輪郭を持ち細長い外観である。海の面には小さい円形で、引き伸ばされた構造が見られるが、これらは恐らく300から520メートルの溶岩で埋まった隕石孔である。さらに、縁の海には明瞭で大きいクレーターが集中していない。そのため縁の海は、溶岩が単に地上まで届いて出来た高地の、低い地域であるように見える。海に深く穿たれたクレーター数個が近くに存在する。これらのクレーターは、火口原が、それを囲む高地の表面より下に位置している。そのために、それらは地表の近くに溶岩のある縁の海の周りの標識となっている。縁の海近辺の有名なクレーターとしては北方にアル=ビールーニ・クレーターがあり、南東にはイブン・ユーヌス・クレーター、北西にはゴダード・クレーターがある。

この海の表面には、何か渦巻いたような、嵐の大洋にあるライナー・ガンマと同様の高アルベド堆積物が見られる。この物質は、比較的強い磁場と関連している。これは東の海と対蹠点に位置しており、そのこともこの物質の形成に関連があると考えられる。他にありうる説明としては「彗星の衝突」、「火山性ガスの放出」、「通常の地表が磁場によって風化した物質に覆われている」、などが挙げられる。しかしこのような高輝度物質の正確な原因は、判明していない。

脚注 編集

  1. ^ "縁の海". Gazetteer of Planetary Nomenclature. USGS Astrogeology Research Program.
  2. ^ 『月の地形ウォッチングガイド』、白尾元理、株式会社誠文堂新光社、2009年、ISBN 978-4-416-20921-9、p.155 「COLUMN -緑(みどり)の海はどこ?-」
    なお、筆者によるとこの誤記は『月刊 天文ガイド』に自分の原稿を乗せた際に原稿は「縁の海(ふちのうみ)」だったのが「緑の海(みどりのうみ)」になっていたので、編集者に尋ねたところ年間書籍の月面図に「緑」表記であったため原稿側が誤記と思い訂正したというので、関連の本を10数冊ほど確認した所、その年間書籍を含む半数近い本が「緑の海」表記で、確認できた中で最古のものは『月面とその観測』(中野茂著、恒星社、1967年発行)だったという。

参考文献 編集

  • Paul D. Spudis, The Once and Future Moon, Smithsonian Institution Press, 1996, ISBN 1-56098-634-4.