腐蛆病

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腐蛆病(ふそびょう、foulbrood)とは、ミツバチ幼虫を侵す伝染病家畜伝染病予防法における法定伝染病である。

アメリカ腐蛆病に侵された幼虫

アメリカ腐蛆病菌 (Paenibacillus larvae subsp. larvae) により起こるアメリカ腐蛆病、ヨーロッパ腐蛆病菌 (Melissococcus plutonius) により起こるヨーロッパ腐蛆病がある。アメリカ腐蛆病は2日令以内の幼虫が病原体(芽胞)を含む王乳や蜜を与えられたとき、1~5日令で発症し死亡するが、3日令以降は発症しない[1]。摂取された芽胞は中腸内で発芽し、増殖する。さらに血体腔に侵入・増殖して死に至らしめる。アメリカ腐蛆病およびヨーロッパ腐蛆病は養蜂が行われるほとんどの国で発生が認められる。

アメリカ腐蛆病はMichael培地、HS培地、J培地を用いての菌分離あるいはHolstのミルクテストにより診断する。ヨーロッパ腐蛆病はBaileyの培地を用いての菌分離により診断する。予防にはエチレンオキサイドを用いたガス燻蒸による消毒の他に、マクロライド系抗生物質が有効とされる[2]が、抗生物質を用いない防除方法も研究されている[3]中華人民共和国ではテトラサイクリン系の抗生物質が使用されることがあり[4]蜂蜜への移行と残留、病原体の薬剤耐性獲得の可能性などが問題視されている。 感染が確認された場合は、巣箱毎、蜂群を焼却し養蜂道具は適切な消毒を行う。

ミツバチの幼虫の死亡を引き起こす疾病は他にチョーク病バロア病サックブルード病がある。

脚注 編集

  1. ^ 蜜蜂の腐蛆病に関する研究 : II. B.taruae芽胞による感染実験日本獸醫學雜誌 The Japanese journal of veterinary science 23(supple) pp.397 19611225
  2. ^ アメリカ腐蛆病予防薬「みつばち用アピテン」玉川大学 ミツバチ科学 21巻2号 p.55-60(2000-6)
  3. ^ ニュージーランドにおける抗生物質を用いないアメリカ腐蛆病の防除 (PDF)
  4. ^ 蜂病対策に向けた新しい国際的な働き (PDF)

参考文献 編集

  • 清水悠紀臣ほか編『動物の感染症 = Infectious diseases of animals』近代出版、2002年。ISBN 4874020747 
  • 『明解獣医学辞典』チクサン出版社、1991年。ISBN 4885006104 

関連項目 編集

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