菊地成孔

日本のジャズ・ミュージシャン、文筆家、作曲家 (1963-)

菊地 成孔(きくち なるよし、1963年昭和38年〉6月14日 - )は、日本サクソフォーン奏者バンドマスター作曲家[1]文筆家非常勤講師千葉県銚子市出身。

菊地 成孔
生誕 (1963-06-14) 1963年6月14日(60歳)
出身地 日本の旗 日本千葉県銚子市
学歴 音楽学校メーザー・ハウスサックス科
ジャンル
職業
担当楽器
活動期間 1984年 -
共同作業者
公式サイト 菊地成孔の第三インターネット - naruyoshi kikuchi INTERNET TROISIEME
[マイルス・デイヴィス]

概要 編集

銚子市立銚子高等学校を経て、音楽学校メーザー・ハウスサックス科卒業[2]。作家の菊地秀行は実兄。公式サイトによれば、特定宗教は信仰していないが、好きな宗教は神道仏教キリスト教イスラム教ヒンドゥー教ユダヤ教だという。

菊地は基本的に1980年代、1990年代は無名のジャズ・ミュージシャンだったが、1999年に大友良英ニュー・ジャズ・クインテットに参加[3]したころから、徐々に音楽界で知られるようになっていった。さらに著書『東京大学のアルバート・アイラー』(2006)、TBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」(2011)などにより知名度が高くなった。

スタジオ・ミュージシャンとして、多くのミュージシャンとジャムセッションをして来ている。マイルス・デイヴィスジャン=リュック・ゴダールを敬愛しており、本人はこれをして「ゴダール学部マイルス学科卒業」と称する。

実家は千葉県銚子の食堂であり、港町の歓楽街で育った[1]。幼い頃からムード歌謡や、上京した兄が残していった蔵書に慣れ親しむ。学生時代は市民オーケストラでトランペットやファゴットを担当。一浪後、某大学文学部に入学するもすぐに退学。友人のいる上智大学のジャズ研に10年ほど通う[4]

私塾「私立ペンギン音楽大学」を主宰するほか、アテネ・フランセ映画美学校の音楽美学講座メソッド科主任講師。メソッド科の講師は菊地のみ。東京大学教養学部(2004 - 2005)、国立音楽大学(2006 -)、東京芸術大学(2007-)、慶應義塾大学(2008-)、などでも非常勤講師を務める。慶應義塾大学アート・センター訪問所員。

文筆家としても多数の著書があり、雑誌への寄稿・連載なども多くしている。2004年より2013年までの約10年間、新宿歌舞伎町に仕事場を設けていたことから、「歌舞伎町の住人」としてメディアで紹介されることがある。

経歴 編集

  • 2000年
    • 岩澤瞳をヴォーカルに迎え、SPANK HAPPYを再開(第二期)。
  • 2002年
    • 私塾「ペンギン音楽大学」創設。
    • アテネ・フランセ運営の「映画美学校/音楽美学講座」楽理・編曲科主任講師に就任[2]
    • 不安神経症を発症。精神分析治療と内気効のコントロールをベースにした整体により緩解[2]
  • 2003年
  • 2004年
    • 大友良英ニュー・ジャズ・クインテットから脱退。
    • 東京大学駒場地区キャンパスにて音楽講義(「ジャズ〜20世紀アメリカ史」「マイルス・デイヴィス研究」)。
    • 4月5日、SPANK HAPPYから岩澤瞳が脱退。
    • 4月7日、初となるリーダーアルバム『DEGUSTATION A JAZZ』をリリース。
    • 7月、『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール 世界の9年間とコマ劇場裏の6日間』を刊行。
    • 9月、講義録『憂鬱と官能を教えた学校 「バークリー・メソッド」によって俯瞰される20世紀商業音楽史』刊行。
  • 2005年
    • 5月にリリースしたセカンドソロアルバム『南米のエリザベステイラー』を演奏するためのバンドとして、ペペ・トルメント・アスカラール結成。以降「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」名義でアルバムを発表していく。
  • 2006年
    • 国立音楽大学の非常勤講師(ジャズ理論史)に就任。
    • 10月、SPANK HAPPY解散。
  • 2007年
    • 4月25日を最後にDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENの8年に及ぶ活動が終了[7]。渋谷O-Eastで行われた、『Franz Kafka's AMERIKA』リリースツアーファイナル公演のアンコールで再登場した菊地本人によって報告された。
    • 菊地成孔ダブ・セクステット」結成。12月、ファーストアルバム『THE REVOLUTION WILL NOT BE COMPUTERIZED』をリリース。
  • 2010年
    • 7月、DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENがDCPRGに改称して新メンバーによる活動を再開。
  • 2011年
  • 2012年
    • 菊地成孔ダブ・セクステットに駒野逸美(Tb)が加入。新たに「菊地成孔ダブ・セプテット」として始動。
    • ニコニコチャンネルにて「ビュロー菊地チャンネル」を開設。日記・映画評・グルメエッセイなどのメルマガ、ポップアナリーゼなどの動画コンテンツを配信。
  • 2013年
  • 2018年
    • DC/PRGより小田朋美を迎え、SPANK HAPPY再開(第3期)。
    • 12月29日の放送をもって「菊地成孔の粋な夜電波」終了。

音楽作品 編集

ソロ名義 編集

アルバム 編集

  • DEGUSTATION A JAZZ (ewe / 2004年4月7日)
  • CHANSONS EXTRAITES DE DEGUSTATION A JAZZ (ewe / 2004年4月21日) ※ミニアルバム
  • DEGUSTATION A JAZZ authentique Bleu (ewe / 2004年10月21日)
  • 南米のエリザベス・テイラー (ewe / 2005年5月2日)
  • 菊地成孔00年代未完全集『闘争のエチカ "L' ethique de la lutte"(上/下巻)』 (ewe / 2010年10月30日)
    • DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENのファースト・アルバム『REPORT FROM IRON MOUNTAIN』から、発売時の最新録音であった『退行』(『チェイス〜国税査察官〜』主題歌)までの、2000年代の菊地のあらゆる活動を網羅したデータが収録されたUSBメモリである。収録されたデータはすべて菊地本人が選んだものであり、上下巻それぞれに4ギガバイトのデータが収録され、上下巻合わせて音楽140トラック、映像150分、スチール100枚、テキスト5万文字に及ぶ。上巻は既発音源のセレクションを中心とした「ビギナー向け」、下巻はレア音源、映像を中心とした「マニア向け」となっている。

シングル 編集

  • 普通の恋 (Viewsic Discs / 2004年1月28日) ※菊地成孔 feat. 岩澤瞳名義
  • 愛の感染 (dub inc. / 2006年3月10日)
    • 菊地秀行原作、映画『雨の町』のエンディング・テーマ。

共作 編集

映画音楽/ドラマ音楽 編集

DC/PRG・dCprG・DCPRG・DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN 編集

  • REPORT FROM IRON MOUNTAIN (2001年)
  • Structure et force (2003年)
  • Franz Kafka's America (2007年)
  • SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN USA (2012年)
  • Franz Kafka's South Amerika (featuring William Shakespeare) (2015年)

SPANK HAPPY 編集

  • Freak Smile(1995年)
  • Computer House of Mode(2002年)
  • Vendôme, La Sick Kaiseki(2003年)

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール 編集

2005年に発表したソロ作品『南米のエリザベス・テイラー』をライヴで再現するために結成された12人編成(アレンジャーの中島ノブユキを含む)のスモール・オーケストラ。メンバーは、菊地成孔(サックス、ヴォーカル、指揮)、早川純バンドネオン)、林正樹ピアノ)、大儀見元(パーカッション)、田中倫明(パーカッション)、堀米綾ハープ)、吉田翔平(第1ヴァイオリン)、楢村海香(第2ヴァイオリン)、菊地幹代ヴィオラ)、徳澤青弦チェロ)、鳥越啓介コントラバス)、中島ノブユキ(作曲編曲)。バンド名はスペイン語で、“ペペ”は「伊達男/女たらし」、“トルメント”は「拷問」、“アスカラール”は「砂糖漬け/甘ったるい」を意味する。

  • 野生の思考 (la pensee sauvage) (ewe / 2006年10月10日)
  • 記憶喪失学 (Estudios De Sîntoma De Pérdida De Memoria) (ewe / 2008年10月29日)
  • Live Sessions (iTunes Exclusive) (ewe / 2008年11月12日) ※iTunes Store配信限定
  • ライブ@歌舞伎町クラブハイツ (ewe / 2009年1月1日) ※iTunes Store配信限定
  • New York Hell Sonic Ballet (ewe / 2009年10月28日)
  • Baile Exorcisomo (ewe / 2009年11月25日) ※12inch限定
  • LIVE at Liquid Room 2010.06.09 (OTOTOY/ewe / 2010年8月5日) ※OTOTOY配信限定
  • LIVE at Blue Note Tokyo 2011 (OTOTOY/ewe / 2012年1月20日) ※OTOTOY配信限定
  • 戦前と戦後 (TABOO / 2014年3月19日)
  • 夜の歴史/菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラールの十年 (TABOO / 2014年5月7日) ※ベストアルバム。選曲は菊地が行った。

菊地成孔ダブ・セクステット(菊地成孔ダブ・セプテット) 編集

2007年より始動。2管ハード・バップ+ダブ・エンジニアという編成で、バンド・メンバー全員がクールストラティンのオーダーメイドのタイト・スーツを纏う。メンバーは、菊地成孔(ts) 類家心平(tp) 坪口昌恭(p) 鈴木正人(b) 本田珠也(ds) パードン木村(ダブ・エンジニアリング&ターン・テーブル)。菊地はこのバンドについて「糖度を最も低く設定したハードな物件」とする。60年代のマイルス・デイビス・クインテットを軸にポリリズムを際立たせ、ダブをコラージュする。2012年、駒野逸美(Tb)が加入し、新たに菊地成孔ダブ・セプテットとして始動。2017年6月のモーション・ブルー・ヨコハマでの公演をもって無期限の活動休止状態に入った。

  • THE REVOLUTION WILL NOT BE COMPUTERIZED (ewe / 2007年12月19日)
  • Dub Orbits (ewe / 2008年7月16日)
  • イン・トーキョー (ライブ盤) (ewe / 2008年11月21日)
  • LIVE at BLUE NOTE TOKYO 2011.05.05 (ライブ音源) (OTOTOY/ewe / 2011年6月25日) ※OTOTOY配信限定

JAZZ DOMMUNISTERS 編集

2010年に結成された菊地成孔と大谷能生によるヒップホップクルー。名称の由来は、宇川直宏によるライブストリーミングサイト「DOMMUNE」で2010年から現在までの継続中のレギュラー番組「JAZZ DOMMUNE」(2012年に書籍化)から[10]

  • BIRTH OF DOMMUNIST(ドミュニストの誕生) (ビュロー菊地 / Apollo Sounds、2013年11月)
  • Cupid & Bataille, Dirty Microphone(TABOO、2017年6月)

サイドマンとしての参加 編集

セッションワーク 編集

楽曲提供 編集

作詞 編集

  • 市井由理
    • タイムマシン・ブレイカー、さよならの秘密、レインボー・スキップ(joyholic mix)、双子の恋人(『JOYHOLIC』収録)
  • 野宮真貴
    • Elegance Under War(『DRESS CODE』収録)
  • 山本麻里安
    • ヴィーナスと小さな神様(アニメ『NieA 7』エンディング・テーマ)
  • Ahh! Folly Jet
    • ハッピーバースデー
  • 渋谷慶一郎 feat.太田莉菜
    • サクリファイス (渋谷慶一郎との共作詞)
  • 浜崎容子(アーバンギャルド
    • ANGEL SUFFOCATION(ソロアルバム『Blue Forest』収録曲)

プロデュース 編集

  • Ahh! Folly Jet
    • 『Abandoned Songs From The Limbo』(Hot-Cha Records、2002年2月)
  • 南博
    • 『Touches & Velvets Quiet Dream』(EWE Records、2004年11月)
  • 類家心平 4 Piece Band
    • 『Sector b』(AIRPLANE LABEL、2011年9月)
  • KILLER SMELLS
    • 『TARADO1&2』 (ビュロー菊地/AIRPLANE LABEL、2012年4月)
  • ものんくる
    • 『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』 (AIRPLANE LABEL、2013年5月)
    • 『南へ』(TABOO、2014年10月)
    • 『世界はここにしかないって上手に言って』(TABOO、2017年7月)
  • JUJU
    • 『DELICIOUS 〜JUJU's JAZZ 2nd Dish〜』(Sony Music、2013年6月)※サウンドプロデュース
  • けもの
    • 『LE KEMONO INTOXIQUE』 (AIRPLANE LABEL、2013年9月)
    • 『めたもるシティ』(TABOO、2017年7月)
  • Rinbjo(菊地凛子
    • 『戒厳令』(TABOO、2014年12月)
  • 大西順子
    • 『Tea Times』 (TABOO、2016年6月)プロデュース・楽曲提供
  • 宇多田ヒカル

その他 編集

書籍 編集

著書 編集

  • 『スペインの宇宙食』(小学館、2003年)のち文庫
  • 『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール:世界の9年間と、新宿コマ劇場裏の6日間』(小学館、2004年)のち文庫
  • 『サイコロジカル・ボディ・ブルース解凍:僕は生まれてから5年間だけ格闘技を見なかった』(白夜書房、2005年)のち白夜ライブラリー
  • 『CDは株券ではない』(ぴあ、2005年)
  • 『服は何故音楽を必要とするのか? :「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽達についての考察』(INFASパブリケーションズ、2008年)
  • 『ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本』(イーストプレス、2010年)
  • 『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ:菊地成孔の格闘技/プロレスに関する発言集』(アスペクト、2013年)
  • 『時事ネタ嫌い』(イーストプレス、2013年)
  • 『レクイエムの名手:菊地成孔追悼文集』(亜紀書房、2015年)
  • 『菊地成孔の欧米休憩タイム』(blueprint/垣内出版、2017年)
  • 『菊地成孔の映画関税撤廃』(blueprint、2020年)
  • 『次の東京オリンピックが来てしまう前に』(平凡社、2021年)
  • 『戒厳令下の新宿: 菊地成孔のコロナ日記 2020.6-2023.1』(草思社、2023年9月25日)ISBN 4794226756

共著 編集

  • 『憂鬱と官能を教えた学校』大谷能生共著(河出書房新社、2004年)のち文庫
  • 『東京大学のアルバート・アイラー-東大ジャズ講義録・歴史編』大谷能生共著(メディア総合研究所、2005年)のち文春文庫
  • 『東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・キーワード編』大谷能生共著(メディア総合研究所、2006年 のち文春文庫)
  • 『200CD 菊地成孔セレクション:ロックとフォークのない20世紀』(学習研究社、2005年)
    のち完全版『聴き飽きない人々:ロックとフォークのない20世紀』(学習研究社、2007年)※大谷能生、岡村詩野、高見一樹、D、長嶺修、沼田順、村井康司、yoshi-p共著(対談)
  • 『M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究』大谷能生共著(エスクァイア・マガジン・ジャパン、2008年)
  • 『アフロ・ディズニー エイゼンシュテインから「オタク=黒人」まで』大谷能生共著(文藝春秋、2009年)
  • 『アフロ・ディズニー2 MJ没後の世界』大谷能生共著(文藝春秋、2010年)
  • 『JAZZDOMMUNE』大谷能生共著(メディア総合研究所、2012年)
  • 『菊地成孔の粋な夜電波 シーズン1-5 大震災と歌舞伎町篇』TBSラジオ共著(キノブックス、2017年)
  • 『菊地成孔の粋な夜電波 シーズン6‐8 前口上とコントの爛熟期篇』TBSラジオ共著(キノブックス、2018年)
  • 『菊地成孔の粋な夜電波 シーズン9‐12 安定期と母の死そして女子力篇』TBSラジオ共著(キノブックス、2019年)
  • 『菊地成孔の粋な夜電波 シーズン13-16 ラストランと♂ティアラ通信篇』TBSラジオ共著(草思社、2020年)

出演 編集

テレビ・ラジオ 編集

映画 編集

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ a b 毎日放送制作のドキュメンタリー番組、情熱大陸の2005年7月3日放送分にて紹介される。
  2. ^ a b c d 菊地成孔”. www.jzbrat.com. 2018年6月22日閲覧。
  3. ^ 大友良英 2022年1月11日閲覧
  4. ^ 菊地成孔の粋な夜電波 放送後記 第8回(2011年6月5日)
  5. ^ ばるぼら「NYLON100% 渋谷系ポップカルチャーの源流」アスペクト に収録の岸野へのインタビューより。
  6. ^ 第三インターネット/INTERNET TROISIEME 2021年12月8日
  7. ^ Inc., Natasha,. “[DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN 4月25日のライブをもって活動終了 - 音楽ナタリー]”. 音楽ナタリー. 2018年6月22日閲覧。
  8. ^ 【菊地成孔インタビュー】 老舗ジャズ・レーベル、インパルス!と電撃契約。ライヴ盤を発表!! - CDJournal CDJ PUSH”. 2019年7月30日閲覧。
  9. ^ 写真家・荒木さんで出演
  10. ^ JAZZDOMMUNISTERS - naruyoshi kikuchi INTERNET TROISIEME
  11. ^ 宇多田「ペプシネックス」CMソングは菊地成孔プロデュース”. ナタリー (2010年10月1日). 2019年11月1日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集