公立諏訪東京理科大学

日本の長野県茅野市に本部を置く公立大学
諏訪東京理科大学から転送)

公立諏訪東京理科大学(こうりつすわとうきょうりかだいがく、英語: Suwa University of Science, SUS)は、長野県茅野市豊平5000番地1に本部を置く日本公立大学1990年創立、2002年大学設置。大学の略称諏訪理科大諏訪東理大諏訪理科

公立諏訪東京理科大学
正門及び7号館 (左)・8号館 (右)
大学設置 2002年
創立 1990年
学校種別 公立
設置者 公立大学法人公立諏訪東京理科大学
本部所在地 長野県茅野市豊平5000番地1
北緯36度0分29.8秒 東経138度10分54.8秒 / 北緯36.008278度 東経138.181889度 / 36.008278; 138.181889座標: 北緯36度0分29.8秒 東経138度10分54.8秒 / 北緯36.008278度 東経138.181889度 / 36.008278; 138.181889
学生数 1,342
キャンパス 豊平キャンパス
学部 工学部
研究科 工学・マネジメント研究科
ウェブサイト 公立諏訪東京理科大学公式サイト
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概観 編集

大学全体 編集

諏訪地域6市町村(岡谷市諏訪市茅野市諏訪郡下諏訪町富士見町原村)が大学誘致を目的として学校法人東京理科大学と提携し、公私協力方式によって1990年に東京理科大学諏訪短期大学が開学。その後、2002年に短期大学から大学に転換して諏訪東京理科大学に移行し、2018年には現行の公立大学に移行した。

公立諏訪東京理科大学の所在地は茅野市であるが、大学名に「諏訪」と表記されるのは、茅野市は諏訪地域6市町村の一つであるため。同様に、諏訪市になくとも名称に「諏訪」を冠するのは、諏訪中央病院などの事例がある。

建学の精神 編集

理学の普及を以て国運発展の基礎とする -これは東京理科大学の建学の精神であるが、前身が東京理科大学の系列校であったことから、公立化以後もこの建学の精神を継承している[1]

沿革 編集

年表 編集

  • 1990年4月 - 東京理科大学諏訪短期大学を開設する。
  • 2002年4月 - 諏訪東京理科大学へ改組転換する。システム工学部(電子システム工学科、機械システムデザイン工学科)、経営情報学部(経営情報学科)。
  • 2006年4月 - 諏訪東京理科大学大学院を開設する。工学・マネジメント研究科(工学・マネジメント専攻)修士課程。
  • 2009年4月 - 機械システムデザイン工学科を機械システム工学科に名称変更。
  • 2012年4月 - 大学院に博士後期課程設置。
  • 2014年4月 - システム工学部電子システム工学科、機械システム工学科を工学部機械工学科、電気電子工学科、コンピュータメディア工学科に、それぞれ改組する。
  • 2017年11月 - 長野県知事から諏訪広域公立大学事務組合に対して公立大学法人公立諏訪東京理科大学の設立が認可され、また、文部科学大臣から学校法人東京理科大学に対して、諏訪東京理科大学の同公立大学法人への設置者変更に係る認可がされる[2]
  • 2018年4月 - 諏訪地域6市町村(岡谷市諏訪市茅野市下諏訪町富士見町原村)で構成する諏訪広域公立大学事務組合が公立大学法人公立諏訪東京理科大学を設立し「公立諏訪東京理科大学」へ移行。工学部と経営情報学部の2学部5学科を、工学部情報応用工学科と機械電気工学科の1学部2学科に改組する。

公立化への動き 編集

諏訪東京理科大学の設置者である学校法人東京理科大学(以下、学校法人)は、2014年初に東京理科大学山口東京理科大学・諏訪東京理科大学の組織改革を打ち出し、入学者数が定員割れを続けていた山口東京理科大学については、公立大学法人化を立地自治体の山陽小野田市と協議し、2016年の公立大学法人化を12月に合意[3]した。

長野県は長野県短期大学を2018年4月に4年制大学化する準備を進め、県内の私立長野大学は2014年3月に上田市公立大学法人化を求める要望書を提出するなど、長野県内は大学改革が活発化していた。学校法人は2014年4月に、入学者数が定員割れを続ける諏訪東京理科大学を公立大学法人化する方針を示し、2015年9月に茅野市へ公立大学法人化を求める要望書を提出した[4]。諏訪東京理科大学は地元自治体の誘致(公設民営大学)と協力(公私協力方式)によって開学した短期大学を前身としていたが、2006年度以降入学者数の定員割れが続き、2015年度の入学者は定員300人に対し214人であった。財務面も厳しさを増し、2014年度末の累積赤字は約16億円であった。少子化と学生定員割れで今後の大学運営は厳しいと判断した。公立化により総務省から運営交付金が受けられ、設置主体の地方自治体地方交付税交付金が配分されるが、これらの収入が私学助成金を上回り、授業料を他の国公立大並みに引き下げられると判断した。学生・父母保証人の負担を軽減し、学生数を確保するとともに、地域の高等教育機関の維持と活性化を図った。

茅野市は県に公立化に向けた協議への参加を求め、阿部守一知事は長野県議会9月定例会において「高等教育の振興を重視する立場から、県としても積極的に協議に参加する」と表明し、公立化に対し積極的な姿勢を示した[5]。県立大学化を想定していた学校法人側に、阿部知事は翌10月に「県立移行は困難」との認識を示した。学校法人と茅野市は、諏訪東京理科大学の設置者について、諏訪地域6市町村が設立する一部事務組合が新たに設立する公立大学法人に変更する方向で、運営の支援を県に求めることとし、諏訪広域連合各自治体からも前向きな姿勢が示された[6]。公立移行後も本校の東京理科大学との連携は維持、また学校法人側からは公立移行時に合わせて学部学科を再編し、工業系単科大学に改組する構想も示された。長野県の「大学収容力」(その都道府県の18歳人口に占める県内大学への入学者の割合)は長年全国最低であり、2016年度には16.5%であった。県にとっては若年層の県外流出を防止するため、県内高校卒業者の県内大学進学率を上げることが喫緊の課題となっていた。特に長野県内の大学には理工系学部学科が少ないため、県内の理工系学生の県内大学進学の道を広げ、地域社会に貢献する目的もあり[7][8][9]、実際、地域密着型の工業大学として長野県駒ヶ根工業高等学校長野県岡谷工業高等学校と高大連携協定を締結するなどしていた。
2017年11月24日に長野県知事から、諏訪広域公立大学事務組合を設立団体とする公立大学法人公立諏訪東京理科大学の設立が認可され[10]文部科学大臣からも、同日、諏訪東京理科大学の設置者変更が認可されて、2018年4月、諏訪東京理科大学は公立大学に移行した。

基礎データ 編集

所在地 編集

長野県茅野市豊平5000番地1

キャンパス 編集

豊平キャンパス

大学ランキング 編集

Times higher educationが公表するTHE世界大学ランキングにおいて、2021年版では、「Japan University Rankings 2021」201+、「Impact Rankings 2021」1001+となっている[11]

校章・ロゴマーク 編集

公立化に伴い、校章及びロゴマークを新たに制作した。

校章 編集

校章のコンセプトは6つの頂点と3つのリングと中心に「諏理大」の文字により構成している。6つの頂点は諏訪地域6市町村を表し、3つのリングは当大学の柱となる「情報」・「機械電気」・「経営」の分野を表し、それらがクロスすることで分野を超えた「融合」を表現している。

ロゴマーク 編集

ロゴマークのコンセプトはSuwaの「S」とScienceの「S」の2つの「S」をイメージモチーフとしている。また、デザインは諏訪地域から自分の将来を切り開き、世界へ羽ばたいていくイメージを表現している。さらに、シャープさを伴わせることにより、先進性や次世代へのイノベーションを表現している。加えて、若草色の「新しい風」が中心に向かって吹き込むことで、伝統と革新の融合を表しながら、様々な人々が当大学を起点に連携していくイメージを表現している。

教育および研究 編集

組織 編集

学部 編集

  • 工学部
    • 情報応用工学科
      • 知能・情報・通信コース
      • 社会情報システムコース
    • 機械電気工学科
      • 先進機械コース
      • 電気電子コース

大学院 編集

研究・開発 編集

・工学部機械電気工学科の星野祐教授が玉型車輪の「オムニライド」[12]を開発した。オムニライドは重心を傾けることで方向転換し、上り坂や下り坂でも姿勢が水平のまま動く次世代型の乗り物である。

・「スワリカブランド」と呼ばれる創造事業がある。スワリカブランドは産学公(官)が連携して地域課題を解決することを目指す事業である。 主力事業は、小林誠司特任教授が研究開発している無線通信技術(LPWA)を使い、登山者や認知症患者の位置追跡、鹿罠通知システム、河川や溜池の水位計、農業や畜産業における温湿度計の通知システム[13]である。

大学関係者と組織 編集

大学関係者 編集

理事長 編集

学長 編集

私立大学時代

公立化後

教授 編集

卒業生 編集

  • ねもよし - お笑い芸人ゆめまなこ
  • 寺沢功希 - 長野県議会議員

大学組織 編集

同窓会 編集

短期大学・私立大学時代は母体法人の学校法人東京理科大学の同窓会である理窓会に加盟していたが、公立化後は新たな同窓会を設置した。しかし、現在は活動していない。

サークル・部活動 編集

大学内におけるサークル・部活動の数は、体育会系が16団体、文化系が21団体となっている。

学生会 編集

前身の学園生活応援団から2014年に学生会として発足した。学生が主体となり運営し、学生がより良い大学生活を送れることを目的として活動している。活動内容は、スポーツ大会、バーベキュー大会、大学祭への出店、スキー教室、eスポーツ大会など年間を通して様々なイベントを企画運営している[14]

学生生活 編集

大学祭 編集

11月に「新風祭」と呼ばれる大学祭が開催される。運営団体は新風祭実行委員会である。過去の新風祭のスペシャルゲストはお笑い芸人のトム・ブラウン、声優の柿原徹也などが招待された。

学生支援 編集

公立諏訪理大生応援プロジェクト —公立諏訪東京理科大生が諏訪地域の商業施設で商品やサービスを消費することで、諏訪地域の経済を活性化させることを目的としている[15]。学生は商品やサービスの割引や特典を受けることができ、商業施設は学生の来店数が増えるため、両者ともにメリットがある。飲食店、理容・美容室、公衆浴場、写真館など幅広い商業施設が加盟している。

施設 編集

キャンパス 編集

エリア放送 編集

長野県2番目[16]エリア放送地上一般放送局の免許を取得し、諏訪東京理科大学エリア放送[17]の名称でワンセグ放送を実施していたが、2021年(令和3年)12月に廃止[18]した。

構内に地上一般放送局1局が設置[19] されていた。

免許人 局名 呼出符号 物理チャンネル 周波数 空中線電力 ERP
学校法人
東京理科大学
諏訪東京理科大学エリア放送 JOXZ4AE-AREA 29ch 569.142857MHz 10mW 760μW

対外関係 編集

海外協定校 編集

国内協定校 編集

姉妹校 編集

高大連携協定校 編集

研究機関との協定 編集

地方自治体との連携 編集

大学発ベンチャー企業 編集

2022年4月に大学発ベンチャーに関する規定を整備し、学内発ベンチャーの支援を開始した。同年6月に当大学発ベンチャー企業第1号が認定され[20]、同年7月に第2号が認定された[21]。さらに、2024年に3社目が設立された[22]

備考 編集

  • 長野県の国公立大学・私立大学において、唯一の工学系大学である。
  • 公立諏訪東京理科大学の標高はおよそ900mであり、国公立大学では最も高く、大学全体では健康科学大学に次いで2番目に高い。大学がある茅野市の標高はおよそ800m、隣の諏訪市の標高はおよそ750mであり、大学周辺も標高の高い地形となっている。
  • 2018年4月、公立化に伴う学名変更により、6号館正面玄関前に新たな校名碑を設置した。校名碑の揮ごうは系列校であった東京理科大学の卒業生の武田双雲氏によるものである[23]
  • 日向坂46のデビューシングル『キュン』のミュージックビデオの撮影は、公立諏訪東京理科大学の大階段上広場や大教室、学内階段や渡り廊下などキャンパス内で撮影が行われた[24]

脚注 編集

  1. ^ 東京理科大学との連携”. 公立諏訪東京理科大学. 2022年6月24日閲覧。
  2. ^ “長野県知事より公立大学法人公立諏訪東京理科大学の設立認可書が交付されました”. 諏訪東京理科大学. (2017年11月24日). オリジナルの2020年8月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200814045255/https://www.sus.ac.jp/topics/20171124-1/ 
  3. ^ 山口東京理科大、公立化で合意 山陽小野田市と学校法人2014年12月21日 朝日新聞
  4. ^ 諏訪東京理科大学の公立化検討を茅野市に要望2015年9月28日 長野日報
  5. ^ 諏訪東京理科大の公立化、長野知事「積極的に協議参加」2015年9月30日 産経新聞
  6. ^ 諏訪東京理科大:公立化へ茅野市に要望 市長、協議始める考え /長野[リンク切れ]2015年10月2日 毎日新聞長野版
  7. ^ 特集 : 岐路に立つ諏訪東京理科大 公立化検討の波紋-上 - ウェイバックマシン(2015年10月17日アーカイブ分)2015年10月9日 長野日報
  8. ^ 特集 : 岐路に立つ諏訪東京理科大 公立化検討の波紋-中 - ウェイバックマシン(2015年10月17日アーカイブ分)2015年10月10日 長野日報
  9. ^ 特集 : 岐路に立つ諏訪東京理科大 公立化検討の波紋-下 - ウェイバックマシン(2015年10月17日アーカイブ分)2015年10月11日 長野日報
  10. ^ 長野県など、諏訪東京理科大の公立化を認可 - ウェイバックマシン(2017年12月1日アーカイブ分)
  11. ^ 公立諏訪東京理科大学プロフィール|THE世界大学ランキング 日本版”. THE世界大学ランキング 日本版. 2022年6月24日閲覧。
  12. ^ 本学で開発した「オムニライド」が日本テレビ「シューイチ」で紹介されます(2/23放送予定)”. 公立諏訪東京理科大学. 2023年2月14日閲覧。
  13. ^ 産学公連携スワリカブランド創造事業”. www.sus.ac.jp. 2022年6月24日閲覧。
  14. ^ 公立諏訪東京理科大学 学生会ホームページ”. suwarikastud.wp.xdomain.jp (2021年1月7日). 2023年10月6日閲覧。
  15. ^ 『公立諏訪理大生応援プロジェクト』特設サイトをオープンしました”. 公立諏訪東京理科大学 (2021年3月8日). 2023年2月16日閲覧。
  16. ^ エリア放送を行う地上一般放送局への予備免許 −長野県内2番目 諏訪東京理科大 構内を放送区域−(信越総合通信局 報道資料 平成26年3月10日)(2014年4月2日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  17. ^ 諏訪東京理科大学エリア放送 (@suwaseg) - Twitter - ウェイバックマシン(2022年2月3日アーカイブ分)
  18. ^ 無線局統計情報(総務省電波利用ホームページ - 免許関係 - 検索・統計)の2021年11月末と12月末の信越総合通信局管内の地上一般放送局の局数の比較 による。
  19. ^ エリア放送を行う地上一般放送局の免許状況(詳細)(信越総合通信局 - エリア放送制度)(2014年5月10日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  20. ^ 本学学内発ベンチャー第1号として「カナルウォーター株式会社」が認定されました”. 公立諏訪東京理科大学 (2022年6月24日). 2023年2月14日閲覧。
  21. ^ 本学学内発ベンチャーとして「36ICT株式会社」が認定されました”. 公立諏訪東京理科大学 (2022年7月4日). 2023年2月14日閲覧。
  22. ^ 諏理大発ベンチャー 佐々木さん茅野で創業 – Nagano Nippo Web”. www.nagano-np.co.jp. 2024年1月23日閲覧。
  23. ^ 校名碑の除幕式を執り行いました”. 公立諏訪東京理科大学 (2018年4月17日). 2023年10月6日閲覧。
  24. ^ ミュージックビデオの撮影に協力しました 公立諏訪東京理科大学 19/04/05

関連項目 編集

外部リンク 編集