謝罪風の謝罪(しゃざいふうのしゃざい、英語: Non-apology apology、ノンアポロジーアポロジー、ほかにnonpology, backhanded apology, or fauxpology,[1][2] など)とは、形だけの謝罪になっていない謝罪。または、期待された自責を伴わない形での謝罪の手法。謝罪になっていない謝罪[3]、nonpology、backhanded apology、ともいわれる。一般的に「気分を害した可能性のある人」への謝罪[4]。日本語では「ご不快構文」と呼ばれることもある[5][6]

概要 編集

一般的な謝罪が何かをしてしまったという行為や起きた現象そのものに対して自らの責任を伴う形で行われるのに対して、「謝罪風の謝罪」ではその行為そのものではなく「気分を害した可能性のある人」への謝罪にすり替えて謝罪をする。

このため謝罪する相手の気持ちの受け取り方の問題に責任を転嫁しており、これは謝罪ではないという批判が国内外から起こっている[7]。また謝罪する相手が何らかの被害者だった場合、「謝罪風の謝罪」によって二次被害を生んでいる可能性もあり[8]、この謝罪手法が果たしてどういった効果があるのかは不明である。「謝罪風の謝罪」は逆効果になっているのではという指摘もある[9]

この言葉は元々、北米の法体系に由来するものである。法律上の決着がつくまでの謝罪は何らかの法的責任も伴わないが、その場の状況を寛解し、民事訴訟を回避する役割がある。したがって、単なる謝罪が法廷上で謝罪者の過失の証拠として認められない。例えば、医師薬物副作用について患者に謝罪することはよくあるが、法廷上で「医者の謝罪」を医療過誤の証拠として認められない[10][11]

日本でも不祥事や差別発言を問題視された政治家や行政の間で「謝らない謝罪」が横行していると指摘されている[12]

使われ方 編集

日本で使われている「謝罪風の謝罪」は「不快な思いにさせてすいません」「誤解させてしまって申し訳ない」「~と感じさせてしまったことをお詫び申し上げます」などという形式でつかわれる事が多い[12][13][14][15][16]

類似の手法 編集

ミスを自分のせいではないかのように言うMistakes were made[17]や、条件付きでもし~であれば申し訳ないというIfpologyなどがある[要出典]

法的意義 編集

アメリカ 編集

判例法主義を採用し訴訟大国でもあるアメリカでは通常の謝罪が法的に不利になってしまうため、謝罪ができないままに訴訟へと発展してしまう問題が生まれている。 これを解決するためにアメリカのマサチューセッツ州では人道的な衝動から発せられる思いやりや共感の感覚を伝える「慈悲深いジェスチャー」を保護するための法律(通称:アイムソーリー法 1986年)が作られ、 その後カリフォルニア州などのアメリカの複数の州では類似の法律が制定されている[18][19]

カナダ 編集

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  • 「ミスがあった」
  • Ifpology
  • 他のバージョン
  • 皮肉な例

戦術として 編集

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ Mark Leigh (2016). How to Talk Teen: From Asshat to Zup, the Totes Awesome Dictionary of Teenage Slang. Little, Brown Book Group. pp. 170–171. ISBN 978-1-4721-3745-6. https://books.google.com/?id=f-oaDAAAQBAJ&pg=PT170 
  2. ^ Susan Milligan (2016年5月17日). “Non-Pology: Sanders Condemns Violence, but Not His Supporters”. U.S. News & World Report. https://www.usnews.com/news/articles/2016-05-17/non-pology-bernie-sanders-condemns-general-violence-but-not-his-supporters 
  3. ^ 豪雨災害中に自民党宴会、謝罪文の酷さを可視化してみた - エキサイトニュース
  4. ^ Doucette, Elisa (2014年11月30日). “The Art Of Online Apologies And Why Elizabeth Lauten Failed Miserably At Hers”. Forbes. https://www.forbes.com/sites/elisadoucette/2014/11/30/the-art-of-apologies-and-why-elizabeth-lauten-failed-miserably-at-hers/ 2014年12月1日閲覧。 
  5. ^ “同性愛者を侮辱“する投稿で物議。東急ハンズの見解は?過去にも、性的マイノリティ差別的な投稿をしていた”. ハフポスト (2022年6月15日). 2022年6月16日閲覧。
  6. ^ 「ご不快な思いをさせて申し訳ありません」…炎上企業はなぜ「ご不快構文」で火に油を注ぐのか? ジャーナリストに聞いてみた”. 日刊サイゾー (2021年5月12日). 2022年6月16日閲覧。
  7. ^ The Perfect Non-Apology Apology By Bruce Mccall”. The New York Times (2001年4月22日). 2020年10月7日閲覧。
  8. ^ 「謝罪になっていない」「被害者貶める」杉田水脈議員に抗議 東京でフラワーデモ”. 毎日新聞 (2020年10月3日). 2020年10月7日閲覧。
  9. ^ 「不快な思いをさせて申し訳ございません」は謝罪ではない”. HuffPost Japan (2016年5月12日). 2020年10月7日閲覧。
  10. ^ Bartolomei. “Apologies in the World of Litigation”. Hill, Adams, Hall & Scheiffelin, P.A.. 2006年6月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年2月26日閲覧。
  11. ^ Curial (2010年6月3日). “I'm Sorry (Please Don't Sue Me)”. Miller Thomson. 2014年2月26日閲覧。
  12. ^ a b 「謝らない謝罪」が日本で蔓延している”. ニューズウィーク (2021年7月28日). 2021年7月28日閲覧。
  13. ^ 杉田水脈氏発言「誤解招く」萩生田文科相が批判”. 日刊スポーツ (2020年10月2日). 2020年10月7日閲覧。
  14. ^ 「学術会議で働いたら学士院へ行き、年金250万円もらえる」は誤り。学士院「全くない」と強調 フジテレビ『バイキングMORE』でフジテレビ上席解説委員の平井文夫氏が解説。翌日、「誤解を与えた」と別番組で釈明した。”. HuffPost Japan (2020年10月6日). 2020年10月7日閲覧。
  15. ^ 「足立区滅びる」LGBT問題発言の白石区議を自民と区議会が厳重注意”. 東京新聞 (2020年10月6日). 2020年10月7日閲覧。
  16. ^ 「不快な思いをさせて申し訳ございません」は謝罪ではない”. ハフポスト (2016年5月12日). 2022年6月16日閲覧。
  17. ^ Mistakes were made Hotel quarantine failures went deeper than the Victorian health minister”. themonthly (2020年9月28日). 2020年10月7日閲覧。
  18. ^ マサチューセッツ州 GeneralLaws PartIII TitleII Chapter233 Section23D”. 2020年11月15日閲覧。
  19. ^ 謝罪と「アイムソーリー法」の研究”. 2020年10月15日閲覧。

参考文献 編集

  • Harriet Lerner (2018). Why Won't You Apologize? Healing Big Betrayals and Everyday Hurts. ISBN 978-0715652640