買い物依存症(かいものいそんしょう、かいものいぞんしょう)、買い物嗜癖(かいものしへき)は「行動嗜癖」と称される反復性行動のひとつである[1]

現時点では買い物嗜癖を精神疾患として認めるためのエビデンスが不足しており、DSM-5では診断名は記載されておらず、嗜癖性障害群からも除外されている[2]

ICD-10においても買い物依存(買い物嗜癖)についての記述は存在しない[3]

以上のように、現時点ではDSM-5およびICD-10において買い物嗜癖は精神疾患として記載されていない点に注意が必要である。

日本では1992年に登場したキャロリン・ウェッソン著、斎藤学訳の『買い物しすぎる女たち』(原題『Women Who Shop Too Much』)などによって知られていった。

概要 編集

自身にとって不必要、あるいはすでに同様の物を所持しているにもかかわらず多数の物品を購入してしまうという症状。同じものを買うという傾向もあることから記憶の散漫、認知症の発症も要因として視野に入れられている。

買い物依存症の主な原因としてはストレスが挙げられており、イライラしたり不機嫌になる毎にデパートなどに行き買い物をし、物質的に満たされるという快楽を得ることで心を癒している。

比較的女性の方が買い物依存症に陥る傾向が高い。対して男性の場合は同様のストレス解消の手段としてギャンブルを行っており、その症状はギャンブル依存症(病的賭博、ギャンブル障害)と呼ばれている。男性の場合、車・骨董品・腕時計や愛人へのプレゼントで散財しやすい。また日本では、主婦のパチンコ依存も問題になっている。

自身の経済力を省みずにブランド品や高級品を購入してしまいカード破産やローン破産に陥ってしまったという事例も存在する。

英語では「CBD」(Compulsive Buying Disorder)と呼ばれ、アメリカ合衆国の全人口のうち、約6%が買い物依存症であるという[4]。アメリカは、現金決済や即時払いの電子マネーが主流の日本と異なり、後払いのクレジットカード決済が広く浸透しているため、買い物依存症患者の増加に一役買っているとされる。

治療 編集

認知行動療法とパーソン中心/体験過程療法の有用性が示されている[5]

関連作品 編集

脚注 編集

  1. ^ アメリカ精神医学会『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』473頁 16章「物質関連障害および嗜癖性障害群」。日本語版用語監修:日本精神神経学会、監訳:高橋三郎・大野裕、訳:染矢俊幸・神庭重信・尾崎紀夫・三村將・村井俊哉。、医学書院、2014年6月15日。ISBN 978-4260019071 
  2. ^ アメリカ精神医学会『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』473頁, 578-582頁 16章「物質関連障害および嗜癖性障害群」。日本語版用語監修:日本精神神経学会、監訳:高橋三郎・大野裕、訳:染矢俊幸・神庭重信・尾崎紀夫・三村將・村井俊哉。、医学書院、2014年6月15日。ISBN 978-4260019071 
  3. ^ WHO『ICD-10 精神および行動の障害-臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』221-224頁「F63 習慣および衝動の障害」 監訳・融道男・中根允文・小見山実・岡崎祐士・大久保善朗。、医学書院、2005年11月15日。ISBN 978-4260001335 
  4. ^ What is Compulsive Shopping Disorder?about.com
  5. ^ 大坪天平 (2023). “強迫買い物症―その臨床的特徴と医学的治療―”. 精神科治療学 38 (増刊号): 314-319. 
  6. ^ 私の中の誰か 買い物依存症の女たち コトバンク

関連項目 編集

外部リンク 編集