軍種

主権国家の武力の細分化

軍種(ぐんしゅ)とは、軍隊内における最大の種類区分。一般的には、陸軍海軍空軍、内陸国では陸軍空軍の2ないし3軍種で構成する国家が多い。また、防空任務を専門に行う防空軍を加える場合や、宇宙分野を担当する宇宙軍などを加える国家も存在する。

概要 編集

軍種は、担当領域や機能、指揮・命令、戦力整備等の都合上、軍隊内に設けられた最上位の部局・区分である。

伝統的に陸軍と海軍の2軍種での構成が基本的であったが、航空機の技術的発達に伴い、陸海軍の一部隊として存在する「航空隊」が母体となって「空軍」が誕生。それにより、陸軍・海軍・空軍の3軍種での構成が基本的になった。かつてのソビエト連邦には、空軍の他に防空目的の防空軍が置かれており、旧東側諸国でも防空軍の編制が見られた。

また、技術進化や人工衛星の利用促進と重要度の増加に伴い、「宇宙軍」なども近年設立されてきている。国家憲兵を独立の軍種としている国もある。テロリストや敵国とのサイバー戦争に備えるためにサイバー軍を独立軍種として新設する動きもある。

現代戦における作戦行動の際には、軍種別では弊害が生じる場合があるため、複数の軍種により編成された統合軍・統合部隊による統合作戦が行われるのが一般的となっている。

各国の軍種 編集

アメリカ軍では、アメリカ陸軍アメリカ海軍アメリカ空軍の一般的な3軍種に加え、アメリカ海兵隊アメリカ沿岸警備隊アメリカ宇宙軍が加わる6軍種で構成されている。

ロシア連邦軍での軍種(виды Вооруженных Сил)は、ロシア陸軍ロシア海軍ロシア航空宇宙軍の3軍種に加えてミサイル攻撃を担うロシア戦略ロケット軍空挺部隊からなるロシア空挺軍の2独立兵科(рода войск)からなっている。

中国人民解放軍での軍種は、陸軍海軍空軍ロケット軍戦略支援部隊の5種からなる。

ドイツ連邦軍では、各軍に共通する指揮・兵站・通信・憲兵・教育を統合して戦力基盤軍を作り、医療部隊を統合して救護業務軍を設置している。さらに、2016年にはサイバー戦用のサイバー情報空間軍英語版ドイツ語版を設置した。

フランス軍では、空軍内に宇宙司令部を編成し、航空宇宙軍と改称した。

カナダ軍は、軍種を全て廃止して単一軍種とし、統合軍として編成している。

各国の軍種の例
主な担当領域 航空 海兵 宇宙 弾道ミサイル 国家憲兵 国境沿岸警備 支援 その他 備考
日本 陸上自衛隊 海上自衛隊 航空自衛隊
アメリカ合衆国 陸軍 海軍 空軍 海兵隊 宇宙軍 沿岸警備隊
ロシア 陸軍 海軍 航空宇宙軍 戦略ロケット軍 空挺軍 宇宙軍防空軍を編制していた時期あり
中華人民共和国 陸軍 海軍 空軍 ロケット軍 戦略支援部隊
フランス 陸軍 海軍 空軍 国家憲兵隊
イギリス 陸軍 海軍 空軍
イタリア 陸軍 海軍 空軍 カラビニエリ
ドイツ 陸軍 海軍 空軍 戦力基盤軍 救護業務軍サイバー情報空間軍英語版ドイツ語版
オランダ 陸軍 海軍 空軍 王立保安隊