農業地理学(のうぎょうちりがく、英語:agricultural geography)は、農業全般に関する地域的事象を扱う人文地理学の一分野である。経済地理学の一分野とみなされることも多い。農業地理学が明確化されたのは、1911年地理学者のクルチモフスキーの「農業の空間的分布、構成と地域的条件を解明する分野」という定義によってである。この分野は長らく、農業活動の差異は自然環境の差異によって説明される、という環境決定論の色彩を帯びていたが、1930年代アメリカ合衆国において見直す動きが始まり、第二次世界大戦後にはヨーロッパでも決定論から脱した[1]。さらに農業技術の進歩と貿易の自由化によって、様々な農産品が世界中に普及するようになり農業地理学のテーマも多様になった。近年では、グローバル化の影響と発展途上国における食料難の問題も相まって、フードシステム[2]アグリビジネス[3]など国際的な分析視角を取り入れることが不可欠になっている。分野の性質上、農業を営む集落である農村を扱う農村地理学との重複も多い。よって農業に対する知識だけでなく、農村社会や過疎化の問題などに対する関心も必要となる。

ホイットルセーの農業地域区分図
黄色)遊牧、桃色)企業的放牧(企業的牧畜)、
茶色)移動農業(焼畑農業)、紫色)初期定着農業(粗放的定住農業)、緑色)集約的自給的稲作農業(アジア式稲作農業)、アクアマリン)集約的自給的畑作農業(アジア式畑作農業)、オリーブ色)自給的混合農業黄緑色)商業的混合農業、
空色)商業的酪農(酪農)、オレンジ色地中海式農業薄橙色)商業的穀物農業(企業的穀物農業)、赤色)商業的プランテーション(プランテーション農業)、マゼンタ)特殊園芸農業(園芸農業)、
灰色)非農業地域(林業を含む。)

脚注 編集

  1. ^ グリッグ(1998、p.6)による。
  2. ^ 高柳 (2006) による。
  3. ^ 後藤 (2013) による。

参考文献 編集

関連項目 編集