雲ノ平

富山県富山市にある溶岩台地

雲ノ平(くものたいら)は、富山県富山市有峰飛騨山脈(北アルプス)黒部川源流部に位置するなだらかな溶岩台地中部山岳国立公園内にあり、山域はその特別保護地区になっている[1]。別名は、奥ノ平。

雲ノ平を南から望む。右端が祖父岳、後方は薬師岳三俣蓮華岳から撮影。
雲ノ平の位置(富山県内)
雲ノ平
雲ノ平の位置

概要 編集

黒部川とその支流である岩苔小谷に挟まれた標高2,500 - 2,700 mの日本で最も高い位置にある溶岩台地で、祖父岳火山 2,825 m) により形成された。面積は25万平方メートル。池塘と岩が点在する高山植物の宝庫であり、それぞれ○○庭園と名付けられた区域がある。北アルプスの最深部に位置するため、どの登山口からでも当日中にたどり着くことが困難であり、「日本最後の秘境」と呼ばれる[2]。上部は森林限界ハイマツ帯で、祖母岳や庭園の一部に木道やベンチが設置されている。

黒部川源流部にあたる地点には「黒部川水源地標」の碑がある[3]

富山市有峰雲の平は日本郵便から交通困難地の指定を受けているため、地外から当地宛に郵便物を送付することは出来ない[4]

雲ノ平の庭園 編集

 
スイス庭園

雲ノ平にある高山植物の群落地には、以下のような8つの名称が付けられている[2]

  • 日本庭園 - 祖父岳の南山腹の第1雪田と第2雪田の間にある
  • スイス庭園- キャンプ指定地のすぐ北側、木道が設置され周囲に池塘と岩が点在、間近に水晶岳が望める
  • ギリシャ庭園 - 雲ノ平山荘周辺
  • 奥スイス庭園 - コロナ観測所の北側
  • アルプス庭園 - 祖母岳山頂部(ベンチが設置されている)にあり、雲ノ平山荘からの木道がある
  • 奥日本庭園 - 祖父岳の北側の薬師沢方面の登山道上で、ハイマツ帯に池塘が点在する
  • アラスカ庭園 - 西端、シラビソ林がありアラスカを思わせる
  • 祖父庭園 - 祖父岳の北西の登山道分岐点、溶岩が多い

雲ノ平の高山植物 編集

雲ノ平で見られる主な高山植物は以下である[5]

イワイチョウ コバイケイソウ ハクサンイチゲ ハクサンフウロ ワタスゲ
         

登山 編集

登山ルート 編集

飛騨山脈の最深部に位置し、周辺には植物保護のため木道などによる登山道が整備され、各方面からの多数の登山ルートがある。以下が雲ノ平山荘までの一例である[2][6]折立からのルートが最短ルートである[7]。かつて最短ルートとされた伊藤新道は廃道となっている[8]

  • 折立より:折立 - 太郎平小屋 - 薬師沢小屋 - アラスカ庭園 - 雲ノ平山荘
※薬師沢小屋から黒部川沿いを下り高天原峠を経由する大東新道もある。
※岩苔乗越からは、黒部川本流の最上流部を通り、祖父岳の南側山腹を通る巻道がある。鷲羽岳へは、黒部ダム方面から赤牛岳を経由する読売新道(読売新聞の事業として、1961年(昭和36年)10月に開設されたルート)の入山ルートもある。
※笠新道の代わりに小池新道のルートもある。双六岳の東側山腹を巻くルートもある。
  • 西鎌尾根槍ヶ岳 - (西鎌尾根) - 樅沢岳 - 双六小屋 - 双六岳 - 三俣蓮華岳 - 三俣山荘 - 鷲羽岳
槍ヶ岳へは、中房温泉からの表銀座上高地や新穂高温泉などからの入山経路がある。

雲ノ平山荘 編集

 
雲ノ平山荘

雲ノ平山荘は、1961年に三俣山荘の経営者であった伊藤正一が建築した山荘である。初代の山荘は老朽化のため2009年に取り壊され、現在の山荘は2010年に建設された二代目である。定員70名[9][10]。雲ノ平のほぼ中央の高台に位置する。700 mほど東方に、キャンプ指定地(テント約50張り、給水施設あり)がある[11]。その北側の標高点 (2,576 m) のピーク直下南東には無人の太陽コロナ観測所がある[2]

周辺の山小屋 編集

周辺には以下の山小屋がある[6]

名称 所在地 標高
m
収容
人数
キャンプ
指定地
備考
雲ノ平山荘 雲ノ平・ギリシャ庭園 2,550 70人 50張
三俣山荘 鷲羽岳と三俣蓮華岳との鞍部 2,550 70人 70張
水晶小屋 裏銀座縦走路の水晶岳への分岐 2,900 30人 なし 赤岳山頂直下の北側
薬師沢小屋 黒部川本流の薬師沢出合 1,940 60人 なし
高天原山荘 高天原・岩苔小谷右岸 2,050 50人 なし 北側に高天原温泉がある。

雲ノ平の風景 編集

周辺の山 編集

  • 祖父岳じいだけ(雲ノ平南東端にある)
  • 祖母岳ばあだけ(雲ノ平内にある・アルプス庭園)
  • 水晶岳
  • 鷲羽岳
  • 三俣蓮華岳
  • 黒部五郎岳
  • 薬師岳

テレビ番組 編集

2009年9月23日放送のNHK総合テレビジョン特別番組『夏の北アルプス あぁ絶景!雲上のアドベンチャー』では、登山家田部井淳子とアナウンサーの内多勝康立山から穂高岳へのジャンダルム縦走登山を行い2009年8月3日と4日に雲ノ平山荘に宿泊し、雲ノ平を歩く様子が紹介された[12][13]

脚注 編集

  1. ^ 中部山岳国立公園区域の概要 環境省、2011年1月9日閲覧。
  2. ^ a b c d 『ヤマケイ アルペンガイド 上高地・槍・穂高』山と渓谷社、pp.248-269, ISBN 4-635-01319-7
  3. ^ 雲ノ平山荘方面 三俣山荘-黒部源流-雲ノ平山荘”. 三俣山荘 大町事務室. 2023年8月20日閲覧。
  4. ^ 別冊(内国郵便約款第79条及び第97条関係) 交通困難地・速達取扱地域外一覧”. 日本郵便 (2022年2月21日). 2022年5月1日閲覧。
  5. ^ 花の山旅⑥ 槍ヶ岳・雲ノ平』山と渓谷社、2000年、pp.90-91, ISBN 4-635-01406-1
  6. ^ a b 『剱・立山 (山と高原地図 36) 』昭文社、2010年、ISBN 978-4-398-75716-6
  7. ^ NHKデジタル衛星ハイビジョンのテレビ番組『週刊 日本の名峰 黒部源流 鷲羽岳』で、鷲羽岳への登頂ルート上の雲ノ平が紹介された。NHKアーカイブス保存番組詳細 NHK, 2011年1月9日閲覧。
  8. ^ 『新日本山岳誌』日本山岳会(編)、ナカニシヤ出版、2005年、p.925, ISBN 4-779-50000-1
  9. ^ 雲ノ平 特集 | 特集 | 北アルプス黒部源流 | 三俣山荘・雲ノ平山荘・水晶小屋
  10. ^ 『北アルプス山小屋物語』東京新聞出版局、1995年、pp.211-218, ISBN 4-8083-0374-4
  11. ^ 雲ノ平山荘の紹介 黒部源流雲ノ平 三俣山荘・雲ノ平山荘・水晶小屋・湯俣山荘公式サイト、2011年1月9日閲覧。
  12. ^ NHKアーカイブス保存番組詳細 NHK, 2011年1月9日閲覧。
  13. ^ 北アルプス縦走 NHK名古屋放送局金とく』、2011年1月9日閲覧

関連項目 編集

外部リンク 編集

座標: 北緯36度25分20秒 東経137度34分30秒 / 北緯36.42222度 東経137.57500度 / 36.42222; 137.57500