霧の会議

松本清張の小説

霧の会議』(きりのかいぎ)は、松本清張の長編小説。『読売新聞』に連載され(1984年9月11日号 - 1986年9月20日号、連載時の挿絵は風間完)、1987年7月に文藝春秋から単行本が刊行された。1982年6月に起こったロベルト・カルヴィ怪死事件を背景にして、ヨーロッパを舞台に展開する、長編サスペンス・ロマン。

霧の会議
作者 松本清張
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 新聞連載
初出情報
初出読売新聞1984年9月11日 - 1986年9月20日
出版元 読売新聞社
挿絵 風間完
刊本情報
刊行 『霧の会議』(上下巻)
出版元 文藝春秋
出版年月日 1987年7月15日
装幀 竹内宏一
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あらすじ 編集

 
ロンドン・ブラックフライアーズ橋

ロンドン・テムズ川に架かる、ブラックフライアーズ橋の工事用足場から、イタリア人の首吊り死体が発見された。死体の主は、フリーメーソン・ロッジP2のナンバー3・リカルド・ネルビと判明、ロンドンの当局は自殺の線で処理しようとするが、ネルビの動向を追跡してきた新聞記者の八木正八は、他殺と推定する。

カトリック信者の高平和子は、大学助教授の木下信夫と不倫関係にあったが、ネルビ「処刑」の現場を目撃してしまう。以後、組織に追われる身となった和子と信夫は、ロンドンを脱出するが、フランスへ逃亡した2人に、マフィアの魔手が迫る。

事件に仕組まれた謎の正体とは?そして和子の愛の行方は?

主な登場人物 編集

 
サンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂(フィレンツェ)内部
八木正八
「中央政経日報」ローマ支局の雇員助手。リカルド・ネルビの動向を追い、ロンドンに来る。
高平和子
カトリック教徒の家庭に育つ。夫・仁一郎との結婚を後悔しており、木下信夫のいるフィレンツェに飛ぶ。
木下信夫
大学の助教授で、ラテン語を和子に教えていた。ルネサンス美術を専攻し、フィレンツェに留学。画を書くのを好む。35歳。
高平仁一郎
和子の夫。趣味で画を書く。34歳。
北野阿佐子
銀座の高級クラブ「リブロン」の人気ホステス。仁一郎に同行する。
小島春子
フリーのジャーナリスト。
植田伍一郎
画家。「リブロン」で「精神武装世界会議」を知り、参加。
戸崎秀夫
作曲家。「リブロン」で「精神武装世界会議」を知り、参加。
桐原敏雄
駐フランス大使館参事官。
ローリー・ウォーレス
「中央政経日報」ロンドン総局の女性助手。下町育ち。好奇心が強い。
イゾッピ
ローマ市警の刑事。リカルド・ネルビの動向を追い、同僚の刑事ベッティとロンドンに来る。
白川敬之
東邦証券副社長・国際本部長。元大蔵省の役人。教養豊かでヨーロッパ史の造詣も深い。和子の遠い縁戚にあたる。

モデルとなった実在の人物 編集

 
ロベルト・カルヴィ

関連項目 編集

作品の舞台 編集

 
ロンドン地下鉄サークル線
イギリス
 
パリ・モンマルトル一帯
フランス
 
モンテ・カルロ国営カジノ
モナコ
イタリア
 
ホーエンクリンゲン城
リヒテンシュタイン
スイス

参考文献 編集

  • 「フリーメーソンP2マフィア迷走記 - ヨーロッパ取材日記 - 」(『別册文藝春秋』1984年9月号掲載、『松本清張全集 第61巻』(1995年、文藝春秋)に収録)
    • 1984年5月28日-6月18日の間の著者の取材メモ。カルヴィ怪死現場の観察、シティの証券会社関係者への取材、ノルマンディー地方の取材など。

脚注・出典 編集

  1. ^ 政治学者の馬場康雄は、「カルヴィの変死にマフィアのメンバーが直接関与したことはほぼ間違いない」と述べている。馬場「『霧の会議』の背景」(『松本清張研究 第9号』(2008年、北九州市立松本清張記念館)に収録)参照。
  2. ^ 徳岡孝夫による『松本清張全集 第61巻』(1995年、文藝春秋)巻末解説を参照。もっとも、徳岡も断わっているが、「道徳再武装運動」はプロテスタント系の運動であるのに対して、本作の「精神武装世界会議」はカトリック教徒主体の設定。
  3. ^ 徳岡による『松本清張全集 第61巻』巻末解説を参照。
  4. ^ スイス国内の同名の地区(=Ortsteil)の記事がドイツ語版ウィキペディアにあるが、本作の舞台とは異なる。