魏書』(ぎしょ)は、王沈らが編纂した三国時代歴史書

完本は現存せず『三国志』の注釈の中などに断片的に残されている。全四十四巻。

劉知幾の『史通』古今正史篇には、曹魏の国史である『魏書』の編纂の概略が記載されている。『魏書』が編纂されたのは、司馬氏による簒奪が企図されていた曹魏末期で、時勢に配慮して随所に曹氏、司馬氏への双方に対して曲筆が行われており、劉知幾は「殊に実録にあらず」と評している。尚、編者の王沈は、甘露の変にて、曹髦の司馬氏への逆クーデターを密告した人物である。

編纂の概略 編集

『史通』古今正史篇および『晋書』王沈伝による記述を総合すると編纂の概略は以下の通りである。

  • 第一次編纂
時期:黄初太和年間(曹丕曹叡の治世)
編纂参加者:衛覬繆襲
編纂結果:本紀・列伝の草稿が出来るも、年を重ねても完成せず。
  • 第二次編纂
時期:正始嘉平年間(曹芳の治世)
編纂参加者:韋誕応璩王沈阮籍孫該傅玄
編纂結果: 詳細はわからないが、合計五十巻の韋誕の『大魏書(散騎書)』として史籍に名が残る。
  • 第三次編纂
時期:正元年間(曹髦の治世)
編纂参加者:王沈・阮籍・荀顗・孫該・傅玄ら
編纂結果:最後は王沈が一人で編纂に従事し、全四十四巻の『魏書』として完成。

後世への影響 編集

王沈の「魏書」として一応の完成を見た曹魏の国史編纂は、魚豢の『魏略』とともに、底本として、陳寿の『三国志』の『魏志(魏書)』の編纂に利用されたものと思われる。

参考文献 編集

  • 史通』巻十二 古今正史篇「魏史、黄初・太和中始命尚書衛覬・繆襲草刨紀傳、累載不成。又命侍中韋誕・應璩・秘書監王沈・大將軍從事中郎阮籍・司徒右長史孫該・司隸校尉傅玄等、復共撰定。其後王沈獨就其業、勒成『魏書』四十四巻。其書多為時諱,殊非實録。」
  • 晋書』王沈伝「大將軍曹爽辟為掾、累遷中書門下侍郎。及爽誅、以故吏免。後起為治書侍御史、轉秘書監。正元中遷散騎常侍・侍中・典著作。與荀顗、阮籍共撰魏書。」