鳥取温泉

日本の鳥取県鳥取市にある温泉。

座標: 北緯35度29分39.05秒 東経134度13分46.4秒 / 北緯35.4941806度 東経134.229556度 / 35.4941806; 134.229556

鳥取温泉(とっとりおんせん)は、鳥取県鳥取市にある温泉鳥取駅に近い市街地中心部にある温泉で、珍しい県庁所在地の市街地に湧く温泉である[3][5][注 1]

鳥取温泉
温泉情報
所在地 鳥取県鳥取市
交通 鉄道:山陰本線鳥取駅より徒歩5分
泉質 硫酸塩泉(ナトリウム - 硫酸塩・塩化物泉)[1]塩化物泉[2]
泉温(摂氏 48[1]
湧出量 毎分1400リットル[3]
pH 6.8-7.4(中性泉)[3]
年間浴客数 76,474[4]
統計年 2017[4]
外部リンク 鳥取温泉|鳥取いなば温泉郷
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鳥取温泉の位置
鳥取温泉の位置
鳥取温泉の位置
鳥取温泉の位置
元湯温泉

泉質 編集

新泉質表記では硫酸塩泉(ナトリウム - 硫酸塩・塩化物泉)[1]。旧泉質表記では含芒硝食塩泉ないし含食塩芒硝泉である[3]。 湧出温度は48℃である[1]

源泉は地下20~50mの砂礫層や礫岩層から動力で汲み上げている[3]

温泉街 編集

鳥取市の中心部の市街地に温泉が湧出している。湯田温泉(山口市)などと並び、県庁所在地の繁華街に存在する温泉である。旅館は線路の北側に3軒、南側にも1軒存在する。

歴史 編集

1897年(明治30年)に温泉が発見され、吉方温泉と命名された[5]。ついで1904年(明治37年)に飲料水の井戸を掘削している時に発見された[3][2][6]

温泉が出たのは当時の鳥取市吉方町で、その後に末広町、寺町でも温泉が湧いた[7]。温泉周辺は1960年(昭和35年)に「鳥取市吉方温泉町」という住所が新設された。さらに1969年(昭和44年)には、永楽通り周辺に「鳥取市永楽温泉町」、末広通り周辺に「鳥取市末広温泉町」という住所が新設された[8]。源泉は30以上開発され、温泉や料亭など、鳥取駅前の一帯に温泉街が形成されるに至った[5][9]

島崎藤村の『山陰土産』では、藤村は小銭屋という旅館で2泊を過ごし、次のように描いている。

島崎藤村 『山陰土産』 六 鳥取の二日 

新らしい旅館は鳥取にいくらもある。温泉宿も多いと聞く。さういふ中で、私達が小銭屋のやうな古風な宿屋に泊つたのは、旅の心も落着いてよからう、といふ岡田君の勧めもあつたからで。旅人としての私は、僅か二日位の逗留の予定で、山陰道での松江につぐの都会といはれるやうなところに、どう深く入つて見ようもない。
(中略)
 私達の泊つた鳥取の宿は古いといへば古い家で、煙草盆は古風な手提げのついたのだし、大きな菓子鉢には朱色の扇形の箸入を添へてだすやうな宿ではあつたけれど、わざとらしいところは少しもなく、客扱ひも親切で、気楽なところが好かつた。膳に向つて見ると、食器もすべて大切に保存されたやうな器ばかり。すゞしさうなガラスの皿に鮎の塩焼をのせてだしたのも夏らしい。こゝの料理は年とつたおかみさんの包丁と聞くが、大阪の宿を除いてはこゝで食はせるものは一番私の口に適つた。味もこまかい。旅人としての私は、自分等の前に置かれた宿屋の膳に向つて、吸物わんのふたを取つて見ただけでも、おほよそその地方を想像することが出来るやうな気もする。その意味から、旅の窓よりこの山陰の都会を望んで見た時は、さういふ味のこまかいところが鳥取かとも私には思はれた。

この「小銭屋」には、昭和天皇皇太子皇太子妃も宿泊している[1]

動静 編集

鳥取県が入湯税を基に算出した調査に拠れば、鳥取温泉の年間利用者は毎年7万人から8万人で推移している[4]。その数は2006年(平成18年)をピークに近年はやや減少傾向がみられるものの、1998年(平成10年)と比較すると増えている[10]。鳥取県全体の温泉利用客数は1998年以来右肩下がりにあり、1998年から2010年で25%の減少だが、鳥取温泉に限ると17%増である[10]

1997年以前の温泉利用客数は計算方法が全く異なっており、各自治体の申告に基づく推計値である[10]。これによると、1997年(平成9年)の鳥取温泉の利用客数は年間45万人で、バブル景気の頃にはピークを迎え、1989年(平成元年)には年間69万人が利用したことになっている[10]

アクセス 編集

脚注 編集

参考文献 編集

注釈 編集

  1. ^ 同様なのは甲府市山形市松山市[5]山口市

出典 編集

  1. ^ a b c d e 『全国温泉大事典』p560-563
  2. ^ a b 鳥取温泉|鳥取いなば温泉郷2018年6月7日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 『鳥取県大百科事典』p643
  4. ^ a b c 鳥取県観光交流局観光戦略課 温泉地入湯客数(平成30年3月)2018年6月7日閲覧。
  5. ^ a b c d 『図説日本文化地理大系4 中国1』p304
  6. ^ 鳥取市HP まちなかに湧く温泉 鳥取温泉2014年9月23日閲覧。
  7. ^ 『全國温泉案内』p443-453
  8. ^ 『日本地名大辞典 31 鳥取県(角川日本地名大辞典)』p146「永楽温泉町」,p424「末広温泉町」,p821「吉方村」,
  9. ^ 『鳥取県の地名(日本歴史地名大系)』p131「鳥取市」,p173,189,193-194「吉方村」
  10. ^ a b c d 鳥取県文化観光局観光政策課 観光客入込動態調査結果(平成22年)2014年9月9日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集