黒田長知

凡例黒田長知
	黒田長知候写真（福岡市博物館蔵）
時代	江戸時代後期 - 明治時代
生誕	天保9年12月19日（1839年2月2日）
死没	明治35年（1902年）1月7日
改名	建若、高望、黒田長知、慶賛、長知
別名	官兵衛、如淵
墓所	東京都港区の青山霊園; 和歌山県高野山奥の院
官位	下野守従四位下侍従、左近衛権少将、正二位、贈侯爵
幕府	江戸幕府
主君	徳川家慶→家定→家茂→慶喜→明治天皇
藩	筑前福岡藩藩主→福岡藩知事
氏族	藤堂氏 → 黒田氏
父母	父：藤堂高猷、母：妙貞院（橋本清娯の娘）; 養父：黒田長溥
兄弟	長知、藤堂高潔、脇坂安斐、松平定昭
妻	正室：豊子（香台院、松平定和長女）; 側室：中村氏、園子（田代氏）、隅田氏、岩谷氏、板倉氏、大宮氏など
子	長成、長和、禎子（鍋島直映夫人）、長敬
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黒田長知（くろだながとも）は、筑前国福岡藩の第12代藩主、初代知藩事。

生涯編集

天保9年12月19日（1839年 2月2日）、伊勢国津藩藩主・藤堂高猷の二男^[1]として、江戸柳原藤堂藩邸にて生まれる。母は橋本氏^[2]（妙貞院。橋本清娯の娘）。幼名は健若^[2]。のち高望と名乗る^[2]。

嘉永元年（1848年）11月21日、第11代福岡藩主・黒田斉溥の養子となり、長知と改名し、同2年（1849年）2月、官兵衛と称す^[2]。

嘉永5年（1852年）11月15日、将軍徳川家慶に御目見得する^[2]。同年12月19日、家慶の前で元服、松平姓と家慶の偏諱を与えられ松平慶賛と名乗った^[2]。また、下野守従四位下侍従に叙任される^[2]^[1]。

幕末期の動乱の中では、親長州藩的な人物で、禁門の変などにおける長州藩の苦境に際し、朝廷や幕府に対して長州藩の赦免を求めている。明治2年（1869年）2月5日、斉溥（改め長溥）の隠居により家督を継ぎ、同年6月の版籍奉還により知藩事となった。この頃に名を長知と改めている。

明治4年（1871年7月2日）、当主となった2年後、戊辰戦争出兵による財政難から藩当局が太政官札・二分金などを贋造して北海道で物資買い付けを行っていたことが発覚した（太政官札贋造事件）。この責任により知藩事を罷免・閉門処分となった^[3]。後任の知藩事には、長男の長成ではなく有栖川宮熾仁親王が就任したが、廃藩置県まで12日という短さであった。同年、東京へ移住するため、8月13日に家族とともに福岡を出帆した。港では大勢の藩士や領民が別れを惜しんだ。9月3日、一家は中屋敷であった赤坂邸に到着した（桜田の上屋敷は新政府に献じたため）。同年11月12日（1871年12月23日）、養父長博の勧めもあり、元藩士の金子堅太郎や團琢磨らを従えて、岩倉使節団の海外留学生として欧州・米国に渡り、見聞を広げた。ボストンではアーネスト・フェノロサとの交流もあり、日本の美術や芸術について意見交換している記録の手紙が東京芸術大学に残る。また、留学した際の若き日の黒田長知の写真が保管されている。ハーバード大学を卒業し、日本に帰国した。

明治11年（1878年）12月28日に隠居し、長男の長成が家督を相続したが、まだ養父の長溥も健在であった。明治17年（1884年）に号を如淵と称し、元々文学肌であったため、書や文学、絵、囲碁、将棋などを嗜み、井上文雄・本居豊穎の門人になり数々の書を残す。若い頃に儒学を佐藤一斎から、書を市川米庵に学んでいる。また能楽を大変好み、同じく能好きで知られた実兄の藤堂高潔と共に、幕末以来困窮していた多くの能楽師たちを援助した。中でも旧福岡藩お抱えの観世流や喜多流能楽師シテ方の梅津只圓（娘、千代子は福岡藩士で気象学者の野中到夫人）や、その家元の十四世喜多六平太を重用し、自らも能を舞い謡った。六平太と「女流棋士の母」と呼ばれた夫人、喜多文子との結婚も仲介している。