2018年米朝首脳会談

史上初の米朝首脳会談(2018年6月12日)

2018年米朝首脳会談(2018ねんべいちょうしゅのうかいだん、英語:2018 Koreas–United States Singapore summit、朝鮮語:2018년 북미정상회담)は、2018年6月12日にシンガポールで開催されたアメリカドナルド・トランプ大統領北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長国務委員会委員長による史上初の首脳会談

2018年米朝首脳会談
2018 Koreas–United States Singapore summit
2018년 북미정상회담
開催国 シンガポールの旗 シンガポール
日程 2018年6月12日 (2018-06-12)
会場 シンガポールの旗 シンガポール セントーサ島 カペラホテル英語版
参加者 アメリカ合衆国の旗 アメリカのドナルド・トランプ大統領
朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮の金正恩委員長
次回 2019年2月ハノイ会談

経緯 編集

2018年3月5日に韓国の文在寅大統領から派遣された特別使節団の団長として北朝鮮を訪問した韓国の鄭義溶国家安全保障室長は、北朝鮮の金正恩委員長と会談した。その会談の席で、金正恩は鄭義溶に対して南北首脳会談を4月に開催することで合意した[1]

これを受けて鄭義溶はソウルへ帰国し、文に対して金正恩との会談結果を報告した後に文の特使としてアメリカへ渡航してワシントンD.C.ホワイトハウスを訪問し、アメリカのドナルド・トランプ大統領に対して「金正恩委員長がアメリカ合衆国大統領と会談したい意向がある」と、金正恩からのメッセージを伝えた[2]。これに対してトランプは「金正恩からの要請に応じよう」と答え、アメリカ合衆国大統領として朝鮮民主主義人民共和国最高指導者との会談に打って出ることを表明した[3]

開催まで 編集

 
アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長

金正恩は2018年3月25日に最高指導者就任後の初外遊で中国を訪問しており、中国の習近平総書記と米朝・南北首脳会談の事前協議を行っていたとされる[4][5]。直前の5月7日にも再び訪中して習近平総書記と米朝首脳会談の事前調整を行ったとされる[6]

2018年5月24日にトランプは「6月12日に予定していた米朝首脳会談を中止する」との書簡を金正恩に送り、発表した。トランプは北朝鮮当局者が同国を牽制する発言をしたペンス副大統領を「愚かで無知」と述べたコメントを引用し、「怒りと敵意に満ちた中での会談は望ましくない」として「中止する」との意向を示した[7]。ただしトランプは、依然として6月12日に行い得ると述べた[8]

2018年6月1日にはアメリカを訪問している北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長がトランプと会談し、会談終了後にトランプが予定通り6月12日に米朝首脳会談を開催すると発表した[9]

2018年6月9日に北朝鮮先遣団約100名が中国国際航空(AirChina:CA)60便A330-200型機(登録番号:B-6130)で到着した[10][11]

2018年6月10日に先行して金正恩専用特別車両輸送機[12]高麗航空(AirKoryo:JS)便名不明Il-76MD型機(登録番号:P-914[13][要出典]が到着車両準備後[14]、金正恩[15]の乗った中国国際航空61便ボーイング747-400型機(登録番号:B-2447[16])、帯同機の高麗航空(政府専用機?)便名不明Il-62M型機(登録番号:P-885[17])が到着した[18]。なお、会談後の13日も金正恩は中国機で平壌に帰国した[19]

開催場所・日時 編集

 
米朝首脳と政府幹部の会合

アメリカ及び北朝鮮最高指導者による会談の開催地・日時については、2018年4月時点では未定で両国による水面下の調整が行われていたとされる[20]

トランプは首脳会談開催地については「(南北首脳会談が開催された)板門店の韓国側施設『平和の家』[注釈 1]でやれば素晴らしいものになる」としているが[21]、一方では「シンガポールを含め、複数の国も候補に挙げて検討している」と語った[21]

北朝鮮側からは開催地・日時に対する公式な反応は示されていないが、金正恩の専用機が旧式のイリューシンIL-62である為航続距離に難点があることから平壌から遠距離にある欧州での開催は難しいという認識があり、シンガポール・ウランバートル(モンゴル)・さらに中立国であるスイススウェーデンを候補に挙げているとの情報があった[22]

そしてトランプは5月10日に金正恩との会談について「2018年6月12日にシンガポールにて開催する」ことを自らのツイッターにて発表した[23][24]

6月5日に米朝首脳会談の開催場所がホワイトハウスサラ・ハッカビー・サンダース報道官によって発表された[25]。同氏は6月5日にツイッターで「トランプ大統領と金正恩委員長の会談場所は、セントーサ島のホテル『カペラ英語版』だ」と公表し、宿泊先はトランプはシャングリ・ラ・ホテル・シンガポール[26]、金正恩はホテル・セントレジス・シンガポール英語版となった[27]

共同声明 編集

 
共同声明に署名するアメリカのトランプ大統領(中央右)と北朝鮮の金正恩委員長(中央左)。
介添え役として、金与正朝鮮労働党宣伝扇動部第一副部長(左端)とマイク・ポンペオ国務長官(右端)が陪席している。
アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ朝鮮民主主義人民共和国金正恩国務委員長は、史上初の首脳会談を2018年6月12日、シンガポールで開催した。

トランプ大統領と金正恩委員長は新たな米朝関係朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制を構築するため、包括的かつ誠実な意見交換を行った。トランプ大統領は朝鮮民主主義人民共和国に安全の保証を与えると約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた断固とした揺るぎない決意を確認した。

新たな米朝関係の構築は朝鮮半島と世界の平和と繁栄に寄与すると信じると共に、相互の信頼醸成によって朝鮮半島の非核化を促進すると認識し、トランプ大統領と金正恩委員長は次のように宣言する。

(1)アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は、平和と繁栄を求める両国国民の希望に基づき、新たな米朝関係の構築に取り組む。

(2)アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向け、協力する。

(3)2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。

(4)アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮戦争の捕虜・行方不明兵の遺骨回収、既に身元が判明している遺体の帰還に取り組む。

トランプ大統領と金正恩委員長は「史上初の米朝首脳会談が、両国の数十年にわたる緊張と敵対を乗り越える新たな未来を築く重要な出来事であった」と認識し、この共同声明の内容を「完全かつ迅速に履行すること」を約束した。

アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は米朝首脳会談の成果を履行するため、「マイク・ポンペオ国務長官と朝鮮民主主義人民共和国の高官の交渉を続けて可能な限り迅速に履行する」と約束した。

トランプ大統領と金正恩委員長は「新たな米朝関係の発展と、朝鮮半島と世界の平和、繁栄、安全のために協力すること」を約束した。 — 米朝共同声明(外部リンク欄参照)

日本政府の対応 編集

日本政府は情報収集の為に谷内正太郎国家安全保障局長と金杉憲治外務省アジア大洋州局長の2名の政府幹部を2018(平成30)年6月10日からシンガポールに派遣した[28][29]。また、会談後のトランプの来日への調整を行った[30]

2018年米朝首脳会談前の日本とアメリカの動き
月日 会談形式 当事者
4月18日 日米首脳会談 安倍総理とドナルド・トランプ大統領
4月28日 日米首脳電話会談
4月30日 日米外相会談 河野太郎外務大臣とマイク・ポンペオ国務長官
5月10日 日米首脳電話会談 安倍総理とトランプ大統領
5月23日 日米外相会談 河野外務大臣とポンペオ国務長官
5月28日 日米首脳電話会談 安倍総理とトランプ大統領
6月6日 日米外相会談 河野外務大臣とポンペオ国務長官
6月7日 日米首脳会談 安倍総理とトランプ大統領

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ なお、トランプと金正恩は2019年6月30日に板門店で首脳会談(面会)を行っている。

出典 編集

  1. ^ 南北首脳会談、4月実施で合意=韓国特使団 正恩氏は非核化の意向も BBC Japan News 2018-3-6
  2. ^ 金正恩氏、トランプ氏に非公開メッセージ 信頼構築狙う 朝日新聞 2018年3月10日
  3. ^ トランプ氏「取引」自信 米朝首脳会談へ 東京新聞 2018年3月10日
  4. ^ “金正恩氏訪中「非核化に尽力」=習主席と初会談-南北・対米関係改善に意欲”. AFPBB. (2018年3月28日). http://www.afpbb.com/articles/-/3169002 2019年10月12日閲覧。 
  5. ^ “トランプ米大統領「金氏は私に会いたがっている」、中朝首脳会談を評価”. AFPBB. (2018年3月28日). https://www.afpbb.com/articles/-/3169120 2019年10月12日閲覧。 
  6. ^ “金正恩氏が習主席と再会談、米朝会談前に関係緊密化 後ろ盾誇示で交渉力向上へ”. 産経ニュース. (2018年5月8日). https://www.sankei.com/photo/story/news/180508/sty1805080023-n1.html 2019年10月12日閲覧。 
  7. ^ トランプ大統領が米朝首脳会談の中止を発表 Onebox News 2018年5月24日
  8. ^ 米朝首脳会談、6月12日開催あり得る トランプ大統領”. AFPBB News. AFP (2018年5月25日). 2018年5月26日閲覧。
  9. ^ 12日に米朝首脳会談=トランプ氏が言明-正恩氏の親書評価 時事通信 2018年6月2日
  10. ^ Massive Undertaking for North Korea’s Expedition to Singapore AIN Online June 11, 2018
  11. ^ 当日のB-6130/FR24の記録[出典無効]
  12. ^ 【米朝首脳会談】かく乱目的?安全目的? 金正恩氏は中国国際航空機を利用 産経新聞(共同通信) 2018.6.10[出典無効]
  13. ^ 当日のP-914/FR24の記録[出典無効]
  14. ^ 中国機に乗った金正恩氏、同行した専用機は使わず 朝日新聞 2018年6月10日[出典無効]
  15. ^ “北メディア「正恩氏の中国機利用」を異例の報道 対中関係誇示か”. 聯合ニュース. (2018年6月11日). http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2018/06/11/0200000000AJP20180611004200882.HTML 2018年6月12日閲覧。 
  16. ^ 当日のB-2447/FR24の記録[出典無効]
  17. ^ 当日のP-885/FR24の記録[出典無効]
  18. ^ 金正恩氏が中国機でシンガポール到着 専用機はおとり?老朽化で乗らず? 産経新聞 2018.6.10
  19. ^ “北朝鮮の金委員長が13日に帰国、米朝首脳会談終え=KCNA”. ロイター. (2018年6月14日). https://jp.reuters.com/article/northkorea-usa-statesman-idJPKBN1J937F 2018年6月14日閲覧。 
  20. ^ 「米朝首脳会談の日時・場所を調整中」「極めて順調」 トランプ氏がツイート 米韓首脳が電話会談 産経新聞 2018年4月29日
  21. ^ a b トランプ大統領「板門店」前向き検討 「シンガポール」も有力と 産経新聞 2018年5月1日
  22. ^ 단독 북미정상회담 몽골과 싱가포르 두 곳으로 압축 Kakao Corp.
  23. ^ The highly anticipated meeting Donald Trump Twitter 2018-5-10
  24. ^ “米朝首脳会談、シンガポールで開催 6月12日 トランプ氏が発表”. 日経電子版. 日本経済新聞社. (2018年5月10日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30349510Q8A510C1MM8000/ 2018年5月10日閲覧。 
  25. ^ 米朝首脳会談、シンガポール・セントーサ島のホテルで開催へ”. ロイター (2018年6月6日). 2018年6月6日閲覧。
  26. ^ トランプ、シンガポール到着第一声に「会談の展望、ベリーグッド」 ハンギョレ 2018年6月11日
  27. ^ シンガポール到着の金正恩氏、警護伴いホテルに 読売新聞 2018年6月10日
  28. ^ 「シンガポールへ安保局長ら派遣 米朝会談の情報収集」 日本経済新聞 2018年6月9日 朝刊
  29. ^ 「政府高官2人をシンガポールに派遣 米朝首脳会談の情報収集へ」 産経ニュース 2018年6月8日 20:15
  30. ^ 「外務省幹部派遣を検討 日本政府、米朝会談時」 日本経済新聞 2018年5月19日

関連項目 編集

外部リンク 編集