34平均律(34へいきんりつ)は、34-TET, 34-EDO, 34-ET, とも略称され、オクターブを34段の等間隔なステップ(等しい周波数比)に分割することにより得られる音律である。各ステップは周波数比 ( )、または 1200/34 ≈ 35.29411765 セントである。

歴史 編集

古代ギリシャの音程(グレーターおよびレッサー・ディエシスとシントニックコンマ)から派生したと考えられる19段、31段、53段へのオクターブの分割と異なり、34段への分割は、古典音楽理論から'自然'には生じなかったが、Cyriac Schneegass は半音階的半音(長三度と短三度との間の違い、25/24比、あるいは70.672セント)の半分に基づく34分割による中全音律システムを提案した。調律へのより広い関心は近代まで見られなかったが、今や、すべての可能な平均律の組織的な捜索がコンピュータで可能になった。潜在的重要性の最初の認識は、1979年にオランダ人の理論家 Dirk de Klerk によって発表された文献に見られる。弦楽器製作者ラリー・ハンソンは、エレキギターを12フレットから34フレットに付け替えて、それを始めるように有名なアメリカ人のギタリストの Neil Haverstick を説得した。

31平均律と比較すると、34平均律は理想的な純正三度・五度および六度の調律誤差を、11.9セントから7.9セントに理論的に減少させる。この五度と長六度は著しく良く、長三度は5/4比の理論上の理想からわずかに遠いだけである。 西洋の全音階の理論の観点から見て、事実上、(31平均律と比較された34平均律の)余分な3段はCとD、FとG、AとBの間隔を広くする、その結果、比率9/8の大全音と、比率10/9の小全音を区別する。このことはリソースかあるいは問題と見ることができ、現代の西洋感覚における転調をより複雑にする。オクターブの分割数が偶数なので、オクターブの正確な半分(600セント)が、12平均律のように現れる。 31平均律と異なり、34平均律は比率7/4の七度に近似音程を与えない。

スケールダイヤグラム 編集

スケールにおける34音の中の15音を下表に示す:

間隔(セント) 106 106 70 35 70 106 106 106 70 35 70 106 106 106
音名   C   C♯/D♭ D D♯ E♭ E F F♯/G♭ G G♯ A♭ A A♯/B♭ B C
音程(セント)   0   106 212 282 318 388 494 600 706 776 812 882 988 1094 1200

音程 編集

この調律系とそれらの適合間隔の幾つかについて倍音系列の様々な比率の概説を下表に示す。

音程名 サイズ(段) サイズ(セント) 純正比 純正(セント) 誤差
完全五度 20 705.882 3:2 701.955 -3.927
狭い十七限界の三全音 17 600 24:17 597 -3
狭い七限界の三全音 17 600 7:5 582.512 -17.488
狭い十三限界の三全音 16 564.706 18:13 563.382 -1.324
狭い十一限界の三全音 16 564.706 11:8 551.318 -13.388
十一限界の広い四度 15 529.412 15:11 536.951 7.539
完全四度 14 494.118 4:3 498.045 3.927
十七限界の半増三度 13 458.824 17:13 464.428 5.604
十三限界の半増三度 13 458.824 13:10 454.214 -4.61
七限界の長三度 12 423.529 9:7 435.084 11.555
十一限界の長三度 12 423.529 14:11 417.508 -6.021
長三度 11 388.235 5:4 386.314 -1.922
十三限界の中立三度 10 352.941 16:13 359.472 6.531
十一限界の中立三度 10 352.941 11:9 347.408 -5.533
短三度 9 317.647 6:5 315.641 -2.006
十三限界の短三度 8 282.353 13:11 289.21 6.857
十七限界の短三度 8 282.353 20:17 281.358 -0.995
七限界の短三度 8 282.353 7:6 266.871 -15.482
十三限界の増二度 7 247.059 15:13 247.741 0.682
七限界の全音 7 247.059 8:7 231.174 -15.885
17:15幅の全音 6 211.765 17:15 216.687 4.922
全音, 大全音 6 211.765 9:8 203.91 -7.855
全音, 小全音 5 176.471 10:9 182.404 5.933
十一限界の広い中立二度 5 176.471 11:10 165.004 -11.466
十一限界の狭い中立二度 4 141.176 12:11 150.637 9.461
十三限界の中立二度 4 141.176 13:12 138.573 -2.604
全音階的半音 3 105.882 16:15 111.731 5.849
17:16幅の半音 3 105.882 17:16 104.955 -0.927
半音階的半音 2 70.588 25:24 70.672 0.084
七限界のディエシス 1 35.294 49:48 35.697 0.403
七限界の六分音 1 35.294 50:49 34.976 -0.319

34平均律は五度と短三度に関する31平均律の上の改良だが、31平均律でごく自然に扱われる七限界の三全音・七限界の短三度・七限界の長三度に関しては、著しく貧しい近似を提供する。これらは22平均律の方が幾らか良い。七限界の全音を6段まで減少させるか、または七限界の短三度を7段まで減少させる(その結果、七限界の長三度は増加する)ことによって、これを修正できる。

11限界の音程は、さらに良く取り扱う。他のシステムでは厳密に合わせられないか見分けられないこの倍音を含むさまざまな比率を、34平均律は厳密に合わせられ区別する。これらは11:9、12:11、14:11、および15:11を含み、もちろんそれらの逆数を含んでいる。また、13限界や17限界の音程に対しても取り扱いが良く、15:13、13:11、13:9、20:17、17:16、17:15、17:12など、多くの音程により正確に合う。

34平均律は、136:135、144:143、170:169、221:220、256:255の間隔を同音に調律する。

参考文献 編集

J. Murray Barbour, Tuning and Temperament, Michigan State College Press, 1951.

関連項目 編集

外部リンク 編集