AECマタドールは、第二次世界大戦期にイギリスアソシエイテッド・イクイップメント・カンパニー英語版(以下AEC)で開発され、イギリス軍およびイギリス連邦軍で主に砲兵トラクターとして運用された、4×4輪駆動の軍用トラックである。

AEC Matador
AECマタドール
種類 砲兵トラクター汎用トラック
原開発国 イギリスの旗 イギリス
開発史
製造業者 アソシエイテッド・イクイップメント・カンパニー英語版
製造期間 1938年-1953年
諸元
重量 7,800 kg
全長 6.35 m
全幅 2.39 m
全高 2.92 m

エンジン AEC O853 7580cc ディーゼル
速度 48 km/h
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概要 編集

AEC社では、第二次世界大戦以前から4×2輪駆動の軍用トラックを生産しており、これを4輪駆動としたものがAECマタドールModel O853)である。平面的な部品で構成されたキャブオーバー型の4輪トラックで、荷台部分はフラットな床面を持ち、キャンバスカバーを掛けることが出来る。また、巻き上げ能力7トンのウィンチを装備している。初期に生産された物はガソリンエンジンを搭載していたが、途中からより出力の高い、AEC O853 7580cc ディーゼルエンジンに変更された。4×4輪駆動のAECマタドールは、"ドーチェスター"の通称で知られる、4×4輪駆動のAEC装甲指揮車のベースともなった。

AEC社では、マタドールのシャーシを延長し6×6輪駆動としたAECマーシャルModel O854)も開発し、こちらもイギリス軍や英連邦軍で運用された。AECマーシャルもマタドールと同様に、6輪の装甲指揮車タイプのベース車両として使用されている。6×6輪駆動のAECマーシャルに対しても、"マタドール"の呼称が使われる事もあった。

AECマタドールは総計8,612両生産され、一部はイギリス空軍にも配備された。

イギリス陸軍では、AECマタドールはモーリスC8スキャメル パイオニアなどと同じように、FAT(Field Artillery Tractors、野戦砲兵トラクター)として運用された。より小型のモーリスC8 FATは、QF 25ポンド砲などの牽引に使用され、大型のスキャメル パイオニアは、BL 7.2インチ榴弾砲などの牽引に使用されており、両者の中間であるAECマタドールは、BL 5.5インチ砲QF 3.7インチ高射砲などの牽引用途に使用された。

イギリス空軍では、AECマタドールは汎用の輸送トラックとして使用された。6×6輪駆動のAEC マーシャルは2,500ガロン積載可能な燃料タンカーとして使用されたり、飛行艇であるショート サンダーランドを陸上で牽引する用途などで使用された。

1942年~1943年の北アフリカ戦線では、AECマタドールの荷台にオードナンス QF 6ポンド砲を搭載して対戦車自走砲に改造された車両が、ディーコン対戦車自走砲の名称で運用された。

AECマタドールは第二次世界大戦後もしばらく生産が続けられ、民間でも使用された。砲兵トラクターとして設計され、大径タイヤの装着など路外機動性に優れており、様々な方面で活躍した。

バリエーション 編集

AECマタドール 4×2
4×2輪駆動のカーゴトラック型で、この車種もマタドールと呼ばれる事があった。
AECマタドール 4×4
4×4輪駆動のカーゴトラック型、FAT(Field Artillery Tractors、野戦砲兵トラクター)型。モデル名 O853。
AEC装甲指揮車 4×4
4×4輪駆動の装甲指揮車両型。通称 AECドーチェスター。
AECマーシャル 6×6
6×6輪駆動のカーゴトラック型。モデル名 O854。この車種もマタドールと呼ばれる事があった。
AEC装甲指揮車 6×6
6×6輪駆動の装甲指揮車両型。モデル名 O857。
ディーコン対戦車自走砲
AEC マタドールに QF 6ポンド対戦車砲を搭載した自走砲。

画像 編集

使用国 編集

参考文献 編集

  • Aec Matador: Taking the Rough with the Smooth, Steve Richards, Japonica Press, ISBN 978-1904686248

関連項目 編集

  • 砲兵トラクター
  • CMP FAT - 同時期にイギリス軍、イギリス連邦軍で使用された装輪式砲兵トラクター。
  • スキャメル パイオニア - 同時期にイギリス軍で使用された装輪式砲兵トラクター。
  • モーリスC8 - 同時期にイギリス軍で使用された装輪式砲兵トラクター。
  • ベッドフォードQLB - 同時期にイギリス軍で使用されたベッドフォードQLシリーズトラックの砲兵トラクター型。

外部リンク 編集