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B-21 (航空機)

米国ノースロップ・グラマン社が開発中の戦略爆撃機
曖昧さ回避 この項目では、現代のステルス爆撃機について説明しています。1930年代の爆撃機については「XB-21 (航空機)」をご覧ください。

ノースロップ・グラマン B-21

カリフォルニア州パームデールにあるプラント42（英語版）の施設に格納されたB-21

カリフォルニア州パームデールにあるプラント42（英語版）の施設に格納されたB-21

B-21はアメリカ合衆国の長距離打撃爆撃機計画に基づきノースロップ・グラマン社が開発している長距離戦略爆撃機で、世界初の第6世代航空機でもある[2]。

この爆撃機は、2025年までに運用に入る予定で、既存のB-2とB-1を置き換え[3]、 B-52を補完し、最終的に置き換える予定である[4][5]。

名称は21世紀に入ってからアメリカで最初に開発された爆撃機ということに由来[6]。また、愛称のレイダー (Raider) は第二次世界大戦中にドーリットル空襲で日本を爆撃した部隊の通称「Doolittle Raiders」にちなむ[7]。

概要 編集

アメリカ空軍は戦略爆撃機として、B-1、B-2、B-52の3機種を運用しているが、2020年代後半からB-1とB-2を段階的に退役させ、以降は新型エンジンへの換装などで延命するB-52とB-21の2機種体制にする計画である[8]。100機以上のB-21を調達し、B-52と併せて175機以上の配備を予定している[8][9]。

高いステルス性能と高度なネットワーク能力、オープンアーキテクチャを有しているのが特徴で、ノースロップ・グラマン社は世界初の第六世代戦略爆撃機になるとしている。

開発経緯 編集

アメリカ空軍は、次世代爆撃機計画（NGB: Next Generation Bomber）において次世代爆撃機の2018年配備を目指していたが、政治的・財政的理由から2009年に中止した。代替として、2011年に開始されたのが長距離打撃爆撃機計画（LRS-B:Long Range Strike Bomber）である。

2014年7月9日、米空軍からノースロップ・グラマン社及びボーイング社・ロッキード・マーティン社グループにLRS-Bの提案依頼書が発出された[10]。

2015年10月27日、米国防総省がLRS-Bにノースロップ・グラマン社を選定した。契約はEMD段階と初期生産のオプションからなり、オプションでは量産100機のうちの21機が5回の初期生産ロットで生産される。この決定に対して、ボーイング社がアメリカ会計検査院（英語版）に異議申し立てを行ったため作業が一時中断となったが、2016年2月16日、検査院が申し立てを却下したため作業が再開された[11]。

2016年2月26日、デボラ・リー・ジェイムズ（英語版）空軍長官が、LRS-Bの型式名がB-21であると明らかにした。合わせて外観がB-2と類似したB-21の完成予想図を公開した[12]。

2016年9月19日、米空軍は B-21の愛称をレイダー（Raider）とすると発表した[13]。これは第二次世界大戦で1942年4月に日本本土初空襲を行ったドーリットル爆撃隊（Doolittle Raiders）に由来する[14]。

2017年3月14日、米空軍広報官はB-21の事前設計審査（PDR）について、秘匿性の高さから二度に分けて実施すると発表した[15]。同月20日、事前設計審査を完了したと報じられた。2018年12月10日、米空軍は、B-21が11月28日から11月30日に実施された最終設計審査（CDR）を完了したと発表した[16]。

2020年8月13日、 米空軍のB-21計画責任者が、空軍は間もなく詳細設計と技術的困難の克服を完了すると述べた。併せてB-21の飛行試験用1号機の組み立てが開始されたことも明らかにした。

2022年12月3日、 米空軍がカリフォルニア州パームデール第42空軍施設で、B-21を初公開した。 6機試作されているB-21の1号機T-1は既に地上試験に入っており、初飛行は2023年に実施される。初飛行の日程は今後の地上試験の結果次第だという[17]。

2023年11月11日、B-21が初飛行した[18]。

2024年1月23日、アメリカ国防総省はB-21レイダーの低率初期生産を許可した[19]。

調達数 編集

現在、100機を調達予定である。

空軍関係者や専門家は調達数を最低145機まで増やすべきたと主張しているほか、米議会上院軍事委員会は空軍に対し調達数を100機から225機へと2倍以上にするように要求している[20][21]。

設計と性能 編集

B-52やB-1、B-2よりも優れた搭載量や航続距離、攻撃力になるとみられ、通常弾頭と核弾頭に対応する[22]。詳細は公表されていないが、オーストラリア戦略政策研究所の専門家はB-21が9,600 kmの航続距離能力を持ち、10トンの武器を運ぶことができると推測している。B-2の航続距離が約12,000 km、ペイロードが17トンであるため、B-21は小型された分、これらの能力は下がったとみている[23]。またB-21はB-2に比べてAGM-158B JASSM-ERの搭載にかかる時間を1/10にできるという[24]。

オープンシステムアーキテクチャーの採用により、能力向上に従来の段階開発（ブロック・アップグレード）は行わず、新能力の付与は随時行うとしている。また“デジタル爆撃機”として、アジャイルソフトウェア開発や高度な製造技術、デジタルエンジニアリングツールを採用し、製造リスクを軽減。データのクラウド環境への移行を成功させており、より低コストなインフラで機体を運用可能としている[22]。

JADC2によるデータ共有能力を持つという[25]。

配備 編集

2019年3月、米空軍はサウスダコタ州エルスワース空軍基地の第28爆撃航空団（英語版）が最初のB-21実運用部隊になることを明らかにした。この他、ミズーリ州ホワイトマン空軍基地とテキサス州ダイエス空軍基地にも配備予定である[26]。

運用予定国　 編集

アメリカ空軍 アメリカ空軍が100機の導入を予定している。この100機はB-2とB-1を代替する機体で、更新に伴いB-2とB-1は退役する。B52はB21と共に運用を続ける。

オーストラリア空軍 豪戦略政策研究所がオーストラリア空軍が退役したF111の代わりにB21を購入すべきだと発表している。米国はB21の輸出に関して禁止とも許可とも言っておらず、オーストラリア空軍が導入する可能性がある[27]。

脚注 編集

[脚注の使い方]
  1. ^ “世界初の第6世代か？ 最新ステルス機B-21「レイダー」初飛行に成功 米空軍の次世代爆撃機”. 乗りものニュース. (2023年11月8日). https://trafficnews.jp/post/129268 2023年11月11日閲覧。 
  2. ^ “ノースロップ・グラマンと米空軍、世界初の第6世代航空機B-21を初披露”. Northrop Grumman Newsroom. 2023年10月23日閲覧。
  3. ^ Jeremiah Gertler (2017年6月7日). “Air Force B-21 Raider Long-Range Strike Bomber”. Congressional Research Service (CRS). http://www.crs.gov/Reports/R44463 2018年1月23日閲覧. "B-21s would initially replace aging B-1 and B-52 bombers, and would possibly replace B-2s in the future." 
  4. ^ “New B-21 bomber named 'Raider': U.S. Air Force”. Reuters. (2016年9月19日). https://www.reuters.com/article/us-airforce-northrop-grumman-bomber-idUSKCN11P1TZ 2017年4月23日閲覧. "The stealth B-21, the first new U.S. bomber of the 21st century, is part of an effort to replace the Air Force's aging B-52 and B-1 bombers, though it is not slated to be ready for combat use before 2025." 
  5. ^ “US Air Force requests $156.3 billion in FY19, plans to retire B-1, B-2 fleets”. Defense News. (2018年2月12日). https://www.defensenews.com/smr/federal-budget/2018/02/12/air-force-requests-1563-billion-in-fy19-plans-to-retire-b-1-b-2-fleets/ 2018年2月13日閲覧。 
  6. ^ アメリカ空軍、世界初の第6世代航空機「B-21 Raider」を発表 - fabcross for エンジニア (2023年1月16日)、2024年3月25日閲覧。
  7. ^ The B-21 has a name: Raider - The Official Home Page of the U.S. Air Force（英語）。2022年12月3日閲覧。
  8. ^ a b “Ｂ１、Ｂ２爆撃機退役へ＝２０年代後半から－米空軍”. 時事ドットコム. (2018年2月14日). オリジナルの2018年2月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180216205058/www.jiji.com/jc/article?k=2018021400785&g=int 
  9. ^ “Neuer US-Bomber soll China und Russland abschrecken”. Tages-Anzeiger. (2015年7月2日). http://www.tagesanzeiger.ch/ausland/amerika/Neuer-USBomber-soll-China-und-Russland-abschrecken/story/27360003 
  10. ^ “AIr Force Releases Re-quest for personal for Secretive Long Range Bomber”. USNI News. 2023年11月12日閲覧。
  11. ^ Insinna, Valerie (2016年10月25日). “Game Over: GAO Protest Reveals Cost Was Deciding Factor in B-21 Contest” (英語). Defense News. 2023年11月11日閲覧。
  12. ^ Seligman, Lara (2016年2月26日). “US Air Force Unveils New B-21 Bomber” (英語). Defense News. 2023年11月11日閲覧。
  13. ^ Losey, Stephen (2016年9月19日). “It's the Raider: Air Force unveils name of new B-21 bomber” (英語). Air Force Times. 2023年11月11日閲覧。
  14. ^ “レイダー 愛称 由来 - Google 検索”. www.google.co.jp. 2023年11月11日閲覧。
  15. ^ “B-21 Raider design subjected to additional scrutiny, USAF conducted second review | InsideDefense.com”. insidedefense.com. 2023年11月11日閲覧。
  16. ^ Insinna, Valerie (2018年12月9日). “Blink and you’ll miss it: The B-21 bomber accomplishes another big review” (英語). Defense News. 2023年11月11日閲覧。
  17. ^ Losey, Stephen (2022年12月3日). “‘Deterrence the American way’: The new B-21 bomber debuts” (英語). Defense News. 2023年11月11日閲覧。
  18. ^ Copp, Tara (2023年11月10日). “Nuclear stealth bomber, the B-21 Raider, takes first test flight” (英語). Defense News. 2023年11月11日閲覧。
  19. ^ Marrow, Michael (2024年1月22日). “B-21 Raider stealth bomber in production, Pentagon says” (英語). Breaking Defense. 2024年1月23日閲覧。
  20. ^ Helfrich, Emma (2023年3月20日). “Air Force Asking For Funds To Modernize B-21 Before It Has Even Flown” (英語). The Drive. 2023年11月12日閲覧。
  21. ^ “Senate panel wants new bomber study, options for 'low-cost' B-52 replacement and 225 B-21s | InsideDefense.com”. insidedefense.com. 2023年11月12日閲覧。
  22. ^ a b “米空軍、次期ステルス爆撃機B-21のエンジン試験開始”. Aviation Wire. 2023年11月12日閲覧。
  23. ^ Hellyer, Marcus (2022年12月11日). “Australia should examine Plan B-21 as it weighs up long-range strike options” (英語). The Strategist. 2023年11月12日閲覧。
  24. ^ Hitchens, Theresa (2021年6月3日). “B-21 Speeds To IOC; ARRW Test Slated For Next Month: Ray” (英語). Breaking Defense. 2023年11月11日閲覧。
  25. ^ Hadley, Greg (2022年12月16日). “Air Force Vice Chief: B-21 Not Just a Bomber, Will Mesh with JADC2, NGAD” (英語). Air & Space Forces Magazine. 2023年11月12日閲覧。
  26. ^ Losey, Stephen (2022年12月3日). “‘Deterrence the American way’: The new B-21 bomber debuts” (英語). Defense News. 2023年11月12日閲覧。
  27. ^ Kuper, Stephen (2020年4月27日). “CSBA CEO calls for serious US consideration of Aussie B-21 collaboration” (英語). www.defenceconnect.com.au. 2024年1月24日閲覧。

関連項目 編集

 
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外部リンク 編集

 

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