P.1214-3

P.1214-3とP.1216の平面シルエット

P.1214-3とP.1216の平面シルエット

BAe P.1214-3は、1970年代から1980年代にかけてイギリスで計画されていた短距離離陸垂直着陸(STOVL)戦闘機

経緯 編集

1970年代中盤、ハリアー系列に続く超音速STOVL機の開発というイギリス国防省の研究目標に従い、ブリティッシュ・エアロスペース(BAe)社とロールス・ロイス社は共同で超音速STOVL機の研究を行っていた。P.1214-3はその中でBAe社のキングストン部門によって構想された案の一つである。

研究が進むにつれて、後述のような奇抜な機体形状にメリットがないことが判明し、研究の本命は後退翼を持つ比較的常識的な形状のP.1216英語版案に移った。しかし、その後もP.1214-3はその奇抜さからBAe社の「客寄せ」に用いられ、1982年ファーンボロー航空ショーではP.1214-3の概念模型が展示されていた。

なお、P.1216の研究はその後も続けられたが、予算不足から実機の開発計画に進展することはなかった。

設計 編集

機体はアフターバーナー(リヒート)使用時に生じる振動と音響圧による機体後部の疲労を防ぐため、2本のブームを持つ一種の双胴機となっている。主翼は研究を目的とした前進翼で、ブームを介して後退角を持つ水平尾翼と繋がり、X字型の翼平面形を構成している[1]垂直尾翼はブーム上に備えられた双垂直尾翼。

搭載する予定だったエンジンは、ハリアーに用いられたロールス・ロイス ペガサスをベースとした、プリーナム・チェンバー・バーニング(PCB)方式のエンジンだった。これは、バイパス空気を排出する前部エンジンノズルの内部に、燃料噴射・燃焼機構が組み込まれた「ブリーナム・チェンバー」と呼ばれる部位が設けられており、これをアフターバーナーのように働せて加速に用いるというものである。また、後部エンジンノズル(燃焼ガスを排出する)はハリアーでは2基備えられていたが、P.1214-3ではアフターバーナーを取り付けるために1基に減らされている。

諸元(計画値) 編集

  • 全長:15.0 m
  • 全幅:9.8 m
  • 全高:4.8 m
  • エンジン:ロールス・ロイス PCB 3ノズル式ターボファン × 1
  • 最大速度:超音速(予定)
  • 武装:
    27mm機関砲 × 2
    AIM-120 AMRAAM(ブーム下パイロン)
    AIM-132 ASRAAM × 2(主翼端)
    各種爆弾(ブーム下パイロン)
  • 乗員:1名

脚注 編集

  1. ^ このため、非公式に「Xウィング」と呼ばれることもある。

参考文献 編集

  • 岡部ださく世界の駄っ作機 番外編 蛇の目の花園』大日本絵画、2004年、51-55頁。ISBN 978-4-499-22853-4 

関連項目 編集