C++Builder(C++ビルダー)は、エンバカデロ・テクノロジーズC/C++統合開発環境 (IDE) である。

C++Builder
開発元 ボーランド (インプライズ) (Turbo以前)
コードギア (2007、2009)
エンバカデロ・テクノロジーズ (2010以降)
最新版
12 Athens / 2023年11月8日 (3か月前) (2023-11-08)[1]
対応OS Microsoft Windows 11[2]
対応言語 日本語英語フランス語ドイツ語
種別 統合開発環境
公式サイト www.embarcadero.com/jp/products/cbuilder
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同社の代表製品である「Delphi」のC/C++版とも言えるRADツールで、Delphiと同様、フォーム上に各種ソフトウェアコンポーネントGUIウィジェット(部品)を貼り付けていくスタイルの直感的なユーザインタフェース (UI) 設計を可能としている。

元々はボーランド(インプライズ)で開発され、コードギアへ移管、同社の買収に伴って現在へ至る。ボーランド社の時代は、Borland C++Builder(ボーランド C++ビルダー; BCB)とも呼ばれていた。

概要 編集

FireMonkey英語版 (FMX) や Visual Component Library (VCL) を利用するIDEを持つDelphiのC++版である。C++コンパイラには、そのための拡張が施されている。また統合開発環境はDelphiとほぼ同一である。

長所 編集

短所 編集

  • 64ビット対応しているのはWindowsとiOSのみ(Delphiはすべてのプラットフォームで64ビットに対応済み)。
  • コンパイラ自体の最適化性能は低い[要出典]
  • ランタイムライブラリを結合すると実行ファイルが大きくなる。(バージョン5の場合、最低でも500Kバイト程度)
  • Windowsの開発環境としては、Visual Studio (Visual C++) よりもマイナーである。Delphiよりも知名度が劣る[要出典]
  • Visual C++インテリセンスに比べて、コード補完機能のレスポンスが悪い[要出典]

歴史 編集

C++Builder 1から5まで 編集

最初の C++Builder は1997年2月26日にリリースされた (日本語版の出荷開始日は1997年3月28日)。Delphiとバージョン番号を合わせた結果、C++ Builder 2は欠番となっている。

25 周年を迎えた 2022年2月26日C++Builder 1.0 Professional (英語版)[4] がアンティークソフトウェアとして無償公開された。

C++Builder 6 編集

2001年。GUIライブラリにVCLに加えクロスプラットフォームのComponent Library for Cross Platform (CLX) を追加した。CLXはWindowsとGNU/Linuxの二つのプラットフォームをサポートするが、CLXを用いたGNU/Linuxの開発ができたのは別製品のKylixのみ。C++BuilderにCLXが搭載されたのはこのバージョンのみで、以降のバージョンに採用されることはなかった。

C++BuilderX路線 編集

C++Builderが使用するVCLは、Delphiにおいて7、8、2005と進化した。またDelphiは、リファクタリング機能などを備えた新統合開発環境「Galileo」に移行した。しかし、これらに対応するC++Builderは発表されなかった。BorlandのC++統合開発環境は、従来のWindowsに加えてLinuxクライアントサイド市場を狙った「Kylix3」の失敗により、Javaで実装されたJBuilderベースの「C++BuilderX」(シープラスプラスビルダーエックス)[5][6]が担うことになったからである。これはRADではなく、統合環境版のBorland C++ Compilerとも言うべきもので、携帯電話などの組み込み機器、およびサーバサイド市場を狙ったものである。結局、この路線は失敗に終わった。無償版の配布も終了した。

復興運動からTurbo C++まで 編集

2004年にC++ Builder ユーザは Paul Gustavson を中心として、ボーランドに公開質問状を送り、新製品の開発を促した。これに対して同社は「C++ Builderコミュニティへの公開書簡」[7]で、これを了承した。

2005年12月21日に「Borland Developer Studio 2006」が発売された。これには約束どおり「C++ Builder 6」の後継製品である、「C++ Builder 2006」(内部バージョン: 10.0)が統合された。

2006年に「Turbo C++」が発表された。これは「Borland Developer Studio 2006」上で他の言語と統合されていた「C++ Builder 2006」を単体化した物である。無料版も提供された。この無償公開版は、Turbo C++ Explorer(内部バージョン: 10.0)という名称にて同社のサイトより配布が行なわれていたが2009年8月26日に日本語版の頒布を終了した。Turbo C++は、C++ Builderとは異なり、プログラミング言語を1つだけしか選べない。

C++ Builder 2007 編集

2007年5月15日に、「C++ Builder 2007」(内部バージョン: 11.0)が発表された。

Windows Vistaに対応した。2007年9月6日には、C++ Builder 2007 を含む統合版「CodeGear RAD Studio 2007」が発表された。

C++ Builder 2009 編集

2008年8月26日に「C++ Builder 2009」(コードネーム:Tiburón、内部バージョン: 12.0)が発表された。

C++ Builder 2009から文字列が全面的にUnicode文字列に置き換わった。

C++ Builder 2010 編集

2009年8月25日に「C++ Builder 2010」(内部バージョン: 14.0)が発表された。

新しいIDE機能/デバッグツールにより開発をさらに効率化。コーディング作業やデバッグ作業をさらにスピードアップ可能である。タッチ対応アプリケーションの開発をサポート。タブレットやタッチパッド、POSやATM向けのアプリケーションをビジュアルに開発可能である。Firebirdサポート、DataSnapなど、広範なデータベース、アーキテクチャ、プロトコルに対応する。

C++ Builder XE 編集

2010年9月2日に「C++ Builder XE」(内部バージョン: 15.0)が発表された。

XEは「Cross Platform Edition」の略である。名称通りクロスプラットフォーム開発環境を目指して開発が進められたものの、不完全であったため見送られている。

2011年2月1日にはStarterエディションが追加発表された。「Turbo C++」以来のエントリー向けエディションであり、無償ではないがコンポーネントのインストールが可能、1,000 USドルを超えない範囲であれば商用利用可能など、制限は大幅に緩和されている。ただし、Starterには旧C++ Builderのライセンスは付属しない。また、同時利用は同一サブネット内において5ライセンスまでとされている。このため教室での利用は向かないとされており、アカデミック版の提供はない。税別価格は18,000円だが、同社または他社の開発ツールユーザーは税別14,000円でアップグレードできる。Delphi Starterとの併用はできず、RAD StudioにもStarterは提供されない。

アカデミック版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010のライセンスが付属する[注釈 1][注釈 2]

C++ Builder XE 2 編集

2011年9月1日に「C++ Builder XE 2」(内部バージョン: 16.0)が発表された。

新たに FireMonkey フレームワークを導入したことにより、HD や 3D に対応した高品質なユーザインタフェース (UI) の設計や、Mac OS X (Intel x86) 向けのマルチプラットフォームアプリケーションの開発が可能になった。また、製品エディションとしてEnterpriseとArchitectの間にUltimateが追加された。

搭載されるコンパイラはBCC32(Windows 32ビット)、BCCOSX (Mac OS X) の2つとなった。

Starterとアカデミック版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XE のライセンスが付属する。

C++ Builder XE 3 編集

2012年9月4日に「C++ Builder XE 3」(内部バージョン: 17.0)が発表された[8]

新たに「Metropolis UI」を導入したことにより、タッチ対応、ライブタイルサポートなどを搭載したWindows 8デスクトップアプリケーションの開発が可能になった。ただしWinRTには対応しない

2012年12月10日にリリースされたアップデートにより、ClangLLVMに対応した64ビットコンパイラが追加提供された[9]。ただし、32ビットコンパイラは従来通りBCC32なため、Win32 / Win64でソースコードに互換性がない事もあった。この問題の解消には後述する「C++ Builder 10 Seattle」の登場を待たなくてはならなかった。

搭載されるコンパイラはBCC32(Windows 32ビット)、BCC64(Windows 64ビット / Clang)、BCCOSX (OS X) の3つとなった。

Starterとアカデミック版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XE、XE2 のライセンスが付属する。

C++ Builder XE 4 編集

2013年4月22日に「C++ Builder XE 4」(内部バージョン: 18.0)が発表された[10]

前バージョンのXE3 から7ヶ月でのバージョンアップとなったため XE3 からのバージョンアップ料金はキャンペーン価格ながら格安の 6,000円となった(Professional版の場合)。

Starterとアカデミック版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE3 のライセンスが付属する。

C++ Builder XE 5 編集

2013年9月12日に「C++ Builder XE 5」(内部バージョン: 19.0)が発表された[11]

2013年12月11日にリリースされたアップデート2により、iOS開発機能が導入された[12]。Professional版でモバイル開発 (iOS) を行うには「Mobile Add-On Pack」を別途購入する必要がある。

搭載されるコンパイラはBCC32(Windows 32ビット)、BCC64(Windows 64ビット / Clang)、BCCOSX (OS X)、BCCIOSARM (iOS デバイス用 / Clang) の4つとなった。

Starter版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE4 のライセンスが付属する。

C++ Builder XE 6 編集

2014年4月16日に「C++ Builder XE 6」(内部バージョン: 20.0)が発表された[13]

このバージョンから対応プラットフォームにAndroidが追加された。これにより、Windows 7/8/8.1(32ビット/64ビット)、iOS (iPhone/iPad)、Android(Google Glassを含む)向けのアプリケーション開発が可能となった。モバイル開発 (iOS / Android) を行う場合、Professional版ではMobile Add-On Packを別途購入する必要がある。

搭載されるコンパイラはBCC32(Windows 32ビット)、BCC64(Windows 64ビット / Clang)、BCCOSX (OS X)、BCCIOSARM(iOS デバイス用 / Clang), BCCAARM (Android / Clang) の5つとなった。

Starter版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE5 のライセンスが付属する。

C++ Builder XE 7 編集

2014年9月2日に「C++ Builder XE 7」(内部バージョン: 21.0)が発表された[14]

Starter版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE6 のライセンスが付属する。

C++ Builder XE 8 編集

2015年4月7日に「C++ Builder XE 8」(内部バージョン: 22.0)が発表された[15]

iOSデバイス用64ビットコンパイラが追加されている。モバイル開発 (iOS / Android) を行う場合、Professional版ではMobile Add-On Packを別途購入する必要がある。

搭載されるコンパイラはBCC32(Windows 32ビット)、BCC64(Windows 64ビット / Clang)、BCCOSX (OS X)、BCCIOSARM(iOSデバイス用32ビット / Clang)、BCCIOSARM64(iOSデバイス用64ビット / Clang)、BCCAARM (Android / Clang) の6つとなった。

Starter版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE7 のライセンスが付属する。

C++ Builder 10 Seattle 編集

2015年9月1日に「C++ Builder 10 Seattle」(内部バージョン: 23.0)が発表された[16]

Clangベースの新しいWin32用コンパイラが追加された。これにより、Win32 / Win64でほぼ同一のコードを書く事ができるようになった。従来のWin32用コンパイラであるBCC32も利用する事ができる。

搭載されるコンパイラはBCC32(Windows 32ビット)、BCC32C(Windows 32ビット / Clang)、BCC64(Windows 64ビット / Clang)、BCCOSX (OS X)、BCCIOSARM(iOS デバイス用 32ビット / Clang)、BCCIOSARM64(iOSデバイス用64ビット / Clang)、BCCAARM (Android / Clang) の7つとなった。

Starter版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE8 のライセンスが付属する。

C++ Builder 10.1 Berlin 編集

2016年4月20日に「C++ Builder 10.1 Berlin」 (コードネーム: BigBen、内部バージョン: 24.0) が発表された[17]

Android 6.0、iOS 10、macOS 10.12 (Sierra) アプリケーション開発に対応。FireMonkey のフォームデザイナも独立表示可能になった (デフォルトでは埋め込みデザイナ)。インストーラの改良により、インストールオプションによってはインストール時間が大幅に短縮されるようになった。このバージョンからUltimateエディションが廃止されている。

2016年8月22日以降、Starter Edition が無償で入手できるようになっている[18]2006年Turbo C++ Explorer 以来、10 年ぶりの無償版である。また、Starter Edition は Turbo Explorer とは異なり、複数のパーソナリティ (言語) が共存できるため、C++Builder と Delphi を同じ環境で利用する事が可能となっている。コンポーネントのインストールにも制限がない。

Starter 版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE8、10 Seattle のライセンスが付属する。

Update 2 で Windows 10 の Anniversary Update に正式対応したため、Update 2 には「Anniversary Edition」という名称がついている。

C++ Builder 10.2 Tokyo 編集

2017年3月22日に「C++ Builder 10.2 Tokyo」(コードネーム: Godzilla、内部バージョン: 25.0)が発表された[19]

Clang ベースのコンパイラにおいてパフォーマンスが向上している。また、インストーラの改良により、インストール時間が大幅に短縮されるようになった。

2017年12月13日にリリースされた Release 2 (10.2.2) において、Enterprise 以上の SKU で RAD Server の単一サイト/単一サーバー配置ライセンスが含まれるようになった。

2018年3月14日にリリースされた Release 3 において、Professional Edition にモバイルサポートが追加された。従来、Mobile Add-On Packとして別売されていたものが統合された形になる。また BCC32X という Win32用コマンドラインコンパイラが新たに追加された。これは下位互換性のためにコマンドラインインターフェイスが非互換だった BCC32C を他のコンパイラ (bcc64、bccios32、bccios64、bccaarm) と共通にしたものである。

搭載されるコンパイラはBCC32(Windows 32ビット)、BCC32C(Windows 32ビット / Clang)、BCC32X(Windows 32ビット / Clang)、BCC64(Windows 64ビット / Clang)、BCCOSX (OS X)、BCCIOSARM(iOS デバイス用 32ビット / Clang)、BCCIOSARM64(iOSデバイス用64ビット / Clang)、BCCAARM (Android / Clang) の8つとなった。

2018年7月19日に、従来の Professional Edition 相当を無償化した「C++Builder Community Edition」がリリースされた。Windows 64bit, macOS, iOS, Android 向けの開発が可能となっている。無償版 Starter Edition とは異なり、「Delphi Community Edition」と同時にインストールする事はできない。

Starter / Community 版を除き、C++Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE8、10 Seattle、10.1 Berlinのライセンスが付属する。

C++ Builder 10.3 Rio 編集

2018年11月22日に「C++ Builder 10.3 Rio」(コードネーム: Carnival、内部バージョン: 26.0)が発表された[20]。同日、Community Edition も更新されている。

Starter Edition は廃止された。Professional Edition にあった別売の FireDAC Client/Server Add-on Pack も廃止され、フル機能の FireDAC を利用するためには Enterprise Edition 以上の SKU が必要となった。

Windows 用 32ビット コンパイラ (BCC32X, BCC32C) にて C++17 をサポートするようになった。

2019年7月19日にリリースされた Release 2 (10.3.2) において、Windows 用 64ビット コンパイラ (BCC64) にて C++17 をサポートするようになった。Language Server Protocol英語版 (LSP) に対応し、コード補完 (Code Insight) の性能が向上した。

Starter / Community 版を除き、C++ Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE8、10 - 10.2 のライセンスが付属する。

C++ Builder 10.4 Sydney 編集

2020年5月27日に「C++ Builder 10.4 Sydney」(コードネーム: Denali、内部バージョン: 27.0)が発表された[21]。同日の Community Edition リリースはなかった。

Windows 用 64ビット コンパイラ (BCC64) にて C++17 をサポートするようになった。LLDBベースの新しいWin64 C++デバッガが追加された。数多くの C++ ライブラリが移植されており、追加で GetIt パッケージマネージャからもインストールできる。

macOS Catalina において32ビットアプリが動作しなくなったため、ターゲットプラットフォームから "macOS 32ビット" が選べなくなり、BCCOSX が付属しなくなった。同様に "iOS デバイス 32ビット" も選択できなくなっているが、BCCIOSARM は含まれている。これにより、C++ Builder による macOS 開発は macOS 64ビットコンパイラの登場を待たねばならなくなった。

搭載されるコンパイラはBCC32(Windows 32ビット)、BCC32C(Windows 32ビット / Clang)、BCC32X(Windows 32ビット / Clang)、BCC64(Windows 64ビット / Clang)、BCCIOSARM(iOS デバイス用 32ビット / Clang)、BCCIOSARM64(iOSデバイス用64ビット / Clang)、BCCAARM (Android 32ビット/ Clang) の7つとなった。

2021年7月19日に 10.4.2 Community Edition がリリースされた。[22]

Community 版を除き、C++ Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE8、10 - 10.3 のライセンスが付属する。

C++ Builder 11 Alexandria 編集

2021年9月10日に「C++ Builder Alexandria」(コードネーム: Olympus、内部バージョン: 28.0)が発表された[23]

IDE が高 DPI に対応。フォームデザイナが VCL スタイルを使用してレンダリングできるようになった。コードフォーマッタが刷新された。前バージョンでサポート外になっていた iOSデバイス 32bit 用コンパイラが付属しなくなった。

C++ Builder 2009 以降、Windows 用コンパイラが生成する実行形式ファイルの PE ヘッダーには OS Version / Subsystem Version ともに 5.0 が設定されていたが、11.0 Alexandria では 6.0 が設定されている。このため、11.0 Alexandria で生成された実行形式ファイルは Windows XP 以前の OS では動作しない。

搭載されるコンパイラはBCC32(Windows 32ビット)、BCC32C(Windows 32ビット / Clang)、BCC32X(Windows 32ビット / Clang)、BCC64(Windows 64ビット / Clang)、BCCIOSARM64(iOSデバイス用64ビット / Clang)、BCCAARM (Android 32ビット/ Clang) の6つとなった。

2023年2月28日に製品の品質向上を目的とした Release 3 (11.3) がリリースされた。

2023年4月27日に 11.3 Community Edition がリリースされた[24]

Community 版を除き、C++ Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE8、10 - 10.4 のライセンスが付属する。

C++ Builder 12 Athens 編集

2023年11月8日に「C++ Builder 12 Athens」(コードネーム: Yukon、内部バージョン: 29.0)が発表された[25]

iOS 64ビットプラットフォームと Android 32ビットプラットフォームがサポートされなくなった。プレビューコンパイラとして Clang 15 対応の BCC64X が追加された。このコンパイラは IDE からのコンパイルやリンクには対応していない。

IDE に Visual Assist英語版 が統合された。VCL は MDI のサポートが強化され、モダンな MDI アプリケーションを構築可能になっている。FireMonkey がサポートするすべてのプラットフォームに対して、Skia サポートが追加された。

搭載されるコンパイラはBCC32(Windows 32ビット)、BCC32C(Windows 32ビット / Clang)、BCC32X(Windows 32ビット / Clang)、BCC64(Windows 64ビット / Clang 5)、BCC64X(Windows 64ビット / Clang 15)の5つとなり、Windows 専用となった。

Community 版を除き、C++ Builder 6、2007、2009、2010、XE - XE8、10 - 11 のライセンスが付属する。

今後のC++Builder 編集

macOSの64ビット対応は、2020年の計画には含まれていない[26]。今後の64ビット対応の際には、Intelベース (x64) ではなく、ARM64(Apple Silicon)のサポートに直接移行する可能性があるとされている。

C++Builder Community Edition 編集

10.2 Tokyo より完全無料版の Community Edition[27] が提供されている。

有料の C++Builder Professional と同等の機能を持ち、従来の Win32 アプリケーションのみならず Windows 64bit, macOS, iOS, Android の開発が可能となっている。

過去の無料版 編集

  • C++BuilderX Personal が無料で提供されていた[28]
  • C++Builder 2006 Update2 相当の Turbo C++ for Win32 Explorer が無料で提供されていた。
  • C++Builder 10.1 Berlin から Starter Edition が無料で提供されていた。
  • C++Builder 10.2 Tokyo から Community Edition が無料で提供されている。

GUIライブラリ 編集

Visual Component Library (VCL) 編集

C++Builderの全バージョン、全てのエディションで採用されているWindows専用のGUIライブラリである。

  • 高機能であり、C++BuilderのメインのGUIライブラリとして位置づけられる。
  • Windows専用だけあってWindows固有のプログラミングテクニックがそのまま通用することが多い。
  • XEからIEコンポーネント (TWebBrowserなど) の高度な処理に必要なATLライブラリが付属されなくなっている。
  • XE8までは2009または2010のバージョンからATLライブラリをコピーして使うことはできる。
  • VCLはDelphi (Object Pascal) で記述されている。

FireMonkey (FMX) 編集

C++BuilderではXE2から採用されているクロスプラットフォームのGUIライブラリである。

  • Windows、Mac OS、Android、iOS (iPhone、iPad) と幅広く対応するが、GNU/Linuxには対応しない。
  • VCLとの互換性が低く、VCL間の移植は困難。
  • VCLと比べると機能は十分とはいえずVCLの完全な代替にはならない。
  • VCLと比べるとWindows固有の機能を呼び出すことが難しい場合がある。
  • Delphi と異なり、C++BuilderでiOSの開発をする場合はiOSシミュレータが使えない (iOSシミュレータ対応のコンパイラが存在しない)[29]
  • FireMonkeyはDelphi (Object Pascal) で記述されている。

Component Library for Cross Platform (CLX) 編集

Microsoft WindowsとGNU/Linuxに対応したクロスプラットフォームの古いGUIライブラリである。

  • C++Builder 6とDelphi 6とKylixの全バージョンで採用された。
  • 長らく前に開発は中止され現在のバージョンでは採用されていない。
  • 現在でもProfessional以上のSKUの最新バージョンを購入することによりC++Builder 6とCLXを入手することが可能。
  • QtベースのVCLライクなGUIライブラリであり、FireMonkeyと比べると格段にVCLとの互換性が高い。
  • VCLにない機能もあるため現在でもWindowsで使う利点がある。
  • VCLと比べるとWindows固有の機能を呼び出すことが難しい場合がある。
  • C++Builder 6とDelphi 6のVCLはUnicodeに全く対応していなかったがCLXは一部分ながら対応している。
  • C++Builder 6とCLXの組み合わせで現在の最新Windows向けの開発も可能。
  • GNU/LinuxはKylix発売当時と現在では大きく仕様が変わっているためKylixで現在のGNU/Linux向けの開発はできない。
  • 従って現在はWindows専用のようになっておりクロスプラットフォーム性は失われている。
  • WindowsとGNU/Linuxではコンパイラが違いCLXの仕様も少し違っていたためKylixのC++とのソース互換性はそれほど高くなかった。
  • CLXのベース部分はQtである(QtはC++で実装されているC++専用のライブラリ)。

その他 編集

  • 2000年Borland C++ Compiler (BCC) 5.5 が公開された。これはコンパイラリンケージエディタ、標準ライブラリおよび開発ツールの無料版である。開発はRADではなく、コマンドラインから行う。当時、Windows用の無償のC/C++コンパイラは、ほかにGCCほどしかなく、Borland C++が広く知られることになった。BCC 5.5は 2018 年現在もエンバカデロのサイトから無償ダウンロードして使用できる[30]が、保証やサポートはなされていない。
  • C++Builderの新しい版[要出典]ではMFCDirectXなどもサポートしている。
  • バージョンやパッケージの種類によってはDelphiなどのCD-ROMも付属する。
  • DelphiやC++Builderの開発者の一部はマイクロソフトに移籍して、C#言語やVisual C#などを開発している。
  • 2016年に無償版である Free C++ Compiler が公開された。Clang ベースで、最新のものは C++17 に対応している[31]
  • 2018年に無償版である C++Builder Community Edition が公開された[32]。Professional Edition 相当。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ アップグレードした場合、元のバージョンと同じバージョンのライセンスの重複取得はできない。
  2. ^ 旧バージョンライセンスの取得は、購入180日以内に行う必要がある。

出典 編集

  1. ^ 『RAD Studio 12 Athens』の提供開始” (2023年11月8日). 2023年11月8日閲覧。
  2. ^ RAD Studio: 動作環境 - エンバカデロ・テクノロジーズ
  3. ^ RTTI のコストを理解する”. 2008年8月5日閲覧。[リンク切れ]
  4. ^ Historic C++Builder 1 Professional Install”. Embarcadero Technologies. 2022年2月26日閲覧。
  5. ^ エンタープライズ:変わり始めたボーランドの製品戦略――「C++製品群は、C++BuilderXに統合される」
  6. ^ ボーランド,複数のOSで動作し,複数のC/C++コンパイラに対応する統合開発環境を発売 | 日経クロステック(xTECH)
  7. ^ ボーランド (2004年12月14日). “Open Letter to the C++Builder Community”. 2006年9月21日閲覧。
  8. ^ エンバカデロ、Windows 8/Mountain Lionに対応したビジュアル開発環境最新版、Delphi® XE3とC++Builder® XE3を発表”. 2015年9月6日閲覧。
  9. ^ EmbarcaderoがDelphiとC++ Builderをアップデートし、 HTML5 Builderをリリース。
  10. ^ エンバカデロ、iPhone/iPadアプリのネイティブ開発を実現したマルチデバイス開発ツールRAD Studio XE4を世界同時発表”. 2015年9月6日閲覧。
  11. ^ エンバカデロ、AndroidおよびiOS向けネイティブ開発をサポートしたRAD Studio XE5を本日より販売開始”. 2015年9月6日閲覧。
  12. ^ エンバカデロ、C++Builder XE5で新たにiOS向け開発をサポート”. 2015年9月6日閲覧。
  13. ^ エンバカデロ、デスクトップからモバイル、ウェアラブルに対応したビジュアル開発環境「RAD Studio XE6」を発表”. 2015年9月6日閲覧。
  14. ^ エンバカデロ、Windows開発をモバイル、IoT対応に拡張するビジュアル開発環境「RAD Studio XE7」を発表”. 2015年9月6日閲覧。
  15. ^ エンバカデロ、マルチデバイス ネイティブ開発環境の新バージョン「RAD Studio XE8」を発表”. 2015年9月6日閲覧。
  16. ^ エンバカデロ、Windows 10対応のマルチデバイスネイティブ開発環境の新バージョン「RAD Studio 10 Seattle」を発表”. 2016年5月7日閲覧。
  17. ^ エンバカデロ、マルチデバイス向けビジュアル開発ツールの新リリース「RAD Studio 10.1 Berlin」を本日より販売開始”. 2016年5月7日閲覧。
  18. ^ Webセミナー「C++ BootCamp」とC++ Builder Starter無料ダウンロードのご案内 [JAPAN]”. 2016年8月26日閲覧。
  19. ^ RAD Studio 10.2 is here - Get Delphi Linux Server Support today!”. 2017年3月23日閲覧。
  20. ^ エンバカデロ、RAD Studio 10.3を11月22日から提供開始  ~Webアプリ開発のSenchaとの連携性アップや最新OSへの対応強化~”. 2018年11月22日閲覧。
  21. ^ エンバカデロ、RAD Studio 10.4 Sydneyを提供開始 4K対応のモダンUI開発やLLDBベースの新しいデバッガ搭載など 新機能追加”. 2020年5月28日閲覧。
  22. ^ Delphi & C++Builder FREE Community Editions Updated to Version 10.4.2 Are Now Available!”. 2021年7月20日閲覧。
  23. ^ エンバカデロ、Windows 11やApple M1に対応した 新バージョン『RAD Studio 11 Alexandria』提供開始”. 2021年9月11日閲覧。
  24. ^ Delphi 11 and C++Builder 11 Community Editions Released!”. 2023年4月27日閲覧。
  25. ^ 『RAD Studio 12 Athens』の提供開始”. 2023年11月8日閲覧。
  26. ^ C++Builderおよびプラットフォームのサポート
  27. ^ C++Builder - Community Edition”. Embarcadero Technologies. 2019年1月15日閲覧。
  28. ^ C++Builder 6 and C++BuilderX Keys
  29. ^ iOS シミュレータでの iOS アプリケーションの実行 - RAD Studio
  30. ^ C++Compiler/Turbo Debuggerダウンロード登録フォーム”. 2018年6月7日閲覧。
  31. ^ C++Compiler - FREE TOOL”. 2019年1月15日閲覧。
  32. ^ C++Builder Community Edition”. 2020年5月29日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集