トランザール C-160
Transall C-160

ドイツ空軍所属の C-160 トランザール ノイブランデンブルク空港にて2013年撮影

ドイツ空軍所属の C-160 トランザール
ノイブランデンブルク空港にて2013年撮影

  • 運用者

トランザール C-160Transall C-160)は、フランス西ドイツ(当時)が共同開発した双発の戦術輸送機である。一部では民間機としても運用された。

エアエキスポ2007(フランスの航空ショー『エアエキスポ(英語版)』の2007年大会)にて
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エアエキスポ2007(フランスの航空ショーエアエキスポ英語版』の2007年大会)にて
着陸態勢に入ったドイツ空軍所属機。ランツベルク・アム・レヒ航空基地にて、2008年撮影。
ドイツ空軍所属機。ベルリン国際航空宇宙ショー2012年大会にて。
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ドイツ空軍所属機。ベルリン国際航空宇宙ショー2012年大会にて。

「トランザール」の名は、フランスと西ドイツの企業が共同出資して設立した「トランスポルト・アリアンツ社 (Transport Allianz Inc.)」の略称に由来する。

歴史 編集

本機は、フランス空軍および西ドイツ空軍が運用していたノール ノラトラ輸送機の代替として開発された[2]。1957年に両国の共同開発が合意され、1959年には開発と生産を担う合弁企業としてトランザールTransporter Allianz:輸送機連合)が設立された[2]

開発にあたっては、既にアメリカ合衆国ロッキード社が生産に入っていたC-130も参考にされており、機体の大きさはほぼ同じで、主翼を高翼配置で取り付けて、胴体尾部にローディングランプを兼ねたドアを配置するといった基本構造も類似している[2]。ただし強力なターボプロップエンジンであるロールス・ロイス タインの採用を前提に開発されたことから双発機となっているほか、ヨーロッパ大陸の鉄道貨物の規格にあわせて貨物室の断面が大きく採られており[2]、また滑走路にかける負荷を表すACN(Aircraft Classification Numberの値も小さくなっている[3]

試作機は1963年2月25日に初飛行した[1]。生産にあたっては、VFW社がプロジェクトマネジメントおよび主胴体・尾部を、メッサーシュミット社(ジーベル社も協力)が主翼中央部を、HFB社が機首部を、また翼および機関部はノール社を担当した[4]。まず1972年までに169機が生産されて、一度生産を終了した[5]。その後、1977年にフランスから追加発注を受けて生産が再開された[2]。最終的に合計214機が生産され、南アフリカ共和国トルコインドネシアなどにも輸出された[1]

フランス空軍に納入されたC-160は、空中給油や情報収集など幅広い任務に運用された。本機は湾岸戦争にも参加しており、25年以上にわたって運用されている。

2020年代初頭、同機種は耐用年数に達しつつある。南アフリカ共和国では1997年退役している。ドイツ空軍エアバス社の4発軍用輸送機A-400M アトラスの導入に伴ってC-160を2018年に退役させるべく計画していたが、A-400Mの開発は遅延し、C-160の現役運用は2021年まで延期されることになった[1]。C-160のメンテナンスを請け負ってきたエアバス社は、2021年4月2日、同機種の最後のオーバーホールを終えてドイツ空軍に引き渡した[1]

運用実績 編集

軍用 編集

民間用 編集

派生型 編集

プロトタイプ 編集

C-160
原型機。

第1世代 編集

 
C-160D / トルコ空軍曲技飛行チーム「ターキッシュ・スターズ英語版」の機体。RIAT 2008(ロイヤル・インターナショナル・エア・タトゥー英語版の2008年大会)にて撮影。
C-160A
前期生産型。
C-160D
西ドイツ仕様のA型。
C-160T
トルコに譲渡されたD型。
C-160F
フランス仕様のA型。
C-160P
エールフランスが買い取って改修したF型。
C-160Z
南アフリカ共和国仕様のA型。

第2世代 編集

   
図説:C-160 / フランス空軍 第61輸送航空団第3飛行隊「ポワトゥー」 (fr) 所属機。
図説:C-160NG / 同じく 第64輸送航空団第2飛行隊「アンジュー」 (fr) 所属機。
C-160NG
後期生産型。燃料タンクの容量を増加し、空中給油装置を設置するなどして航続距離を伸ばしている。フランス空軍インドネシアの民間航空会社が購入(cf. 民間用)。
C-160AAA
機首と尾部にレドームをつけた早期警戒機。計画のみ。
C-160S
洋上対潜哨戒機。計画のみ。
C-160SE
電子情報収集機(ELINT機)。計画のみ。
C-160ASF
エグゾセ空対艦ミサイルの搭載が可能なS型。計画のみ。
C-160H アスタルト (C-160H Astarte)
通信中継機。
C-160G ガブリエル (C-160G Gabriel)
ECM訓練専用機。
C-160R
F型とNG型に延命プログラムを施したもの。

性能・諸元 (第2世代) 編集

 
C-160の三面図

出典: Taylor 1982, pp. 118–120

諸元

性能

  • 超過禁止速度: 593 km/h (320 kt ※高度4,875 m以下の場合)
  • 失速速度: 177 km/h (95 kt)
  • 航続距離: 1,853 km (1,000海里) ※最大搭載量
  • 実用上昇限度: 8,230 m(27,000 ft) ※45,000 kg AUW
  • 上昇率: 396 m/分 (1,300 ft/分)
  • 離陸滑走距離: 730 m (2,395 ft)
  • 着陸滑走距離: 550 m (1,800 ft)
  • 翼面荷重: 319 kg/m2 (65.34 lb/sq ft)
  • 馬力荷重(プロペラ): 5.61 kg/kW (9.22 lb/shp)


  使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

登場作品 編集

映画 編集

TAXi2
主人公たちの乗るタクシーパリ上空から降下させる際に登場。

ゲーム 編集

Just Cause
「Agency cargo plane」の名称で登場する。大統領専用機として使用されており、最終ミッションで搭乗することになる。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 英語版 "en:Manunggal Air Service" で同サイトが出典として表示された時点。

出典 編集

  1. ^ a b c d e f ドイツ空軍のC-160「トランザール」輸送機 2021年末に退役予定 エアバス」『乗りものニュース』株式会社メディア・ヴァーグ、2021年4月7日。2021年4月8日閲覧。
  2. ^ a b c d e 細谷 2023.
  3. ^ Joetey Attariwala (October 26, 2017), Coming to a Theatre near You, Armada International, オリジナルの2020-10-01時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20201001002722/https://www.armadainternational.com/2017/10/airbus-a400m-strategic-turboprop-freighter-programme/ 
  4. ^ Taylor 1966, pp. 76–77.
  5. ^ Taylor 1982, pp. 118–120.
  6. ^ Manunggal Air Services” (English). Rzjets.net. 2021年4月8日閲覧。

参考文献 編集

  • 細谷泰正「エアバスの始祖か 輸送機C-160トランザール初飛行から60年 欧州共同開発の背景に“鉄道”」『乗りものニュース』、株式会社メディア・ヴァーグ、2023年2月25日https://trafficnews.jp/post/124533 
  • Taylor, John W.R. (1966), Jane's All the World's Aircraft 1965-66, Sampson Low, NCID BA01536928 
  • Taylor, John W.R. (1982), Jane's All the World's Aircraft 1982-83, Jane's Publishing Company Ltd., ISBN 978-0710607485 

関連項目 編集