DHL寒天培地(ディーエイチエルかんてんばいち、Deoxycholate-hydrogen sulfide-lactose agar)とは、腸内細菌科選択培地として利用される寒天培地の1つ。サルモネラ属菌、赤痢菌エルシニア属菌などの分離に用いられる[1]乳糖白糖分解菌は赤色から桃色の不透明なコロニーを形成する。乳糖、白糖非分解菌は無色透明なコロニーを形成する。硫化水素産生菌は黒色コロニーを形成する。例えば、DHL寒天培地上で大腸菌は赤色コロニー、赤痢菌は無色コロニーを形成し、サルモネラ属菌の大部分は黒色コロニーを形成するが、一部に黒色コロニーを形成しないものも存在する[2]

組成の一例(精製水1 L )[3]

肉エキス 3 g
カゼインペプトン 10 g
カゼイン-酸水解物 5 g
獣肉ペプトン 5 g
乳糖 15 g
白糖 10 g
デオキシコール酸ナトリウム 1 g
チオ硫酸ナトリウム 2.5 g
クエン酸ナトリウム 1 g
クエン酸鉄アンモニウム 1 g
ニュートラルレッド 0.03 g
寒天 15 g

上記の組成を、純水に入れ加温溶解する(pH 7.0)。高圧蒸気滅菌を行ってはならない。

脚注 編集

  1. ^ 特にサルモネラ属と赤痢菌の分離に用られる旨は、坂崎ら(1990:125)に記載がある。エルシニア属は株によっては発育が抑制される場合があるため(貫名 2009)、注意が必要である。
  2. ^ 坂崎ら(1990:127)によれば、サルモネラ属は菌株によっては培養時間が短いと黒色が明瞭でないこともあるが、それでも集落の中心部には明瞭な黒色が見られるはずであり、かつ、それを室温に放置すると黒色はより鮮明になるとしている。
  3. ^ 坂崎ら 1990:126

参考文献 編集

  • 貫名正文、2009「特集 エルシニア シュードツベルクローシス感染症」『感染症発生動向調査 月報』(神戸市)2009年3月25日、http://www.city.kobe.lg.jp/life/health/infection/trend/m/kg54_1.html 、2012年1月28日閲覧。
  • 坂崎利一、田村和満、吉崎悦郎、三木寛二、1990『新 細菌培地学講座・下II 第二版』(近代出版)1990年1月20日、ISBN 4-87402-468-8

関連項目 編集