データURIスキーム英語: data URI scheme)とは、あたかも外部リソースを読み込むのと同じように、ウェブページにインラインにデータを埋めこむ手段を提供するURIスキームである。ファイルリテラル、あるいはヒアドキュメントの一形態である。この技術を利用することで、通常は別のデータに分かれている画像スタイルシートなどの要素を、1つのHTTPリクエストによって読み込むことが可能になる。これにより、HTTPリクエスト数が削減され、データの転送効率が改善される可能性がある[1]。また、一部のブラウザ拡張機能でも、画像などのコンテンツを単一のHTMLファイル内にパッケージングしてユーザーに届けるために利用されている[2][3]。2018年現在、データURIは主要なほとんどのブラウザで完全にサポートされている。ただし、Internet ExplorerMicrosoft Edgeでは、一部の機能が実装されていない[4]

フルサポートされたブラウザでは、JavaScriptで生成されたコンテンツであってもwindow.location.hrefに値を設定することで通常の外部ファイルと同様に「ダウンロード」をすることができる。

2018年には、WHATWGのFetch Standardで改めて定義がなされることとなった[5]

長所 編集

  • データをテキスト形式で埋め込むのでHTTPリクエストやヘッダのトラフィックが低減できる。データによってはそのまま埋め込むことができないためエンコードのためのオーバーヘッドが起こる(例えば、600バイトのデータをデータURIスキームで埋め込む場合、Base64エンコードされ約800バイトになり、200バイトほどデータ量は増える)が、それでもトラフィックを軽減できる事の方が有用である。
  • 小さなファイルを多数転送するよりもデータURIスキームを使った方が高速である。TCPのファイル転送にはスロースタートの仕組みが採用されている。小さなファイル1つ1つがTCPコネクションを要求した場合、転送速度はラウンドトリップタイム帯域幅に応じて制限される。(ただし、HTTP/1.1で規定された持続的接続 (Keep alive)が有効であったり、HTTP/2を使用していたりする場合、この長所は価値が下がる。)
  • HTTPSを使用したウェブページを閲覧する場合、ブラウザはページ内で発生した全てのダウンロードに対してセキュアな接続を要求するか、一部セキュリティで守られていない要素があることをユーザに警告する。サーバーの設定にミスがあった場合、通常のHTTPリクエストに比べてHTTPSのリクエストは大きなオーバーヘッドが発生する。データURIスキームにより全てのファイルを1つにまとめることができればこのような心配はしなくてもよい。
  • 多くのブラウザは1つのドメイン名に対する接続数に限りがある[6]データURIスキームにより全てのファイルを1つにまとめることができれば接続数の制限は問題にはならない。
  • 外部データへのアクセスが制限されている環境で有用である。
  • 1つのHTMLファイルでマルチメディアを表現することができる。
  • 電子メールで外部ファイルや添付ファイルを使用せずに画像を表示できる。

短所 編集

  • データURIスキームによってダウンロードされたファイルは個別にキャッシュされない。HTMLCSSのファイルがダウンロードされるたびにデータもダウンロードされる。
  • HTMLCSSのファイルが更新されるたびに、その作者はエンコードや埋め込みをやり直さなければならない。
  • 古いInternet Explorerでサポートされていない。バージョン8ではデータサイズが32kBに制限されている。
  • Internet Explorerのバージョン8とバージョン9では画像でしか使用できない。JavaScriptで生成されたコンテンツはダウンロードすることができない[7]データURIスキームではデータは単純な文字列として表現される。ブラウザなど、多くの処理環境ではメタデータデータ圧縮コンテントネゴシエーションのような複雑な処理はサポートしないであろう。他にサポートされないであろうと思われる要素に、電子メールクライアントのマルチパート形式やmessage/rfc822などがある。
  • Base64エンコードされたデータは元のサイズより1/3程度大きくなる(バイト単位)。ただし、このオーバーヘッドはHTTPサーバーがレスポンスをgzipで圧縮した場合2~3%にまで軽減される[8]
  • データURIスキームでダウンロードしたファイルには通常のリンクからダウンロードしたファイルと違ってファイル名がない。保存するときのファイル名はMIMEタイプごとに用意されたデフォルトの物となる。ただし、HTML5ではa要素にダウンロード時のファイル名を指定できるdownload属性が追加されたため、一部のブラウザではこの問題は解決した。
  • 例え1つのウェブページに埋め込むデータであっても、同じデータを複数使用すると使用された数だけコピーが必要となる。外部データの場合はいくつデータを使用する場合でも1つで済む。
  • データURIスキームアンチウイルスソフトウェアのフィルタリング処理を難しくする[9]

書式 編集

データURIの構文は、IETFが1998年に標準プロトコル案RFC 2397として定義され[10]、続いて、URIスキームの構文が定義された。構文は、以下の通りである。

data:[<MIME-type>][;charset=<encoding>][;base64],<data>

エンコードが必要なデータに対してはBase64エンコード形式を指定する。エンコード形式の指定が無い場合、データはURLで使用可能な文字[11]についてはASCIIコードで記述し、それ以外の文字については標準の%xx形式(パーセントエンコーディング)でエンコードする。MIMEタイプが省かれた場合、デフォルト値のtext/plain;charset=US-ASCIIが指定されたものとする。(その場合、charsetだけの指定も可能。)

いくつかのブラウザ (Google Chrome, Opera, Safari, Firefox) では;charset;base64の順番が逆になっても正常に処理される。Internet Explorerでは;charset;base64の順番は逆になってはならない。データサイズはオクテット単位である。

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HTML 編集

赤い小さな点の画像 ( ) を表示する HTML:

<img src="data:image/png;base64,iVBORw0KGgoAAA
ANSUhEUgAAAAUAAAAFCAYAAACNbyblAAAAHElEQVQI12P4
//8/w38GIAXDIBKE0DHxgljNBAAO9TXL0Y4OHwAAAABJRU
5ErkJggg==" alt="Red dot" />

この例はフォーマットのために改行されている。 Data URI も含めた実際の URI では、制御文字 (ASCII 0 から 31 までと 127) とスペース (ASCII 32) は除外文字である。つまり、空白文字が data URI に入っていてはいけない。

しかし、HTML4 と HTML5 においては、要素の属性値 (上記の "src" のような) の中の改行は無視される [要出典]。 したがって、上記の例の data URI は改行が無視されて正常に処理される。

これは HTML の機能であって data URI の機能ではないため、HTML 以外では URI 内の空白文字が無視される挙動は使えないことに留意。

CSS 編集

背景に画像を含む CSS ルール:

ul.checklist li.complete {
    padding-left: 20px;
    background: white url('data:image/png;base64,iVB\
ORw0KGgoAAAANSUhEUgAAABAAAAAQAQMAAAAlPW0iAAAABlBMVEU\
AAAD///+l2Z/dAAAAM0lEQVR4nGP4/5/h/1+G/58ZDrAz3D/McH8\
yw83NDDeNGe4Ug9C9zwz3gVLMDA/A6P9/AFGGFyjOXZtQAAAAAEl\
FTkSuQmCC') no-repeat scroll left top;
}

\ + <LF> の行末は、次行に継続することを表す CSS の機能である。これは CSS 解釈時に除去されて、data URI が空白のないように正しく再構築される。


JavaScript 編集

次のスクリプトは埋め込みデータを元にサブウィンドウを表示する。脚注などに使用できる。

window.open('data:text/html;charset=utf-8,' + 
    encodeURIComponent( // URL書式にエスケープ
        '<!DOCTYPE html>'+
        '<html lang="en">'+
        '<head><title>Embedded Window</title></head>'+
        '<body><h1>42</h1></body>'+
        '</html>'
    )
);

この例をInternet Explorer 8で表示しようとしても実行ファイルのセキュリティ制限のため失敗する。(訳注:en版のwikipediaにあった例をそのまま記述してある。セキュリティについて考慮すべき例なのでInternet Explorer 8以外でも注意。)


SVG 編集

 
JPEG画像を埋め込んだSVG画像の例

Base64 エンコードの JPEG 画像を埋め込んだ SVG

<svg>
<image width="64" height="24" href="data:image/jpeg;base64,
/9j/4AAQSkZJRgABAQEAYABgAAD/2wBDADIiJSwlHzIsKSw4NTI7S31RS0VFS5ltc1p9tZ++u7Kf
r6zI4f/zyNT/16yv+v/9////////wfD/////////////2wBDATU4OEtCS5NRUZP/zq/O////////
////////////////////////////////////////////////////////////wAARCAAYAEADAREA
AhEBAxEB/8QAGQAAAgMBAAAAAAAAAAAAAAAAAQMAAgQF/8QAJRABAAIBBAEEAgMAAAAAAAAAAQIR
AAMSITEEEyJBgTORUWFx/8QAFAEBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAP/EABQRAQAAAAAAAAAAAAAAAAAA
AAD/2gAMAwEAAhEDEQA/AOgM52xQDrjvAV5Xv0vfKUALlTQfeBm0HThMNHXkL0Lw/swN5qgA8yT4
MCS1OEOJV8mBz9Z05yfW8iSx7p4j+jA1aD6Wj7ZMzstsfvAas4UyRHvjrAkC9KhpLMClQntlqFc2
X1gUj4viwVObKrddH9YDoHvuujAEuNV+bLwFS8XxdSr+Cq3Vf+4F5RgQl6ZR2p1eAzU/HX80YBYy
JLCuexwJCO2O1bwCRidAfWBSctswbI12GAJT3yiwFR7+MBjGK2g/WAJR3FdF84E2rK5VR0YH/9k="/>
</svg>

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ Using Data URIs to Speed Up Your Website”. Treehouse Blog (2014年3月27日). 2018年8月26日閲覧。
  2. ^ SingleFile - Chrome Web Store”. Chrome Web Store. 2018年8月25日閲覧。
  3. ^ SingleFile – Add-ons for Firefox”. Firefox Add-ons. 2018年8月25日閲覧。
  4. ^ Deveria, Alexis (2015年7月). “Can I use...”. 2015年8月31日閲覧。
  5. ^ Define data: URLs by annevk · Pull Request #579 · whatwg/fetch”. GitHub (2017年8月14日). 2018年5月26日閲覧。
  6. ^ RFC 2616 Section 8.1.4”. Internet Engineering Task Force. 2012年12月14日閲覧。
  7. ^ data Protocol” (英語). Microsoft. 2014年3月16日閲覧。
  8. ^ Martin Isenburg, Jack Snoeyink (2003年). “Binary Compression Rates for ASCII Formats”. 2011年4月7日閲覧。
  9. ^ Masinter, L (1998年8月). “Security”. RFC 2397 - The "data" URL scheme. Internet Engineering Task Force. pp. 2. 2008年8月12日閲覧。
  10. ^ Masinter, L (1998年8月). “RFC [https://datatracker.ietf.org/doc/html/rfc2397 2397 - The "data" URL scheme]”. Internet Engineering Task Force. 2008年8月12日閲覧。
  11. ^ safe URL characters Uniform Resource Identifiers (URI): Generic Syntax”. 2012年12月14日閲覧。

外部リンク 編集