PBX爆薬(PBXばくやく、Polymer bonded explosive または Plastic bonded explosive) とは、爆薬の粒子をナイロンポリスチレンなどのプラスチックと水中で混合し溶剤を気化させて、プラスチックでコーティングした爆薬粒子に加工したものである。

解説 編集

1940年代終わりから1950年代初頭にかけてアメリカRDXHMXを各種のバインダーでコーティングする研究から始まり、ミサイルや爆弾などの爆薬として使用されるようになった。開発の背景には火災に起因した爆発事故が空母などの船舶上、鉄道輸送中、倉庫火災などで頻発して甚大な被害をもたらしたことがあった。このような事故の教訓から火薬類の安全性の向上が真剣に検討されるようになった。火災などの高温環境に晒されても穏やかに燃焼するだけで爆轟しない、高速の銃弾や破片が命中した場合でも爆轟しない安全な火薬類の研究からPBX爆薬が生み出された。

填薬法には二種類ある。

圧填型
爆薬とバインダーで造粒してから圧搾形成する。
注填型
爆薬とバインダーと可塑剤を混合して型に流しこんだ後に固める。

特徴 編集

  1. 機械的強度が高い。
  2. 爆発性能が良い。圧填する場合に理論上の最大値で97%もの高い充填率を出すことが出来るためである。
  3. 化学的安定性が高い。
  4. 衝撃に対して鈍感である。従来の爆薬の10%〜40%程度しかない。
  5. 高温に対して鈍感である。緩やかに燃焼するだけで爆轟しない。

種類 編集

主な製品の種類
名称 基剤 バインダー 爆速 用途
X-0242 HMX 92% 8% 重合体
EDC-37 HMX 91%/NC 9% ポリウレタン、ゴム 8700m/sec
PBXN-5 HMX 95% 5% フルオロエラストマー ミサイル
PBXN-103 AP 40% NC 6% アルミ 27% ポリウレタン ゴム 6200m/sec 魚雷機雷
PBXN-106 RDX ポリウレタン ゴム ミサイル
PBXN-109 RDX 65% アルミ 20% 末端水酸基ポリブタジエン 通常爆弾
PBXN-110 HMX 88% ポリウレタン ゴム 8300m/sec 成形炸薬弾
PBXN-111 RDX 20% AP 43% アルミ 25% ポリウレタン ゴム 5500m/sec 魚雷、機雷
PBXN-301 PETN 80% ポリウレタン ゴム 7300m/sec 特殊用途
LX-14-0 HMX 95.5% Estane & 5702-Fl 4.5%
LX-10-0 HMX 95% 合成ゴム 5%
LX-10-1 HMX 94.5% 合成ゴム 5.5%
PBX-9501 HMX 95% Estane 2.5%; BDNPA-F 2.5%
PBX-9404 HMX 94% NC 3%; CEF 3% 核兵器
LX-09-1 HMX 93.3% BDNPA 4.4%; FEFO 2.3%
LX-09-0 HMX 93% BDNPA 4.6%; FEFO 2.4%
LX-07-2 HMX 90% 合成ゴム 10%
PBX-9011 HMX 90% Estane and 5703-Fl 10%
LX-04-1 HMX 85% 合成ゴム 15%
LX-11-0 HMX 80% 合成ゴム 20%
LX-15 HNS 95% Kel-F 800 5%
LX-16 PETN 96% FPC461 6%
PBX-9604 RDX 96% Kel-F 800 4%
PBX-9407 RDX 94% FPC461 6%
PBX-9205 RDX 92% ポリスチレン 6%; DOP 2%
PBX-9007 RDX 90% ポリスチレン 9.1%; DOP 0.5%; ロジン 0.4%
PBX-9010 RDX 90% Kel-F 3700 10%
PBX-9502 TATB 95% Kel-F 800 5% 核兵器
LX-17-0 TATB 92.5% Kel-F 800 7.5%
PBX-9503 TATB 80%; HMX 15% Kel-F 800 5%