Pxem

難解プログラミング言語

Pxemは2008年にぬこ[1][2]によって作られたジョーク向け難解プログラミング言語である。実用言語ではない。 なお、「Pxem」と言う名前については、特に意味は無く、ただキーボードで打ちやすいというだけである[要出典]

PxemによるHello, worldプログラム。ファイルの中身には何も記述されてないが、このファイル名のファイルで実行が可能である。

ファイル名をもコードとして解釈する特徴により、0バイトでのプログラミングを可能にするとして紹介されている[1]。元々はコードゴルフ用に設計された[3]

本家ページにアクセスできなくなる2012年頃までは本家ページでC++により開発されたインタプリタが公開されていた。その後約6年間、そのインタプリタの入手が不可能となっていたが、2018年9月に、作者のブログにおいてオリジナルインタプリタのソースコードが再公開された[3]

言語仕様 編集

Pxemのプログラムは、二つのレジスタを持つ仮想機械で処理される。片方は整数型のスタック、もう片方は同じく整数型で、データを保持しているかどうかを区別し、ただ一つの値を保持する一時領域用のレジスタである。プログラム起動時、どちらも空の状態で初期化される。

このプログラミング言語はファイル名をメインルーチン、ファイルの中身をサブルーチンとして解釈する。そのため最初はファイル名の最初の文字から順に実行される。ファイル名の最後まで実行、またはファイル名上の終止コマンド.dを実行した際にプログラムが終了される。この際ファイルの中身を処理するコマンドがファイル名にない、または実行されないとファイルの中身は無視される。

ファイル名上でサブルーチン実行コマンド.eを実行すると新たな仮想機械が作成され、その機械上でサブルーチンが実行される[4]。この際、その機械のレジスタについて、

  • スタックは元の機械のスタックからコピーされる。
  • 一時領域用のレジスタは何も保持されない状態で初期化される。

サブルーチンの処理終了は終止コマンド.dが実行される場合、またはファイルの中身を解釈し終えた場合に行われる。サブルーチン終了時、前の仮想機械上でサブルーチン呼び出し元のルーチンを処理する。この際、呼び出されたサブルーチンを処理していた仮想機械について、

  • スタック内のデータは元の機械のスタックに、底から最上位までの順にプッシュされる。
  • 一時領域用のレジスタのデータは破棄される。

コマンドである部分が解釈される際、それより前にコマンド以外の部分がある場合、その部分が文字列として解釈され、スタックに逆順にプッシュされる。

例えばファイル名がHello, world!.pxeであるファイルでインタプリタを実行した場合は、コマンドである部分は.pの部分で、それより前のHello, world!という部分が文字列として解釈され、スタックに!dlrow ,olleH、の順にプッシュされる。その後、.pというコマンドは「スタックが空になるまでポップし、ポップした値を文字として出力する」ため、結果として"Hello, world!"と出力される[1]。なお、.pxexeもスタックにプッシュされるが、そのままプログラムが終了する。

制御構造 編集

制御構造として条件制御ループのみが使用できる。それらの内容は次の通りである。

コマンド 処理内容 C言語での表現
.w.a スタック内に何もない、またはスタックから値を一つポップしてその値がゼロでない間、その二コマンド間の処理内容を実行し続ける。
while(stackIsEmpty()||stackPop()!=0){
   // 処理内容
}
.x.a スタック内に値が一つだけある、スタック内に何もない、またはスタックから値を二つポップ(ポップした順にx、yとする)してxがyより小さい間、その二コマンド間の処理内容を実行し続ける。
while(1){
   if(stackHasMoreThanTwo()){
      int x=stackPop();
      int y=stackPop();
      if(!(x<y))
         break;
   }
   // 処理内容
}
.y.a スタック内に値が一つだけある、スタック内に何もない、またはスタックから値を二つポップ(ポップした順にx、yとする)してxがyより大きい間、その二コマンド間の処理内容を実行し続ける。
while(1){
   if(stackHasMoreThanTwo()){
      int x=stackPop();
      int y=stackPop();
      if(!(x>y))
         break;
   }
   // 処理内容
}
.z.a スタック内に値が一つだけある、スタック内に何もない、またはスタックから値を二つポップ(ポップした順にx、yとする)してxがyと等しくない間、その二コマンド間の処理内容を実行し続ける。
while(1){
   if(stackHasMoreThanTwo()){
      int x=stackPop();
      int y=stackPop();
      if(x==y)
         break;
   }
    // 処理内容
}

演算 編集

算術演算を行う五つのコマンドが利用可能で、それらは.+.-.!.$.%(順に加算減算乗算除算(商を得る)、剰余演算)である。どれも、スタック最上位二つのデータに関して行われ、結果がスタックにプッシュされる。このうち減算、除算、剰余演算はどちらが上位にあるのかに関係なく、大きい値を小さい値で減算、除算、剰余演算する。またゼロ除算については明確な仕様がない。

乱数 編集

乱数を生成するコマンドとして.rが利用可能である。

実例 編集

Hello, worldを出力する場合 編集

Hello world を出力するには、ファイル名をHello, world!.pxeとする[1]。ファイルの中身は任意。このためファイルのサイズを0とすることも可能である。

Fizzbuzzを出力する場合 編集

Fizzbuzz を出力するには、ファイル名をak.-akbuzz.-ak4.-akfizz.-ak2.-1.p05.-.tab.z01.-.c.m.+.c.t05.-.%.w.s01.-.m03.-.%.W.s.m.nak.-.p00.-.c.c.c.a.wak.-fizz.p00.-.c.c.a.a.w01.-.m03.-.%.w.sak.-buzz.p00.-.c.c.a.wak.-fizzbuzz.p00.-.c.a.a.md2.-02.-.!.a.d.pxeとする[1][5]。ファイルの中身は任意である。

実装 編集

Pxemのインタプリタはもともと、設計者のページ[1]で"pxemi.exe"として公開されていた。同ページのサイト消失後は新たなサイトでソースコードが配布されている[3]

また、コードジェネレータ"text2pxem.pl"[6]も配布されていた。こちらはテキストファイルをPxemのコードファイルに変換するツールである。こちらも、新たなサイトで配布されている[3]

脚注・出典 編集

  1. ^ a b c d e f Pxem(web.archieve.org、2012年6月5日) - http://cfs.maxn.jp/neta/pxem.php
  2. ^ Pxemの思い出においては"nk."名義となっている。
  3. ^ a b c d Pxemの思い出
  4. ^ サブルーチン上で再帰的にこのコマンドを実行することも可能である。
  5. ^ fizzbuzz in pxem(web.archive.org、2016年7月31日) - http://www.owlab.org/pxem/fizzbuzz.html
  6. ^ pxemWayback Machine、2016年8月9日) - http://www.owlab.org/pxem/


外部リンク 編集

  • Pxem(web.archieve.org、2012年6月5日) - http://cfs.maxn.jp/neta/pxem.php - 元の紹介ページ。言語の仕様が紹介されているが、所々が曖昧にされている。
  • Pxemの思い出 - 新しい紹介ページ。このページにおいて"pxemi.7z"、"text2pxem.pl"の名でインタプリタのソースコードと、テキストファイルをPxemのファイルに変換するツールが公開されている。