TNT換算

爆発等のエネルギー量を把握する為の方法

TNT換算(ティーエヌティーかんさん、: TNT equivalent)とは、爆薬爆発などで放出されるエネルギーを等エネルギー量のトリニトロトルエン(TNT)の質量に換算する方法である。

TNT換算トン
TNT火薬500トンの爆発
記号 T, t
非SI単位
エネルギー
SI 4.184×109 J = 4.184 GJ
定義 109 cal
由来 TNT火薬1トンの爆発力
テンプレートを表示
1953年に行われたW9核砲弾の実験。M65 280mmカノン砲で発射。核出力は広島に投下されたのと同じ15kt。

TNT換算で得られる質量をTNT当量という。TNT当量が1トン(1メトリックトン = 1000キログラム)であるエネルギーを、1TNT換算トン、1TNTトン、あるいは誤解の余地がないときは単に1トンといい、必要に応じてキロ (1000)、メガ (100万) のSI接頭語をつけて使う。

ニュースなどでも「A国の原爆BはTNT換算で50キロトンの破壊力」などと表す使い方が一般的に見かけられる。TNT換算で評価できるのは爆発時の破壊力だけであり、核兵器の使用に伴う放射線障害放射能汚染は考慮されない。

なお、核爆弾以外の通常爆弾で、何トン爆弾という表現が使われることがあるが、これは爆弾の実際の質量であり、TNT当量ではない。

定義 編集

TNTとは高性能爆薬の名称である。TNT1グラムは、理論上は1160カロリー化学エネルギーを有するが、TNT爆薬1グラムの爆発で放出されるエネルギーは、実際には980カロリーから1100カロリーまでの幅がある。

このため計算に便利なよう、1TNT換算グラムは1000カロリーと定義されている。したがって、

  • 1TNT換算キログラム = 106カロリー
  • 1TNT換算トン = 109カロリー

カロリーには複数の定義があるが、通常は、1カロリー = 4.184 J(ジュール)(熱化学カロリー(thermochemical calorie))であり、1TNT換算トン = 4.184×109 Jとなる。米国のNISTでもこの数値を採用している[1]

由来 編集

1945年7月16日アメリカ合衆国で人類最初の原子爆弾の実験(トリニティ実験)が行われたが、これに先立つ5月17日に同所で108tのTNT火薬による予備実験が行われた。以来、核兵器の爆発力の測定の単位になった。

編集

広島市に落とされた原子爆弾リトルボーイ)は、TNT換算で16 kt ± 2 kt である(リトルボーイ#核出力)。これは、

16×103 × 4.184×109 J = 6.694×1013 J

と換算できる。

長崎市に落とされた原子爆弾ファットマン)は、TNT換算で21 kt ± 2 ktである。

世界最大の水素爆弾とされるツァーリ・ボンバは、TNT換算で50メガトンである(諸説あり)。

比喩的に「メガトン級」や「ギガトン級」などという言葉が使われる事もある。

グラム単位 記号 トン単位 記号 エネルギー
グラム g マイクロトン μT 4.184×103 J
キログラム kg ミリトン mT 4.184×106 J
メガグラム Mg トン t 4.184×109 J
ギガグラム Gg キロトン kt 4.184×1012 J
テラグラム Tg メガトン Mt 4.184×1015 J
ペタグラム Pg ギガトン Gt 4.184×1018 J

出典 編集

  1. ^ Special Publication 811(NIST Guide to the SI), Appendix B.8: Factors for Units Listed Alphabetically ton of TNT (energy equivalent)の欄、正確に「4.184E+09」としている。