TV's TV(ティービーズティービー)は、フジテレビ1987年3月13日(金)の25:55から29:55(3月14日(土)01:55から05:55)まで放映された4時間におよぶ深夜番組

概要 編集

100個のテレビの中に100個のソフトが入っており、1つずつ順番にスイッチを入れてそのテレビの中身を見ていく、という体裁をとる。映像作品やゲームなど、当時の最先端のメディアアートや古典的メディアアートの合間に『TV シンドローム 自己診断ソフト』と題するイメージ映像や『SAISON環境映像』と題する環境映像が適時挿入される。AppleAmigaアタリなど海外パソコン用のゲームも多数紹介されており、日本で発売されているアーケード版やファミコン版ではなく、わざわざ日本未発売の海外版を紹介するなどのこだわりがある。

製作は小牧次郎福原伸治による。共に当時フジテレビに入社して数年の若手であった。また、製作にはSEDIC(西武デジタルコミュニケーションズ、西武セゾングループのメディアアート部門)が協力している。制作プロデューサーは当時にSEDICに在籍していた石原恒和。CGを担当した岩井俊雄、BGMを担当した松浦雅也やEXPO(山口優松前公高)など、後にメディアアーティストとして著名となる若手クリエータが多数参加している。また、TVシンドロームを担当したのは映像作家の中野裕之。100個のテレビをCGで描いたのは岩井であり(岩井にとってはAmigaを用いた初の仕事である)、後の『ウゴウゴルーガ』における「テレビくん」の原型となった[1]

福原伸治や岩井俊雄らのスタッフがこの作品で培った経験は、後に彼らの出世作となる『アインシュタイン』(1990年)や『ウゴウゴルーガ』(1992年)にて活かされることとなる。福原は2013年、ニコニコ動画のコメントを引用する形で「1987年のYouTube」と評している。また、TV's TVで問題提起したテレビの衰退が21世紀に入ってから現実のものとなり、テレビ以外の要素をテレビに取り込む必要性を改めて述べている[2]

番組キャッチコピー 編集

1987年3月に下記の番組キャッチコピーが発表された。

「これはまったく新しいTVの試みとなるでしょう。今、テレビに残されているのは、テレビ以外のブラウン管を取り込むことではないだろうか。つまり端的に言って、テレビ以外にも楽しいブラウン管はいっぱいあると」

紹介作品 編集

番号 タイトル 時間 備考
TV シンドローム 自己診断ソフト 番組のオープニング代わりであり、ナンバリングはされていない。
1 台湾の天気予報 [2'41]
2 JARVIK7 [0'50] 人工心臓JARVIK7のデモンストレーション映像。
3 MUNTZ TV [1'00] オスカー・フィッシンガーが1953年にMUNTZ TV(アメリカのテレビショッピング番組)のオープニング用に製作した映像作品。
4 TV シンドローム 自己診断ソフト その1 [1'33]
5 BALL BLAZER英語版 [1'50] ルーカスフィルム社のゲーム部門(後のルーカス・アーツ社)によるゲーム第1弾。1985年にAtari用に製作した2人プレイの未来的サッカーゲーム。
6 DISNEY EPCOT CENTER [1'02] ロバート・エイブルが1981年に制作した、ディズニー・エプコットセンターのジェットコースターのシミュレーション映像。ワイヤーフレーム描写によるCGが活用されている。
7 雪華氷紋 [2'36] SAISON環境映像。 原曲:Zabadak 水の踊り
8 スペースインベーダー [2'33]
9 三原山 [2'45] 1986年に噴火した三原山の映像。
10 マンデルブロ集合 [0'15] BGMとしてイエロー・マジック・オーケストラの「LOOM/来たるべきもの」が使われている。
11 OUT RUN [2'01]
12 POWERS OF TEN [2'35] モノクロのパイロット版。
13 DEFENDER OF THE CROWN [2'47] Master Designer Software社(後のCinemaware社)が1986年にAmiga用に開発した戦略シミュレーションゲーム
14 TV シンドローム 自己診断ソフト その2 [1'49] 出演:逸見政孝
15 XEVIOUS [3'15]
16 結晶の世界 [1'52] SAISON環境映像
17 MINOTAUR [1'02] Sirius社が1981年にApple II用にリリースした迷路ゲーム。
18 ブロックくずし [3'00] アタリのオリジナル版とタイトーのライセンス版。オリジナル、『ズンズンブロック』、『アルカノイド』の3種を紹介。
19 メタモルフォーズ [0'45] 3DCGのレイトレーシング、テクスチャマッピング、モーフィングなどのデモ。BGMとして細野晴臣の「MEDIUM COMPOSITION #2」が使われている。
20 アポロ11号 [0'57] アポロの打ち上げと月面着陸の映像
21 麻雀悟空 [1'57]
22 MIND WALKER [3'00]
23 春光 [1'53] SAISON環境映像
24 OTOCKY [2'30] TV's TV製作陣の一人でもある岩井俊雄の作品。
25 TV シンドローム 自己診断ソフト その3 [1'44]
26 韓国のニュース [1'33] 21時前の時報、1987年2月5日のMBCニュースデスクのヘッドラインと最初の部分。
27 GUMBALL [1'24] ブローダーバンド社が1983年にApple II用にリリースした、落ちてくるガムを色分けするゲーム。
28 FLIGHT SIMULATER2 [2'10] subLOGICがApple II用にリリースしたフライトシミュレータ。後にマイクロソフトに買収、現在の『Microsoft Flight Simulator』。
29 HIGH FIDELITY [1'44] ロバート・エイブルが1984年に製作した3Dアニメーション。
30 植物の夢 [2'29] SAISON環境映像
31 SPACE WARS [1'20] GCE社が1982年にVectrex(光速船)用にリリースした、『スペースウォー!』のコピーゲーム。
32 VIDEO VEGAS [1'23] Baudville社が1986年にApple II用にリリースしたカジノゲームのうち、スロットマシンのゲーム映像。
33 ランドサットからの雲の動き [1'07] 北米の天気予報
34 TV シンドローム 自己診断ソフト その4 [0'37]
35 AIRHEART [2'24] ブローダーバンド社が1986年にリリースしたApple II用ソフト。『チョップリフター』などで知られるDan Gorlinの作。
36 JUGGLER [0'30] 3DCGでレンダリングされた玉をジャグリングする、Amigaの著名なメガデモ
37 かもめ [2'53] SAISON環境映像. 原曲:Zabadak BIRD'S ISLAND
38 スペースシャトル [1'41] スペースシャトルの打ち上げ、着陸映像
39 DISCOVERY [2'30] MicroIllusions社が1986年にリリースしたAmiga用教育ソフト。ゲームをしながら英語のスペルを勉強する。
40 The Adventures of Andre & Wally B [1'13] ルーカスフィルムのCG部門(後のピクサー)が1984年に製作したCGアニメ。邦題『アンドレとウォーリーB.の冒険』。
41 台湾のTV番組予告 [0'37]
42 スペースハリアー [2'04]
43 TV シンドローム 自己診断ソフト その5 [3'12]
44 BOINK! [0'55] 有名なメガデモであるAmigaの『Boing Ball』とAtariの『FujiBoink!』を続けて紹介。
45 鏡面 [2'53] SAISON環境映像
46 スーパーマリオブラザーズ [2'02]
47 CANON英語版 [3'17] ノーマン・マクラレンが1964年に製作した映像作品。カノン音楽形式の視覚化を試みたもの。
48 WORMS [1'04] エレクトロニックアーツ社が1984年にリリースした陣取りゲーム『Worms?』のAtari800版。後に3DO社の設立者の一人としても知られるDavid Maynardの作品。
49 画面をふくアポロ17号船長 [0'25] ユージン・サーナン船長が月面にてカメラの画面を拭いている映像。
50 PEEK-A-BOO [1'13] DEVOの『PEEK-A-BOO英語版』のプロモーションビデオ
51 サマーフィッシュ [2'11] SAISON環境映像
52 ライフ・ゲーム [1'00]
53 みろく [3'34] SEDICの藤幡正樹が1984年に制作した作品。音楽は細野晴臣
54 TV シンドローム 自己診断ソフト その6 [1'24]
55 TECHNOPOLIS [4'13] YMOの『テクノポリス』のプロモーションビデオ。
56 デスバレー3Dモデル [0'45] デスバレーの3Dモデル
57 ELIZA [2'26] ジョセフ・ワイゼンバウムが1965年に製作した人工知能プログラム。
58 ザナック [2'40] ポニーが1986年に発売したシューティングゲーム。
59 高原水 [2'12] SAISON環境映像
60 POLLYWOG [1'25] TOP NOTCH社が1983年に発売したApple II用ゲーム。
61 台湾のTVコマーシャル [1'40]
62 LITTLE COMPUTER PEOPLE [3'00] アクティビジョンが1985年にリリースしたゲーム。邦題は『アップルタウン物語』。
63 STUDY No.7 [2'30] オスカー・フィッシンガーが1931年に制作した映像作品。
64 ファンタジーゾーン [1'55]
65 CRY [3'12] ゴドレイ&クレームが1985年にリリースした楽曲「クライ英語版」のプロモーションビデオ
66 KARATEKA [2'51] Apple II版
67 TV シンドローム 自己診断ソフト その7 [2'31]
68 緑・水・青 [2'31] SAISON環境映像
69 EPOCH [1'01] SIRIUS社が1981年にりリースした3Dゲーム。
70 HADRON [1'00] SIRIUS社が1981年にリリースした、EPOCHの続編。
71 韓国の天気予報 [1'53] MBCニュースデスクの天気予報コーナー。
72 エミー2 [2'08]
73 MOON [2'28] SAISON環境映像
74 ATARI "THE FLY" [2'00] ロバート・エイブルが製作したAtari 2600のCM。
75 PINBALL CONSTRUCTION SET [0'55] Electronic Artsが1983年にリリースしたピンボールシミュレータのMacintosh版。
76 スクランブルフォーメーション [1'45]
77 TV シンドローム 自己診断ソフト その8 [0'52]
78 森田の将棋 [0'30]
79 CHOPLIFTER [1'44] Apple II版。
80 秋果 [1'41] SAISON環境映像
81 MARBLE MADNESS [2'45] Amiga版。
82 Mandala 1983 [2'48] 藤幡正樹のレイトレーシングCG作品。
83 RESCUE ON FRACTALS [2'35] ルーカスフィルム社が1985年にリリースしたAtari 800用ゲーム。
84 カオス・トリップ [0'55] 富士通研究所によるマンデルブロ集合を利用したCG映像作品。
85 FIRE CRACKER [4'23] YMOのプロモーションビデオ。『サーカスのテーマ』から一続き。
86 ピアノ弾きのトニー英語版 [1'44] モントリオール大学CG研究チームのピエール・ラシャベルらが1985年に製作した『Tony De Peltrie』
87 ZEBRA [3'00] 内藤忠行の作品。
88 POLYSCOPE [3'08] エレクトロニックアーツ社によるAmiga 1000用デモ。音楽はEXPO
89 TVシンドローム 自己診断ソフト その9 [1'43] 後半は、美少女ものアダルトビデオのイメージシーンを早送りする視聴者のパロディ。
90 WIZARDRY [1'14]
91 きね子2 [2'10]
92 雪雑音風景 [2'26] SAISON環境映像
93 KORONIS RIFT英語版 [2'23] ルーカスフィルム社が1985年にリリースしたAtari 800用ゲーム。
94 ONE MINUTE MOVIES [2'30] レジデンツの作品。
95 WAYOUT [1'10] Sirius社が1982年にリリースした3D迷路ゲーム。
96 [2'25] SAISON環境映像 原曲:Zabadak 蝶
97 MUSIQUE NON-STOP英語版 [3'00] クラフトワークのプロモーションビデオ。
98 ギャラクシアン [1'04]
99 QUEST - A LONG RAY'S JOURNEY INTO LIGHT[3] [1'54] アポロコンピュータのCM。
100 TV'S TV [0'10] これまでのすべての作品を早送り。
日本の … [1'00] CM。要するに「日本のCMを紹介する」という演出であり、ナンバリングはされていない。

関連項目 編集

関連テレビ放送 編集

関連書籍 編集

脚注 編集

  1. ^ ニュースクール’95パソコン倶楽部”. ICC ONLINE. 2023年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月16年閲覧。
  2. ^ 福原, 伸治 (2013年7月12日). “1987年のYouTube―テレビと外部(1)”. ハフポスト. オリジナルの2021年6月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210622143641/http://www.huffingtonpost.jp/shinji-fukuhara/1987youtube1_b_3250488.html 2024年3月16日閲覧。 
  3. ^ Quest: A Long Ray's Journey Into Light - IMDb(英語)