3-ヒドロキシイソ吉草酸 (3ヒドロキシイソきっそうさん、β‐ヒドロキシ‐β‐メチル酪酸、: 3-Hydroxy 3-MethylButyrate, HMB, 3-HydroxyIsovaleric Acid, 3-HIA)はイソ吉草酸β位の炭素ヒドロキシ基が結合した短鎖分岐ヒドロキシ脂肪酸である。 必須アミノ酸であるロイシン代謝中間体のひとつ(KEGG)で、1996年にアイオワ州立大学のDr. Steven L. Nissen によりその効能が発見された[2]。筋肉量の増大あるいは減少抑制を目的とした研究に用いられたり、ボディビル用サプリメントとしてカルシウム塩(英)などの形で海外では販売されている。[3][4] サプリメントではその成分を β-Hydroxy β-MethylButyrateと表示することが多いが同じ物質である。

3-ヒドロキシイソ吉草酸[1]
略称 HMB, 3-HIA
識別情報
CAS登録番号 625-08-1 チェック
PubChem 69362
ChemSpider 62571 チェック
日化辞番号 J100.466B
KEGG C20827
ChEBI
特性
化学式 C5H10O3
モル質量 118.131 g/mol
密度 0.938 g/mL
融点

−80 °C, 193 K, -112 °F

沸点

88 °C at 1 mmHg

関連する物質
関連物質 イソ吉草酸
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

生合成 編集

人体は一日あたり0.2〜0.4グラムのHMBを産生しているとされている。

ロイシンα-ケトイソカプロン酸 → 5-10% → HMB → HMB-CoA
ロイシンα-ケトイソカプロン酸 → 90-95% → イソバレリルCoA3-メチルクロトニルCoAビオチン欠乏時 → HMB → HMB-CoA

経路は2つあるものの体内ではおよそ5〜10%しか変換されないので、3グラムのHMBを充足するには30〜60グラムのロイシンを摂取する必要が出てくる。

代謝経路図 編集

 
ロイシンからHMBへの代謝経路[5]

作用機序 編集

現在のところHMBの作用機序は

によるものと考えられている。

効果 編集

一日あたりHMBカルシウム塩(英)を3グラム摂取することで

  • タンパク質の異化(分解)抑制
  • 筋肉量の増加、筋肉減少の抑制、筋肉の修復、耐久性増加

を助ける可能性がある。 なお70歳代の老人においても筋肉量の増加や体脂肪減少が実験により確認されている。

また、がん悪液質糖尿病エイズ火傷などいくつかの体重が減少する疾患においてHMBが症状改善につながらないか研究がなされつつある。

存在 編集

HMBは次の食品にも含まれるとされる。

脚注 編集

  1. ^ β-Hydroxyisovaleric acid at Sigma-Aldrich
  2. ^ Nissen S, Sharp R, Ray M, et al. (November 1996). “Effect of leucine metabolite beta-hydroxy-beta-methylbutyrate on muscle metabolism during resistance-exercise training”. J. Appl. Physiol. 81 (5): 2095–104. PMID 8941534. 
  3. ^ HMB at gnc.com
  4. ^ HMB Sport at Blonyx Biosciences
  5. ^ Wilson JM, Fitschen PJ, Campbell B, Wilson GJ, Zanchi N, Taylor L, Wilborn C, Kalman DS, Stout JR, Hoffman JR, Ziegenfuss TN, Lopez HL, Kreider RB, Smith-Ryan AE, Antonio J (Feb 2013). “International Society of Sports Nutrition Position Stand: beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB)”. Journal of the International Society of Sports Nutrition 10 (1): 6. doi:10.1186/1550-2783-10-6. PMC 3568064. PMID 23374455. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3568064/. 

参考文献 編集

関連項目 編集