Є, є は、キリル文字のひとつ。ウクライナ語ルシン語教会スラヴ語で使われる。ギリシア文字Ε, ε(エプシロン)を起源とする。

キリル文字
А Б В Г Ґ Д Ѓ
Ђ Е Ё Ѐ Є Ж З
Ѕ И І Ї Й Ѝ Ј
К Ќ Л Љ М Н Њ
О П Р С Т Ћ У
Ў Ф Х Ц Ч Џ Ш
Щ Ъ Ы Ь Э Ю Я
非スラヴ系文字
Ӑ Ӓ Ә Ӛ Ӕ Ғ Ӷ
Ҕ Ӗ Ӂ Җ Ӝ Ҙ Ӟ
Ӡ Ӣ Ӥ Ҋ Ҡ Қ Ҟ
Ӄ Ҝ Ӆ Ӎ Ң Ӊ Ӈ
Ҥ Ө Ӧ Ӫ Ҧ Ҏ Ҫ
Ҭ Ҵ Ӳ Ӯ Ү Ұ Ӱ
Ҳ Ӿ Һ Ҷ Ӌ Ҹ Ӵ
Ҩ Ҽ Ҿ Ӹ Ҍ Ӭ Ӏ
初期キリル文字
Ҁ Ѹ Ѡ Ѿ Ѻ Ѣ
Ѥ Ѧ Ѫ Ѩ Ѭ Ѯ Ѱ
Ѳ Ѵ Ѷ Ԁ
キリル文字一覧

由来 編集

初期のキリル文字の「Є」(イェースチ)の変形である。1837年にウクライナ語の正書法『ドニステル川の人魚』で初めて[jɛ]を表記するために使用された。初期のキリル文字である「Ѥ」は、この文字と「І」を合わせて作られた。

呼称 編集

  • ウクライナ語:イェー

音素・音 編集

  • ウクライナ語・ルシン語:/je/または口蓋化した子音に続く/e/

教会スラヴ語での使用 編集

単なるЕ, еの変種であったが、17世紀半ば以後には次のような書き分けが行われた[1]

  • 先頭では必ずЄを用いる。
  • それ以外では次の例外を除き、Еを用いる。
    • 名詞語尾において、複数形ならば-євъまたは-ємъを、単数形ならば-евъまたは-емъを用いる。
    • 単数形に同じ綴りの単語がある場合に、双数形、複数形ではЕをЄに置き換える。
    • キーウで出版された物は上記に加えて、3つの代名詞属格の場合にはЄを(менє、тебє、себє)、対格の場合にはЕを(мене、тебе、себе)用いる。
  • キリル数字には、ЕではなくЄを用いる。(5を表す)

教会スラヴ語でのЕとЄの区別は大文字にはなく、小文字にのみある。よって、オールキャップススモールキャピタルでは区別はなくなる。

アルファベット上の位置 編集

  • ウクライナ語・ルシン語:第8字母
  • 教会スラヴ語:第6字母

Єに関わる諸事項 編集

  • フォントデザインなどにより、中央の線は Э と同様、「〜」のように波型になることがある。
  • ロシア語、モンゴル語では/je/Е で表す (ロシア語では外来語では йеと綴ることもある)。また、ブルガリア語/je/は、この文字を使わず、代わりに йе と綴る。
  • 欧米の地質学会において、カンブリア紀を表す記号として Є に似たものが使われる。これは Є の横線が左に突き出ている[2]

符号位置 編集

大文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 小文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 備考
Є U+0404 Є
Є
є U+0454 є
є

脚注 編集

  1. ^ Церковнославянский язык : [арх. 10 6月 2017] : учебное пособие / Сост. А. Г. Стульцев. — Template:Ростов н/Д, 2013. — 98 с.
  2. ^ Federal Geographic Data Committee, ed (August 2006). FGDC Digital Cartographic Standard for Geologic Map Symbolization FGDC-STD-013-2006. U.S. Geological Survey for the Federal Geographic Data Committee. p. A–32–1. http://ngmdb.usgs.gov/fgdc_gds/geolsymstd/fgdc-geolsym-all.pdf 2010年8月23日閲覧。 

参考文献 編集

  • (ウクライナ語) Сучасна українська мова / О. Д. Понаморів, В. В. Різун та ін.; За ред. О. Д. Понаморева. — 2-ге вид., перероб. — К.: Либідь, 2001.(O・ポノマリーウ編『現代ウクライナ語』第2版、キエフ、2001)