あなた (小坂明子の曲)
「あなた」は、小坂明子のデビューシングル。1973年12月21日発売。発売元はワーナー・パイオニア。
「あなた」 | ||||
---|---|---|---|---|
小坂明子 の シングル | ||||
初出アルバム『あなた / 小坂明子の世界』 | ||||
B面 | 青春の愛 | |||
リリース | ||||
規格 | 7インチシングル盤 | |||
ジャンル | フォークソング[1] | |||
時間 | ||||
レーベル | elektra | |||
作詞・作曲 | 小坂明子 | |||
ゴールドディスク | ||||
| ||||
チャート最高順位 | ||||
| ||||
小坂明子 シングル 年表 | ||||
| ||||
概要
編集小坂は16歳にして1973年の第6回ヤマハポピュラーソングコンテスト(ポプコン)に出場し、ピアノを弾きながらこの曲を歌唱してグランプリを獲得した。同年11月には第4回世界歌謡祭にて最優秀賞・グランプリを受賞する。同年年末にシングルリリースされ、オリコン集計で売り上げ165万枚(1978年10月時点)[1]、発売元のワーナーによる発表では200万枚を超える売り上げを記録した[注 1]。1968年から調査の始まったオリコンによれば、12曲目にして、初の女性作曲家によるミリオンセラーシングルである。
製作経緯
編集小坂本人の話によれば、この曲の詞は高校2年生の時、学校で授業中にノートの片隅に20分ほどで書き、家で曲を付けたものだったという。小坂が元々ガロのファンで、「歌ってくれたら、逢えるかも知れない」と思い、ガロに歌ってもらいたくて作曲[注 2]、最初から3部合唱の予定の曲で、ポプコンにも3人でエントリーしたが、本戦出場前になって他の2人が出場出来なくなったために急遽、小坂がソロで歌ったというものだった[3][4]。
「あなた」のモデルは高校の1つ上の先輩で、お茶を飲んで美術館に行くような淡い恋だった。しかし、先輩が高校を卒業後に地元を離れることになり、先輩から「もっと好きにならないうちに別れよう」と言われ別れることになった。歌詞は「家を建てるなら」ではなく「建てたなら」と過去形になっており、「全部それは過去の夢だった、終わった恋だということを、あの歌詞で表現したかったんです」と語っている。歌詞の「真赤なバラ」は小坂の好きな花、「白いパンジー」は先輩の好きな花だった[5][6]。
当初は合歓の郷に来る新婚カップルに「お祝い」として配るためのソノシート用のレコーディングであった[7]。
本作はポプコン版(山室紘一[8])、レコード版・世界歌謡祭版(共に宮川泰)とでは編曲が異なる。レコード版のイントロを聴いた小坂は「これは私の作曲のイメージとは違います。もっとスタンダードジャズのようにおごそかな静かなイメージで世界歌謡祭はアレンジを変えて下さい」と依頼している[7]。世界歌謡祭にて披露された演奏は録音され、2003年3月26日発売の「ポプコン・スーパー・セレクション 小坂明子ベスト」にてCD化され、そちらで聴くことができる。因みに世界歌謡祭版ISRCはJPT200390005、レコード版ISRCはJPWP07300720である[9]。また、ポプコン版の音源は現存しない。
実績
編集デビュー曲にして、発売から1ヵ月後にはオリコンシングルチャートで7週にわたり1位を獲得。1974年の『第25回NHK紅白歌合戦』に出場、父・小坂務と親子共演した(小坂務は指揮)[注 3]。1978年10月時点のオリコン集計では、フォークソングのシングルとして歴代1位の売り上げ[1]、女性ソロ売上としても当時1位であった[注 4]。2007年現在でもオリコンの歴代シングルチャートで51位、女性シンガーソングライターのシングルとしては6位の売上である。
評価と影響
編集川上源一は「アマチュアリズムの勝利」と評した[10]。小西良太郎は「田中政権下で夢のまた夢になったマイホームの夢を、上手く組み立て直した」と評価した[11]。ピアノを弾きながらテレビで歌唱するスタイル(ピアノ弾き語り)を世間に認識させた初めての曲である[10]。名前も混同する小坂恭子が同じスタイルで歌唱すると「散々、小坂明子のマネと言われて悔しかった」と話している[10]。
1974年春、日本公演中のアメリカのジャズ・フルート奏者、ハービー・マンがこの曲に注目、小坂本人をゲストに迎えて東京で録音し[12]、同年8月にワーナーからシングルで発売された(『ハービー・マン 歌・小坂明子』名義)。ハービーの1976年のアルバム『Surprises』にも収録されている。
岩崎宏美が歌手デビューのきっかけとなったオーディション番組『スター誕生!』(日本テレビ)のテレビ予選と決戦大会で歌唱している[13]。更に2010年には自身のカバー・アルバム『Dear Friends V』において改めてカバーしており、小坂がピアノと編曲で参加している。
以降の小坂
編集小坂明子は次作以降目立ったヒットを出しておらず、また本人が子育て中に声帯を傷めて以前のような声が出なくなったこともあり、現在は実質的に作曲家に転向しており、「一発屋」と見られてしまうこともある[注 5][注 6]。
現存する映像
編集本作を披露している、2016年現在視聴可能な映像は前述の1973年世界歌謡祭のものか、1974年『第25回NHK紅白歌合戦』のものであるが、過去に再放送されたVTRとしてはTVKテレビ神奈川で1973年12月〜1974年2月頃に収録されたピアノ弾き語りによる映像が現存している[注 7]。
収録曲
編集全作曲:小坂明子
カバーしたアーティスト
編集- 1974年
- 小柳ルミ子 - (5月25日発売のアルバム『あたらしい友達』収録)
- ちあきなおみ - (5月25日発売のアルバム『円舞曲(わるつ)』収録)
- 天地真理 - (6月21日発売のアルバム『恋と海とTシャツと/恋人たちの港』収録)
- あいざき進也 - (6月25日発売のアルバム『気になる男の子』収録)
- あべ静江 - (6月25日発売のアルバム『透きとおった哀しみ』収録)
- 晃(フィンガー5) - (7月5日発売のアルバム『あきら ぼくの好きな歌』収録)
- 南沙織 - (7月21日発売のアルバム『夏の感情』収録)
- 青江三奈 - (7月25日発売のアルバム『女のなみだを唄う』収録)
- チェリッシュ - (7月25日発表のアルバム『グランド・デラックス』収録)
- いしだあゆみ - (7月発売のアルバム『いしだあゆみリサイタル』収録)
- 森山良子 - (10月5日発売のアルバム『ニュー・フォーク・アルバム』収録)
- 1975年
- 1992年
- 1993年
- 内田忍 - (11月21日発売のシングル収録。フジテレビ『クイズ!年の差なんて』エンディングテーマ)
- 1996年
- yes, mama ok? - (1月20日発売のアルバム『modern living』収録)
- 2002年
- 後藤真希 - (10月23日発売のアルバム『FOLK SONGS 3』収録)
- 2006年
- 徳永英明 - (8月30日発売のアルバム『VOCALIST 2』収録)
- CHARA - (9月13日発売のシングル『世界』収録)
- 2008年
- 倉橋ヨエコ - (6月4日発売のアルバム『解体ピアノ』収録)[14]
- Acid Black Cherry - (5月21日発売のカバーアルバム『Recreation』収録)
- 2010年
- 岩崎宏美 - (10月20日発売のカバーアルバム『Dear Friends V』収録)
- 2012年
- 2015年
- 2016年
- May J. - (3月16日発売のアルバム『Sweet Song Covers』収録)
- 2017年
- 2020年
- 2021年
- その他
CM
編集ラジオ番組テーマ曲
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c 「保存版フォークソング大百科 【フォークをナイフで!?斬る】 名鑑 フォーク・シンガー32 フォーク・ソング・レコード売れゆきベスト10 昭和43年より現在までのシングル盤レコード(オリジナル・コンフィデンス調べ) 1位 小坂明子 あなた 165万枚」『セブンティーン』1978年10月号、集英社、8頁。
- ^ 『サンデー毎日』1974年7月14日号、129頁。(「『あなた』から『うそ』まで 座談会 曲がり角に来た“みせる歌”」『サンデー毎日』1974年7月14日号、129-131頁。)
- ^ “Vol.13 小坂明子インタビュー”. Musicshelf (2007年11月28日). 2016年11月3日閲覧。
- ^ “小坂明子『あなた』大ヒット後の葛藤と転身支えた伴侶”. 女性自身 (2014年7月18日). 2020年6月21日閲覧。
- ^ 黄金の“ミリオンセラー歌姫”を総直撃<小坂明子「あなた」>初めて作詞作曲した歌に込められた意外な怨念
- ^ 小坂明子 エレカシ宮本のカバーに「史上最高の『あなた』でした」
- ^ a b 「ポプコン・スーパー・セレクション 小坂明子ベスト」2003年3月26日発売 CD:品番KICS 2142より。文章:小坂明子
- ^ KG-TOKYO.COM 山室紘一インタビュー
- ^ 音楽の森 music Forest データベース検索より
- ^ a b c “ポプコンがまた生んだ 新人歌手 小坂恭子『黒人っぽい歌をやりたいの』”. 毎日新聞 (毎日新聞社): p. 6. (1974年5月31日)
- ^ 小西良太郎「歌は世につれ世は歌につれ 歌謡特集(2) 『不況の中の'74年歌謡曲やぶにらみ考』」『スタア』1975年1月号、平凡出版、227–231頁。
- ^ ハービー・マン『サプライズ』日本盤CD (WPCR-27964)ライナーノーツ(岡崎正通)
- ^ “【岩崎宏美】コロッケの物まねで名曲一時封印「面白がって観てました」 (3/3ページ)”. 夕刊フジ (2015年7月22日). 2016年11月3日閲覧。
- ^ ヂェームス槇「倉橋ヨエコが語る、廃業宣言の真意」『Quick Japan』第78巻、2008年6月22日、222-223頁。