いぶり漬け(いぶりづけ)は、秋田県の内陸南部地方に伝わる野菜(主に大根)を燻煙乾燥させてつくる漬物である。「いぶりがっこ」としても知られるが、元は秋田県湯沢市下院内の漬物屋(雄勝野きむらや)が、1964年に発売したいぶり漬けの商標である。名付けの由来は秋田の方言秋田弁)で漬物を「がっこ」と呼ぶことから、燻した(いぶり)漬物(がっこ)とされ、近年では秋田の郷土食としても広く知られるようになった。

いぶりがっこ(上)とニンジン
クリームチーズとも相性が良いとされる

2019年5月8日、農林水産省により地理的表示 (GI) 登録された[1]

概要編集

大根などを囲炉裏の上に吊るして燻製にした上で、主に米糠で漬け込んでつくる。燻製にする点を除けば沢庵漬けと似ている。囲炉裏火の煙で燻されるため、表面に茶色あるいは黒い色が付き、味も燻製の香りがついた独特のものになる。

沢庵を漬ける際は、大根をあらかじめ天日干しして、ある程度の水分を抜く必要がある。しかし秋田県内陸南部の山間地では降雪の時期が早く、大根を戸外で充分に干すことができなかった。そのため室内に吊るして、囲炉裏火の熱と煙で干したのが始まりと言われる。雪が多いこの地方の保存食として古くから親しまれてきた。

横手市山内地区では、いぶり漬けの味を競う「いぶリンピック」が開かれる。横手市山内三又では特産品山内にんじんを使い、「いぶりにんじん」を作っている。

現代の製法例編集

近年は囲炉裏を有する家屋が少なくなり、また作り手の減少から、各家庭でいぶり漬けを作ることは難しくなってきている。専用の燻製設備を持つ漬物屋が作る製品(「いぶりがっこ」「いぶりたくあん」「いぶり大根漬」「大綱漬」「桜おばこ漬」「いぶりごんげん」等)が特産品として広く知られるようになった。

本来いぶり漬けには白首の秋田地大根を用いるが、栽培が難しく希少なことから最近では青首大根を使用することが多くなってきている。大根数本をヒモで編んで屋内につり下げて、などの薪を燃やして4 - 5日程度燻製乾燥し、ザラメ唐辛子・米糠などで2 - 3ヶ月漬け込む。

商標編集

  • 株式会社雄勝野きむらやにより1983年に商標登録(第1588021号
  • 株式会社雄勝野きむらやにより2009年に商標登録(第5203672号

この商標権について、同じ名称での販売を巡り2014年に発足した県内の後発業者団体と、先発業者で商標を有する株式会社雄勝野きむらやとの間で主張の対立が続いている。上記(第1588021号)は「いぶりがっこ」という平仮名6文字をデザインした商標である。雄勝野きむらやは、1963年に創業した秋田県湯沢市下院内の業者で、「商標は商品の品質とブランドを表現するもの。いぶりがっこは長年育て上げてきた自負があり、名称も商標権に含まれている」と主張している。一方で、2014年に県内の後発組にあたる複数の業者で発足した秋田いぶりがっこ協同組合は、「特殊な文字で表された図形商標で名称は商標権に含まれない」と主張し対立が生じている[2]

  • 有限会社奥州食品により2014年に商標登録(第5697597号

上記は「秋田 奥州食品 いぶりがっこ」という文字が記された図形商標である。奥州食品は秋田県大仙市協和稲沢の業者で、雄勝野きむらやは本商標に対し登録異義申し立てをしたが、2015年8月に却下されている[3]

秋田いぶりがっこ協同組合は、特許庁の判定制度を利用し権利侵害の可能性について判定を求めていた。特許庁は2016年7月に「(いぶりがっこ)の名称は秋田県を中心に広く一般に理解されている」として名称自体に商標権は含まれないとの判断を示した。判定制度に法的拘束力はないが、商品名に「いぶりがっこ」を使える可能性は高くなった[2][4]

脚注編集

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  1. ^ 秋田の「いぶりがっこ」地理的表示(GI)保護制度に登録”. 河北新報オンラインニュース (2019年5月9日). 2019年9月4日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2019年5月21日閲覧。
  2. ^ a b いぶりがっこ販売「商標権侵害に当たらない」 特許庁”. 秋田魁新報電子版 (2016年7月7日). 2016年7月8日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年7月9日閲覧。
  3. ^ <いぶりがっこ>名称使用巡り業者が対立”. 河北新報オンラインニュース (2016年4月16日). 2016年4月18日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年7月9日閲覧。
  4. ^ 商標審決データベース 判定2015-600010 2019年6月22日閲覧。

関連項目編集

外部リンク編集